地球にぶつかると大停電を引き起こす可能性が懸念される、太陽から高速で吹き上がるガスを、飛騨天文台の観測チームが世界で初めて観測に成功した。
太陽から吹いてくる「太陽風」と言うプラズマを帯びた粒子は、地球の大気と衝突すると、オーロラが発生したり、地上の送電線に異常な電流を誘導して大規模な停電を引き起こす原因となることがある。
太陽面爆発の予知を研究している京都大学の一本潔理学研究科教授らのチームは昨年、岐阜県の飛騨天文台に、太陽から高速に飛び出す噴出現象を観測するための装置SDDI(Solar Dynamics Doppler Imager)を設置した。
これは、赤オレンジ色をしたガスの層(彩層面)の物質が高速で飛び出す運動をとらえるために開発されたスピードガンのような装置で、従来は最大秒速55キロまでしか観測できなかったのに対し、新しい装置では、最大秒速410キロをカバーできるようになった。
太陽風は常に一定ではなく、黒点近くで発生する爆発(フレア)や、プラズマガスが塊となって突発的に放出される「コロナ質量放出」によって、激しく変動する。
これまでの研究でプロミネンスが宇宙空間に飛んでいく際に、コロナ質量放出が発生することが明らかになっているが、全容解明には高速で飛び出すプロミネンスの観測が不可欠だった。
研究チームは昨年5月に太陽の東縁で秒速180キロの噴出現象をとらえて以来、7月にも秒速370キロを観測。
最近では、当サイトでもお伝えした4月2日〜3日にかけて発生した中規模フレア時にコロナ質量放出を確認。
2日早朝に発生したフレアでは、太陽から秒速250キロで高速噴出したプロミネンスが、宇宙空間を秒速500キロで移動するようすもとらえたという。
研究チームは、「観測回数をたくさん重ねることで、地球の生活に影響を及ぼすコロナ質量放出を事前に予測できる方法の開発に結びつけたい」と期待を寄せている。
なおこの研究成果は、学術誌『Solar Physics(太陽物理学)』に掲載された。
【日時】2017年04月20日(木) 15:16
【提供】ハザードラボ