■JASRACには徴収権限がないことの確認訴訟
音楽著作権の管理団体として知られるJASRAC。日本音楽著作権協会ですが、オヤジの中には、日本における音楽著作権管理の総元締めだと思っている人も少なくないでしょう。
それは間違いではありませんが、JASRACは独占事業ではありません。
あくまでも任意団体の私企業です。
実際、現在は他にも音楽著作権の管理団体ができています。
しかし、依然としてJASRACが大きな存在であることは間違いありません。
巷では、未確認情報も含めると、JASRACの著作権使用料徴収に関するトラブルの話が多少なりともあります。
そんな中で、2017年6月にはJASRACの徴収権限がないことの確認訴訟が起こされました。
事件の概要はこうです。
ピアノ教室などで練習・指導するさいの演奏についても著作権使用料が発生するとして徴収する方針だとのJASRACに対し、音楽指導者サイドが猛反発しました。
そして、音楽教育を守る会の249社が東京地裁への集団訴訟に踏み切ったのです。
音楽教育を守る会の会員のひとつにヤマハ音楽振興会があります。
ヤマハ音楽振興会といえば、ヤマハ音楽教室を展開する一方で、かつてはポプコンなど音楽著作権を生み出す側としてもメジャーであり、日本の音楽シーンを作ってきた存在です。
■著作権使用料徴収の根拠は?
今回、問題となっているのは、著作権のうち「演奏権」についてです。
著作権法22条に上演権及び演奏権が規定されています。
すなわち「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」です。
この規定によれば、公衆に直接見せるか聞かせることを目的とした演奏が保護の対象であり、著作権使用料が発生します。
では、練習のための演奏はこの条文に該当するのでしょうか?
ここには、教室内に複数の生徒がいたとしても、それが公衆だといえるのかという「公衆性」の問題と、そもそもの目的が「見せたり聞かせたりすること」なのかの2つの問題があります。
このうち、ひとつでも否定されれば、著作権使用料の徴収根拠はありません。
まず、公衆性ですが、一般的な日本の法令の考え方からすると音楽教室のような空間にいる人間は不特定ではないでしょう。
あとは人数の問題がありますが、通常は少数と考えられます。
従って、公衆性は否定されるのが妥当でしょう。
次に、見せたり聞かせたりする目的があるかですが、練習生の上達が目的であることは確かであり、他の生徒が演奏に感想を持ち、アドバイスをしたとしても、聞かせることが目的だというには無理があります(原告の主張では「教育目的」といいます)。
ということで、ひとつどころかふたつとも該当しない可能性が高いです。
別の意見を持つオヤジもいるかとは思いますが、裁判所はどのように判断するでしょうか。
裁判所は権威・権力側に寄らない公正な判断をしてくれるでしょう。
また、音楽教室側としては、楽譜には著作権料を支払っており、発表会には演奏に関する著作権料も支払っているとのことで、なにも不法に払わないと言っているのではなく、払う必要がないものは払わないということです。
さらに、有名アーティストには「練習において自分の曲は自由に使って欲しい」とする人もいて、著作権の存在にかかわらず自由使用を容認する声もあります。
JASRAC以外の管理団体がどのような考えかは確認していませんが、方針次第ではそちらへ流れるアーティストが増えても驚けません。
決めるのは著作権者ですから。
音楽著作権管理業界も競争の時代です。
【日時】2017年06月27日(火)
【提供】YAZIUP