ぼくに羽があったなら

NO.3138380 2014/03/07 19:53

ぼくに羽があったなら

──死にたい。
生きていてもいいことなんてないし。

何でだろうね、人は人を簡単に裏切る。
キミもどうせ、私なんて忘れてどこか遠くにいっちゃうんでしょ。

近くにいてくれなんて言ってない。

ただ私は、私は───

「理解してくれる人が欲しいだけなんだ」

[みつば◆mh4x7bN.]

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#14 2014/03/11 14:53: 「あ、それは──」

言葉を飲み込む。
なんて、言えばいいんだ…？
「塗り潰すのが趣味なの」…？
「世界の色みたいでしょ」…？

ううん、だめだ。

「もったいないよ、せっかくきれいなお空なのに」

ああ、この子は天使なのだろうか。
私が欲しい言葉をさらりと言いのけてしまう。
こんなこと、今まで言われたことないからなんて言えばいいのかわからない…

「べつ、に…納得いかなかったから塗り潰しただけだし」

そして私はただの最低な奴。
こんな反応しかできない、本当にただの最低な奴。; [みつば◆mh4x7bN.]
#15 2014/03/11 15:00: 「ねえ、ぼく、おねーさんの絵をもっと見たいな」

こんな最低な奴の絵でも？

「これからも、ここに来ておねーさんと一緒にいてもいい？」

子供って、素直だよな。
私くらいの歳になると、思春期というものを迎えるから男子はこんなストレートな言葉言ってくれないもんな。

「いいんじゃないの」

口からそっけない言葉が出ていた。

「やったー」

男の子は満面の笑み。なんて嬉しそうなんだろう。

私の唯一の居場所に、新たな住人が加わった。; [みつば◆mh4x7bN.]
#16 2014/03/11 15:06: 次の日の朝、私はまたあの場所へ向かう。
おにぎりを二つ持って。

「あ、おねーさんおはよう」

こいつ、早いな…
屋上に着くなり、歓迎される私。

「おはよ」

素直な男の子に対して、私は未だそっけない。

「ん、食べれば」

男の子の前に家を出る際に持ってきたおにぎりを差し出す。
男の子は目を輝かせて、おにぎりを見つめた。

「ありがとうおねーさん」

私からおにぎりを受け取ると、すぐさま勢いよく食べ始める男の子。
朝、食べてきてないのかな。; [みつば◆mh4x7bN.]
#17 2014/03/11 15:16: 「すっぱい」

男の子はまさに某ウサギのキャラクターのように口をばってんにした。

「ははは、ハズレ」

「あ、おねーさん今笑った」

…しまった。
不覚にも笑みが零れてしまったではないか。
しかもこいつ、何嬉しそうにしてんだ。

「うるさい。…キミ、お金持ち？」

おにぎりを見ただけであんなに目を輝かせるなんて、普通じゃない。
きっとそんな庶民的なものは食べない、どこかの坊っちゃんなんだろう。
そんな気持ちで質問してみる。

「え、違うよ！？なんで？」

ものすごい勢いで否定された。; [みつば◆mh4x7bN.]
#18 2014/03/11 15:18: 「おにぎり見て興奮してたじゃん」

私が冷静にそう言うと、男の子は俯いてしまった。
何かまずいこと、言ったかな…？

「…ぼくね、」

「…？」

「……」

「……」

…何なんだこの間は。
言い出しにくいことなのか？; [みつば◆mh4x7bN.]
#19 2014/03/11 15:23: 「あ、やっぱ何でもない」

顔をぱっとあげる男の子。
…何だったんだろう、今の。

そういえば私、この子のこと何も知らないな。
まだ会ったばかりっていうのもあるかもしれないけど、それにしても知らなさすぎる。

てか学校は？
この子、見た感じから小学生だよね？
普通なら学校に行ってるはずだけど…

あれ、疑問が次々に出てくるぞ。
そういえばこの子も、私に「学校は？」なんて質問してこなかったな…
気を遣ってくれてる…とか？; [みつば◆mh4x7bN.]
#20 2014/03/11 15:29: 「ねえ、キミのこともっと知りたい」

