>>317
『俺は小学5年生の時死んだ。5年1組だった。1981年の11月だった。水戸にある病院だ。5年生になってすぐの頃だった。女の子が転校してきたんだ。その女の子と初めて話したのが図書室の廊下だったんだ。俺が【本好きなの?】と聞いたらその子は【なんでも読むよ、でも今は世界の本が好きかな、いろんな国の本、今はエジプトの本、ピラミッドとかの本を読んでる】って答えてくれた。その時の印象が強くて俺、その子の事、好きになったんだけどね。夏に俺、病気になって入院した。そのまま学校には戻れないまま俺は死んだんだ。俺が死んだ時、そう病室の天井の方から自分の事を見下ろしていたよ。その後、自分の家にも行った。そして小学校にも行った。図書室の廊下のところで、あの子が泣いていた。俺はその子に必死に声をかけた。でも俺、幽霊だったから声は届かないのさ。そしたら俺、そこから離れられなくなった。それから何年もして図書室が今の場所に変わった時だけ動けた。今はこの場所からも動けない。俺が死んでから多分25年とか26年たった。
その間、俺の声が聴こえた生徒が何人もいたけど俺の姿が見えたのは君だけだったんだよ。それでお願いだ。君に取り憑かせてくれ』
なるほど、この地縛霊は俺に憑依して何かしらの無念を晴らす気なんだな。と言う事はわかった。
こいつそんなに悪い奴でも無さそうだ。
そもそも悪霊だったら勝手に憑依するはずで、本人に断りを入れる霊などないはずだから。
「俺に取り憑いて何がしたいんだ?その女の子に会いたいのか?」
俺が質問すると地縛霊は
『いやその女の子は6年生になる前に転校していったからね。今更会いたいとかはない。俺は死んでからこの‘学校の図書室の廊下‘って場所から動けないんだ。外の世界を見たいだけだ』
「取り憑くと俺の意識はどうなる」
『俺は悪霊じゃない、意識も身体の操縦も君の思うままのはずだ』
「わかった」
俺も霊能力を発揮して地縛霊を俺の体内に取り込んだ。
これは俺も初めての事だから。
まああまり良い気持ちもしないのが正直なところだ。
つづく