⛸スケート

　バンクーバー冬季五輪フィギュアスケート・女子フリー（２５日＝日本時間２６日、パシフィック・コロシアム）女子フリーで、ショートプログラム（ＳＰ）首位の金妍児（１９）＝キム・ヨナ、韓国＝が完ぺきな演技で１５０・０６点。合計２２８・５６点と保持する世界最高得点を大幅に更新して金メダルに輝いた。銀メダルの浅田真央（１９）＝中京大＝を２３・０６点も引き離す圧勝。今後は３月の世界選手権（イタリア・トリノ）を最後にプロ転向の可能性が高く、五輪は今大会が最後になりそうだ。

　金メダルを確信する涙だった。青の衣装に身を包んだ金妍児が演技終了直後に初めて泣いた。観客席で何本もの太極旗が振られる中、表示されたのは世界最高点を更新する１５０・０６。ＳＰ２位の浅田が滑る前に決着をつけてしまった。

　「いつもほかの選手が泣くのを見て、何で泣くんだろうと思っていた。自分が泣くとは思わなかった。金メダルが夢だったけどもう夢ではない。すべてが終わったという気持ちだが、終わってみたら、五輪は考えていたほど難しくなかった」

　とても１９歳とは思えない。五輪の舞台で、女王にふさわしい完ぺきな演技をみせた。ガーシュインのピアノ協奏曲が流れると、７つのジャンプを決めただけでなく、表現力豊かな動きで高い芸術性も披露。ＳＰとの合計でも、保持していた世界最高を１８・５３点も更新する２２８・５６点の世界最高。長年のライバル浅田に２３・０６点の大差をつけ圧勝した。

　「金妍児の演技は現在の採点方法に合わせて構成してあり、１つ１つすべての動きが得点につながるようになっている」と解説するのは元米国代表で、８４年サラエボ五輪金のスコット・ハミルトン氏（５１）。浅田のこだわった３回転半ジャンプには見向きもせず、確実に得点できる演技の完成度を高めてきたことを勝因に挙げた。

　韓国フィギュア界は過去の五輪でメダルゼロ。「国民の妹」と呼ばれ、１人では外出できないほどの人気を誇る金妍児への期待は絶大だ。０６年からは拠点をカナダのトロントに移して元五輪銀メダリストのブライアン・オーサー・コーチ（４８）の指導を受けてきた。

　独学で幼いころから指導してくれた母親が同行しただけでなく、トレーナーやセラピストもサポート。１カ月ほど前には左足の不調を訴えていたというが、そんな不安はまったく感じさせなかった。まさに「チーム金妍児」に支えられ、“第２の祖国”で金メダルを手中にした。

　これで昨季の四大陸選手権から、国際大会６連勝。「今は五輪で勝てたことを喜びたい。先のことは決めていない」というが、韓国メディアでは３月の世界選手権を最後にプロ転向と報じられている。五輪は今回のバンクーバー限り、浅田との直接対決も世界選手権で見納めになる可能性が大きい。韓国の国民的ヒロインとなった若き女王はライバルとの“ラストバトル”も制して、新たな人生を歩み出す。