この子とこれからも会うんだったら、何も知らないままなんて何だか嫌だ。
お互いに大きな秘密を抱えたまま一緒の空間にいるなんて、あの教室みたいで嫌だ。

「キミは、学校にいかないの？」

まずはこの辺の質問が妥当だろう。

「行きたくても行けないんだ」

悲しげな瞳で呟く男の子。
行きたくても行けない…とは、あれか、学級閉鎖になっちゃったとか？

心の中で質問をしていると、男の子は上の服を脱ぎだした。

「ちょっと、何してるの！？」

こんな場所で何をやろうというのだ。
いきなりこんな場所で服を脱ぐ小学生がどこにいる。; [みつば◆mh4x7bN.]
#21 2014/03/11 15:36: だがそんな私のくだらない考えも、すぐに打ち切られる。

「…何、それ」

それはまさに…傷だらけという言葉が似合う。

「ま、まさか学校でいじめに遭ってるの？」

こんな傷、それしかあり得ないというか。
それだったら全てつながる。
学校に行きたくても、いじめに遭っているからいけない。
そういうこと？

「学校でじゃないよ。おかーさん、最近こわくてさぁ」

虐待？

毎日毎日お母さんに虐待されてるってこと？
それって、それって…

「ひどい…」

思わず本音が漏れる。

「外からは見えないところを叩いたり蹴ったりするんだ。おかーさん、ずるいよね」; [みつば◆mh4x7bN.]
#22 2014/03/13 13:50: 男の子は苦笑いした。

「…ばか」

私は静かに、男の子を抱きしめた。
これ以上、無理に笑うこの子を見ていたくなかった。

「おねーさん…？」

意外なことに驚いた様子。
でも、すぐに抱きしめ返し、泣いた。

今までの我慢を全て吐き出すようにして泣いた。; [みつば◆mh4x7bN.]
#23 2014/03/13 13:54: 「…落ち着いた？」

数分後、完全に泣きやんだ男の子を抱きしめながら訊く。

「うん」

よかった、この子はちゃんと小学生だ。

私から離れた男の子は、自分の服を着始める。

「恥ずかしいところ見せちゃってごめんね、おねーさん」

「何言ってんの、キミまだ子供なんだから沢山泣いて本音漏らさないでどうすんの」

男の子は静かに頷く。; [みつば◆mh4x7bN.]
#24 2014/03/13 14:00: 「今日はそろそろ帰ろうか」

立ち上がった私は、屋上の階段へ向かう。
そんな私の裾を、引っ張る手。

「…家、帰りたくない」

俯いていてもわかる。
この子は必死に訴えている、と。

「じゃあ、今日はここにいようか」

初めてのわがままに嬉しくなる。
なんか、心を開いてくれたみたいな。
勘違いかもしれないけど。; [みつば◆mh4x7bN.]
#25 2014/03/13 14:07: 屋上に寝転がり、もうすっかり暗くなった空を見る。

「きれいだね」

私の隣で呟く男の子。

「…ん、そうだね」

呟きに返す。

「キミ、私に遠慮なんてしなくていいんだからね」

「…え？」

「ほら、訊きたい事とか知りたい事とかやってほしい事とか、そういうの全部言って欲しいってこと」

「うん、わかった」

真夏の気持ち良い夜の風が吹く中。
そんな会話をしながら、私たちは眠りについた。; [みつば◆mh4x7bN.]
#26 2014/03/14 14:28: 「おねーさんにダーイブ！」

