松山刑務所大井造船作業場(愛媛県今治市)から受刑者が逃走した事件で12日、事件発生後、最大規模の約900人の警察官が平尾龍磨容疑者(27)=逃走容疑で指名手配=の行方を追った広島県尾道市向島の現場。普段のどかな島は一層ものものしい雰囲気に包まれた。
投入された警察官の内訳は、愛媛県警約600人、広島県警約300人。へリコプターは両県警から1機ずつ、パトカー、白バイのほかオフロードバイクも出動した。
逃走から5日目。捜索難航の背景に島内に多い空き家があった。尾道市によると、平成27年度の調査時点で向島の空き家は1089軒。広島県警尾道署幹部は「捜索には立会人が必要で手間取っている。目視にとどまることも多い」と話す。所有者を確認できれば捜査することができる状況だという。
住民の不安も募った。一人暮らしの女性(83)は「夜は物音がすると怖いし、鍵を閉めているかをしっかり確認する日々。遠くで暮らす子供たちは毎日心配して連絡をくれるけれど、安心して暮らしたい。島には私のように一人暮らしの高齢者が多いので早く捕まってほしい」と心配そうに話した。
島内の公立学校でも、保護者の送迎や集団下校が続いた。同市向東町の市立向東小学校のグラウンドでは、下校時間に保護者らの送迎車がずらりと並んでいた。
自転車で孫を迎えにきた女性(69)は「捜査員が多くなってますますものものしい雰囲気を感じる。検問の渋滞で島の外にも出にくくて自由に動けない」と困惑。5年生の孫(10)は「11日はお母さんに見てもらってやっと15分ぐらい外で遊べた。何かあったらと思うと怖いけど、たくさん遊びたい。(容疑者が)捕まったら学校で友達とサッカーやドッジボールでめいっぱい遊びたい」と話していた。