🏙 広島ホスト・総合

ホストに１０００万円貢いで騙された女性の嘆きと恨み

　カラスについて書く。
　飲食街の残飯をあさる鳥のカラスのことではない。刑事が隠語で言うカラスのことだ。つまり、茶髪で黒ずくめのスーツを着込んで若い女に声をかけるホストクラブのホストのことをカラスと呼ぶ。
　
　１年ほど前までは名古屋栄の地下鉄改札口付近にこのカラスが群れをなしていた。その後の風営法の強化でその付近からは消えたが、カラスは現在でも場所を移してはナンパに忙しい。鳥のカラスはゴミ袋を狙うがホストカラスの獲物はきまって若い女、それも遊び大好きな女を標的にする。大抵の女はナンパを無視するが中には引っかかる女もいる。

　２５歳ＯＬのＳさんもその一人である。
　ただし彼女の場合はナンパではなかった。
　昨年の秋、女友達に誘われてホストクラブに足を入れたのがきっかけだった。
　厳しい家庭に育ち夜遊びとは無縁のＯＬ生活をしていた一人っ子のＳさんにとってホストクラブは別世界だったようだ。華やかで外見だけカッコいいホストに優しくされ、あっという間に一人のホストの虜になった。
たった半年の間に１０００万円以上の金を使わせたのはヒロシという名のホストである。

　ホストと客の関係は、紐で操る鵜飼いの、鵜匠と鵜の関係に似ている。調教された数十羽の鵜は必ず川から魚を捕ってくる。調教次第で大漁となる。鵜匠がホストで鵜が女の客。
　ホストにとって、自分に貢いでくれる女が多ければ多いほどに金が入る。ヒロシはＳさん一人からだけでも１０００万円以上を使わせていた。もしＳさんのような女が５人もいたら数千万円の金になる。

　ヒロシは「好きだよ」から始まり「一緒に暮らすよ」に至り、やがて「結婚してもいいよ」を口にした。
　Ｓさんは想定どおりにのめり込んだ。のめり込む女ほどホストにとってオイシイことはない。所詮、ホストの本音は女から金をしゃぶりつくすことにある。
　それが今風のプロのホストだろう。その駆け引きの実態は、前述のように巧妙に詐称を駆使した犯罪的光景となる。

　ＯＬ生活で貯めた数百万円の金が底をついたＳさんはヒロシの言うがままに夜の仕事に身を沈め、金をつくる女に変貌していった。
　やがてヒロシの誕生日が来た。

　ホストにとって自分の誕生日こそ大金を動かす絶好日。もともと熾烈な競争にさらされているホストにとって、この日こそ狙った女にバースデーパーティーを買い取らせ、見栄と実力を誇示できる場となる。
　ヒロシは「バースデーパーティーをやってほしい」とＳさんに泣きついた。
　「お金はもうないの」と断るＳさんに「百万円でおさめるから」とねだり「結婚するから…お願い…」とたたみ込んだ。すでに結婚を信じていたＳさん。借金を重ねて二人で暮す部屋まで用意するほど惚れていたのだ。だからこの百万円も金策した。　しかし、ここから状況はいっきに事件化する。
　
　百万円のはずだったバースデーパティー料金がなんと３５０万円に増やされて請求されるに至り、ついにＳさんはヒロシに騙され続けていたことを悟った。結婚の約束を餌に、完全に食われて騙されていたのである。

　ほどなくヒロシは豹変し「払えないのなら、知らないよ」「もし払いが遅れたら家にも行くよ…」と請求に転じた。当然というべきか、暴力が加わった。

　これは、れっきとしたホスト被害事件といえる。俺は、ある人を通じてＳさんの相談を受ける。問題の解決はそう難しくない。料金の詐称と結婚の偽称で事件にできると踏んだ。さらに未払い金と称して請求を繰り返したら不当行為であり強要で刑事事件にもできるからだ。
　Ｓさんが提出した支払いと請求の経過記録を持参してさっそく弁護士に依頼した。
　それにしてもＳさんのようなホスト被害は後を絶たないのが現状だ。Ｓさんの話があってから１週間もしないうちに、もう一人の被害が伝わってきた。２０歳のキャバ嬢のケースはさらに深刻である。

　数十万円の未払いが原因で「売り飛ばされる」寸前だった。ホストクラブ側が料金を滞納した女をヘルスに売り、未納代金を回収する手口だ。この場合、女はほとんど２４時間監視のタコ部屋に入って、滞納した金額の何倍も働かされる地獄に落ちる。この２０歳の女もホストに狂った一人だが、彼女はナンパがきっかけだった。

　それにしてもホストにハマる女たちは、共通して寂しがりで、しかも歓楽に酔いやすい。ホストは女を騙すのが仕事だとわかっていても、強迫的な請求が迫り、生活が監視される事態に陥ってからでないと、その怖さが身にしみない。
　若い女どもよ、ホストにご注意あれ。