まだ眠気が残る朝。
お腹に走った衝撃で目が覚める。

「おはよう、おねーさん」

…さすが小学生、朝が早いこと。
ていうかこいつ…絶対悪いことしたと思ってないな。

けろっとした笑顔を向けられると、何も言えないけど。; [みつば◆mh4x7bN.]
#27 2014/03/14 14:34: 「ねえねえ、昨日のおにぎり、もうないの？」

男の子の腹の虫が騒いだ。

「ない」

そうきっぱり答える。
おにぎりは元々、昨日の分しか持って来ていなかったわけだから…
まさかここに寝泊まりすることになるなんて思いもしなかったから。

「えー、お腹すいたー」

だだをこね始める。
こうなった子供は本当に面倒だ。
私は溜め息をつく。

仕方ないから、コンビニにでも行こう。; [みつば◆mh4x7bN.]
#28 2014/03/14 14:39: 気だるそうな店員の声に迎えられ、私と男の子はコンビニへ足を踏み込む。
まだ朝っぱらなこともあって、客足は少ないようだ。

…とっとと買い物済ませて屋上に行こう。
こんな場面あいつらに見られたりしたら洒落にならない。

「決まったらさっさと──」

男の子の方を振り返った私は言葉を失う。

「…何、この量」

「ぼくが食べる分だよ」; [みつば◆mh4x7bN.]
#29 2014/03/14 14:44: おいおい冗談じゃない。
何なんだこの量は。

「…キミ、こんなのも食べるのかな〜？」

某ヒーローのカード。
カードを食べる小学生なんて聞いたことがない。
肉食でも草食でも雑食でもない、新たな生物の誕生か？

というかよく見ると量も半端じゃないが要らないものも半端なく含まれている…

「本当に食べるやつだけ持ってきて」; [みつば◆mh4x7bN.]
#30 2014/03/14 14:47: 少し睨んでやると、大人しく棚に戻しに行った。

そこでようやく、私たちはレジへと向かった。
また店員の気だるそうな声を聞きながら、財布を取り出す。

200円。

私の持っているお金。
少ない…

まさに顔面蒼白である。; [みつば◆mh4x7bN.]
#31 2014/03/14 14:51: 店員に言われた金額は220円。
20円分上回ってしまった。

私は小さく舌打ちをした。
そんな私を店員は怯えた顔で見ていた。

「…やっぱいいです」

結局私たちは、コンビニでは何も買わずに出てきてしまった。

「お腹すいたー」; [みつば◆mh4x7bN.]
#32 2014/03/17 14:03: 二人でお腹をさする始末。
無様だ。

「でもまさかおねーさんお金持ってないとは思わなかったな」

「持ってないんじゃない、足りなかったの」

たった200円しか入っていない貧相な財布を見せながら言う。
無様だ。

「どうするー？お腹すいたー」

妙に間延びした口調、イラつくな…
そしてこの炎天下。

「ちょっとあの屋上で待ってて」

ちょっと、いいこと思いついた。; [みつば◆mh4x7bN.]
#33 2014/03/17 14:07: 「ん、」

数分後、屋上に戻ったらちゃんと男の子は待っていた。
どこから持ってきたのか、タイヤが一緒に。

「おねーさん、これどうしたの？」

それはこっちの台詞だ。

「盗んできた」

わざと笑わずにさらりと言ってみる。; [みつば◆mh4x7bN.]
#34 2014/03/17 14:11: 「えぇぇぇ！？だめだよおねーさん、ちゃんと返してこようよ」

ははは、やっぱ反応面白い。
私からお金を受け取ろうと反射的に伸ばしていた手を引っ込めながら焦る顔。

「うっそー。家から持ってきた」

なあんだ、と安堵のため息をつく男の子。
本当に、素直な反応が新鮮だ。

「またコンビニ行こうよ」

私の腕をひっぱる。

「…しょうがないな」; [みつば◆mh4x7bN.]
#35 2014/03/17 14:14: 先程のコンビニに入ると、相変わらず気だるそうな店員の声に迎えられる。
だが、私の顔を見るなり背筋を伸ばしガタガタと小刻みに震えだした。

