2001年───。
当時、20歳だった僕には彼女がいました。名前はエリカ。付き合い始めて1ヶ月もしないうちに、日に日に僕はエリカと付き合っていく自信がなくなっていくのを感じていました。
僕とエリカが出会ったのは、僕の友達のタケシが主催した合コンでした。男6人、女6人の合コンで、僕とエリカは話が弾み、連絡先を交換しました。次の日に、エリカから連絡が来て、夜桜を見に行き、帰りにホテルへ行き、抱き合いました。そして、付き合うことになりました。
付き合い始めて1週間ほどして、僕とエリカは、深夜、僕の車の中で抱き合いました。僕はエリカの体の上で下半身を一心不乱に動かしました。悶るエリカは突然、僕の乳首を渾身の力でつまんできました。あまりの激痛に、僕は絶叫しました。あまりの激痛に、その時、勃起しなくなり、帰りました。
性行為をするたびに、エリカは突然、僕の乳首や喉、耳たぶを渾身の力でつまんできました。まぶたをつままれたこともありました。僕はエリカと性行為するのが怖くなってきました。体中が痛むし、激痛で射精できずに終わることがほとんどだったので、嫌になってきました。
このことを友人のタケシに打ち明けました。
「たぶん、悪魔だ」と、タケシ───「エリカには悪魔が取り憑いてるはずだ。色情魔的悪魔だ」タケシは霊感があり、地元では有名な霊能者でした。
「お前の力で、どうにかできないか?」と、僕。
タケシは答えました───「おれが今夜お祓いをしてやる。エリカの住んでる場所を教えてくれ」
次の日、タケシは病院にいました。乳首をケガしたそうです。
【完】
[慝名さん]
【デート】
大学2年のユウジに彼女ができた。
彼女の名前は、サヤカ。
付き合い始めて、5日目───2人にとって、初の日曜日───2人はドライブに行った。
夕方───ドライブの帰り。
運転しているユウジは勇気を振り絞って、言った───「サヤカちゃん、あのさ······ホテルに行かないか?」
「うん、いいよ」と、助手席のサヤカは答えた。
ユウジは童貞だった。ユウジの胸は、高鳴った。
山道に差し掛かった頃、ラブホテルがちらほら見えてきた。運転しているユウジは勃起してきた。同時に緊張してきた。ユウジは車の速度を落とした───「······このホテルに入ってみようか?」
「うん」
2人が乗る車はゆっくりと、ホテルの敷地内に入った。古臭い感じのホテルだったが、ユウジの胸の高鳴りと勃起は、凄まじかった。車はゆっくり、ホテルの駐車場へ向かった───その時、ホテルの奥の森から、包丁を持った男が走り出てきた。男は包丁を振り回しながら、こっちに突進してきた。
「うぁ!何だ、あいつは!!?」と、ユウジは叫び、車をすぐに猛スピードでバックさせた。車は凄まじい勢いで後部から道路に出た。ユウジはすぐさま車を走らせた。
「な、何なんだ、今の奴は!?」と、ユウジ。
サヤカは言った───「私の父さん」
「え?」
「私の父さん。私の父さん、よく、家からいなくなるの。変質者なの、私の父さん」
ユウジは苦笑いした───「サヤカちゃん、変な冗談を言わな───」
「本当なの。私の父さん、狂ってるの。今の、私の父さんよ。私のこと、嫌いになった?」
「嫌いにはならないよ······」
「ありがとう。ねえ、ホテルに行かなくても、車の中でもできるよ」と、サヤカ。
ユウジは急激に再度、勃起した。【完】
[ホラー◆Yzk0NzU2]
【正体】
2002年───。
リエ───おれを受け入れ、愛し合い、最後にはおれをたぶらかした女。リエは浮気をした。だから、おれはリエとその浮気相手に───
───復讐する決意をした。
まず、おれはリエの浮気相手の過去を調べた。浮気相手は特殊部隊のリーダーの経験があった。逆におれが反撃されるのではないかと思ったおれは、浮気相手に反撃することを中止した。
ターゲットをリエだけに絞った。しかし、浮気相手は元特殊部隊のリーダーだけに、何かの異変に帯する嗅覚や直感は並外れた鋭さを持ってるだろう。リエに復讐すると、すぐに、おれが怪しいと勘づくに違いない。だから、おれはリエに復讐することを諦めた。
おれは正当化した───
───これが運命なのだ、と。
ある満月の夜、おれはリエに別れ話をした。
「どうして、別れたいの?」と、リエ。“お前が尻軽女だからだよ”と、言う勇気のないおれは、こう答えた───「リエならもっと、いい人が見つかるはずさ」
「••••••ジョニーくん、私に飽きたのね?」
“飽きたのはお前の方だろ、この尻軽女”と、言う勇気のないおれは言った───「浮気をするような人間は地獄に墜ちればいい。狼女め」
勇気───おれには勇気が残っていた。
「あ?貴様、知ってたんだな!」と、リエが正体を現した───髪が逆立った/口が裂けた/牙が生えた/目が吊り上がった/毛むくじゃらになった。
おれは叫んだ───「やっぱり、お前、狼女だったんだな!」
狼女は遠吠えをした。おれは落ちていた木の枝を狼女の目に突き刺さした。狼女は、もがき苦しみながら逃げ去った。おれは追いかけ、狼女を押し倒し、首の骨をへし折った。死んだ狼女はリエに戻り、灰と化し、消え去った。【完】
[ホラー◆Yzk0NzU2]
【ロボット】
片田舎の科学研究所で働いている26歳の工藤ヒサシは毎日、仕事が終わると実家の裏庭にある倉庫で、ロボットを作っていた。
友達のいないヒサシは死ぬまでには、会話ができるくらいの友達ロボットを作り上げたいと思っていた。
ヒサシの父は優しかった。母はヒサシが高校の時に病気で他界していた。ヒサシの兄は神奈川でサラリーマンをしていた。
2年前までエリカという彼女がいたが、エリカは金持ちの男と東京へ行った。
会話ができるようなロボットになるまでには、まだまだ時間がかかるようだった。いや、一生かけてもそんなロボットは作れないのかもしれなかった。ヒサシは、毎日、ひたすらロボット製作に没頭していた。
38歳のヒサシはロボットがスムーズに歩けるような足を作っていた。顔と胴体と両手は完成していた。“会話”は、すでに諦めていた。両手はカクカクとした操り人形のような動きだったが、ヒサシはそれで良しと甘んじていた。顔は幼児が描いたようなロボットの顔で、雑な作りだった。
45歳のヒサシはロボットに小さなタイヤを4つ付ける作業をしていた。スムーズに動く足のことは、すでに諦めていた。
46歳のヒサシは、科学研究所の爆発事故で即死した。大破した科学研究所から小さな光が出てきた。光は天へ昇らず、ヒサシの実家の裏庭の倉庫へ入り、ロボットの中に入った。ロボットの4つのタイヤは消え、かっこいい足が生えた。雑な顔は消え、かっこいい顔が生えた。操り人形のような両手は消え、かっこいい両手が生えた。ロボットのかっこいい目が点灯し、動きだした。ロボットはかっこいい手で倉庫の扉を開けた。かっこいい両手を真っ直ぐ上へ伸ばした。かっこいい足から、かっこいい炎が出て、空の彼方へ飛んで行った。【完】
[ザラザラ◆NzczN2Qx]