東日本大震災を引き起こした三陸沖のプレート境界では、巨大地震を引き起こすような断層すべり以外に、揺れを感じないほど断層がゆっくりずれる「スロースリップ」と呼ばれる地震が発生する。
京都大学や九州大学などのグループは、ゆっくり地震が潮の満ち引きと深く関係している事実を発見した。
ゆっくり地震は、通常の地震と異なり、プレート境界付近の断層が、数日から1年以上かけてゆっくりすべる地殻変動のことで、東日本大震災の前にも発生していたことが明らかにされていることから、巨大地震発生の予兆をとらえる可能性があるとして、実態解明が急がれている。
京大防災研究所の博士課程、片山智史さんらのグループは、2013年6月に宮崎県から鹿児島県沖の南海トラフで発生したゆっくり地震を分析。
日本列島が載っているユーラシアプレートの下に、フィリピン海プレートが沈み込んでいる境界付近では、東西70キロ、南北150キロの岩盤が、約1カ月かけてゆっくりずれ動き、海底に設置した地震計が低周波微動をとらえていた。
通常、プレートの沈み込みが深い部分で起きるゆっくり地震は、微動活動が活発な期間と潮の満ち引きが関係するのに対し、今回調査したプレート境界の浅い部分では、微動活動がおさまりそうな最後の方でも、潮位の変化でゆっくり地震が起こることが確認された。
片山さんは「いったん岩盤がずれ始めると、ずれやすさが高まり、最後のほうでは海面水位の変化というわずかな刺激に反応するようになるのではないか」と話している。
グループは今後、プレート境界付近の断層の岩石の種類や摩擦特性を調べることで、ゆっくり地震の発生メカニズムを解明し、巨大地震予測に結びつくことを期待している。
この研究成果は、米科学誌『Geophysical Research Letters』に掲載された。
【日時】2017年11月10日(金) 16:59
【提供】ハザードラボ