…いやだなぁ、変な噂流されたら。

「さっさと要るものだけ持ってきて」

強調した個所は、言わなくてもわかるだろう。
男の子はすぐに持ってきた。

私も自分の分をかごに入れ、レジへ向かう。; [みつば◆mh4x7bN.]
#36 2014/03/17 14:19: 420円になります、と声が震えている。

はいはい420円ね、って…
あれ？

「…キミ、さっきより金額高いのは何でかな？」

にこにこ笑顔を作って男の子を振り返る。

「さ、さあ…？」

気づいてないふり。
ばればれ。

「…ま、いいや」

大人しく支払う。
店員をちらっとみると、男の子に向かって小さくガッツポーズをしていたから小さく舌打ちしてみた。

お釣りを渡す手が震えて小銭を零していたが、まあ見なかったことに。; [みつば◆mh4x7bN.]
#37 2014/03/17 14:22: 「このコンビニの店員さんいい人だね」

コンビニを出てすぐ、笑顔で言う。
ああ、あのガッツポーズのことかな。

「…」

あえて無視してやった。
もう、あの店員のことは忘れたい。
どうか変な噂だけは流さないようにと願い…; [みつば◆mh4x7bN.]
#38 2014/03/17 14:26: 「これ美味しい」

「ああ、サンドイッチね」

片手で持てるサンドイッチを両手で包むようにして持って食べている。
どこまで面白いんだキミは。

サンドイッチも知らないとはこの子の母親は虐待したあげく育児放棄か？

「おねーさんいる？」

私の前にサンドイッチを差し出す男の子。
そのサンドイッチを、でかい一口で口に含む。

ん、美味しい。; [みつば◆mh4x7bN.]
#39 2014/03/17 14:29: 「…ねえ、そろそろおねーさんのこと教えてほしいな」

少し遅めの朝ごはんを終えて寝転がると、タイヤに座り遠慮がちに訊いてくる。

「…あんた、私の話聞いて泣くなよ？」

冗談のつもりだった。

「うん」

キミも冗談だってわかってたよね。; [みつば◆mh4x7bN.]
#40 2014/03/17 14:33: 「私さ、学校行ってないの」

唐突な話に男の子は、え、と小さく声を漏らす。
それでも真剣な表情に戻って、私の話を聞こうとしてくれている。

「昔さ、いじめられてる子がいて、友達ってわけじゃなかったんだよ？でも、ただいじめが許せなかったから…」

だから？

「その子のこといじめてる子たちに、一言言ってやったんだ」

なんて？

「やめろ、って」

それで？

「結果、私が代わりにいじめのターゲットになっちゃったってわけ」; [みつば◆mh4x7bN.]
#41 2014/03/17 14:37: ここまで話終えて、何だか少しすっきりした。
こんなに人に話を聞いてもらえたのは初めてだし、私のこと何も知らないからこそ喋れることってやっぱあるじゃん。

…って、何だ感想とかないのか？
私が男の子の方を見ると…

泣いていた。

一粒一粒、涙を流していた。

「ちょ、何で泣いて…」

何だか私が焦っちゃって。
その場で思わず起き上がった。; [みつば◆mh4x7bN.]
#42 2014/03/17 14:41: 「おねーさんは、優しい人だよ」

涙を袖で拭う。
気づけば私も泣いていた。

何時間くらい泣いただろうか、空はもう太陽が沈もうとしていた。
私と男の子は寝転がって夕陽を見る。

「…きれいだね」

真っ直ぐ夕陽を見つめながら言う男の子。
私も静かに頷いた。

「描いて」

うん、描くよ。

キミのために。; [みつば◆mh4x7bN.]
#43 2014/03/23 02:30: 家に帰ると、また誰もいなかった。
置手紙もないし、帰ってきた形跡がない。

…いつからこんなになっちゃったのかな。

私が自分の母親を"あの人"なんて呼ぶようになったのはいつだったっけか。
私が自分の両親を両親と見れなくなったのはいつだったっけか。

考えるだけで頭が痛い。

…あの子に、話してみたい。
でも、あの子だって大変な思いをしているわけで…
心配掛けたくないな。; [みつば◆mh4x7bN.]
#44 2014/03/23 02:35: 「おはようおねーさん」

次の日の朝も、変わらず屋上に足を運んだ。
そんな私に変わらず挨拶をしてくれる唯一の話し相手。

「おはよ」

そっけないけど、心では感謝してる。

「おにぎり持って来てくれた？」

「そりゃあもちろん」

そう言って男の子におにぎりを手渡す。
男の子は嬉しそうに両手で包みこむように受け取った。

「ありがとう」

そして笑顔を向ける。

「いただきます」

一気にほおばる。; [みつば◆mh4x7bN.]
#45 2014/03/23 02:37: そんな光景を見ながら、私も一口。

「…げっ、梅だ」

「あはは、おねーさんハズレー」

指をさして笑ってくる。
いつかのお返しか…

「キミは何味？」

少々不貞腐れながら訊ねる。

「明太子」

ピースサイン。
私のイライラは募る。; [みつば◆mh4x7bN.]
#46 2014/03/23 02:41: 小さく舌打ちすると、男の子は食べかけをちぎって私に差し出す。

「可哀想なおねーさんにサービス」

…ちっ、イラつくサービスだ。
私は受け取った。

「ねえおねーさん」

「ん？」

「ぼくね、おかーさんとお話してみようと思うんだ」

固く決心した目。
そんな様子にかける言葉なんて決まっているだろう。

「頑張って」; [みつば◆mh4x7bN.]
#47 2014/03/23 02:48: ちゃんとお母さんと話せたかな。

家に帰ると、そのことばかりが気になっていた。
食事もまともに取らずにベッドに寝転がった。

あー、気になる。

あの子のお母さんはどんな人なんだろう。
見た目も怖くてヤンキーみたいな人？
見た目は優しくて中身がヤンキーみたいな人？

考えれば考えるほど気になる。
気付けば、私の頭の中はあの子のことでいっぱいだ。; [みつば◆mh4x7bN.]
#48 2014/03/23 02:53: 次の日。
私はいつもより早く家を出て屋上へ向かった。

早く結果を聞きたかった。
早く顔を見たかった。
早く話がしたかった。

扉を勢い良く開けて屋上に入ると、そこには男の子の姿は見当たらなかった。

さすがにまだ来てないか。
いつもより早いもんね、当たり前当たり前。

平常心を保ちながらも、本当は今すぐにでも会いに行きたい気持だった。

…気長に、待つとしよう。
きっとあの子が喜ぶであろう、空の絵を描いて。; [みつば◆mh4x7bN.]
#49 2014/03/24 00:49: あれ、来ないな。
数時間待った。
もういつもならあの子が来ているはずの時間はとっくに過ぎている。

…まさか、母親に殴られて病院送りとか？
それはない、よね…？

だめだめ、暗い事考えたら本当に不安になってしまうから明るい事考えなくちゃ。; [みつば◆mh4x7bN.]
#50 2014/03/24 00:54: 更に何時間が経っただろう、空の絵を描き終えたのと同時に、屋上の扉が開いた。
私はすぐさまそちらへ目を向ける。
期待と不安の眼差しで。

「…！」

気付けば私は、言葉より先に体が動いていた。
男の子の方へ、小走りでかけよっていた。

「おねーさん、おはよう」

いつもと変わらない挨拶。

「…ばか、もう昼だよ」

おはようの時間はとっくに過ぎた。
全く、今まで何をしていたというのだ。; [みつば◆mh4x7bN.]
#51 2014/03/24 00:58: 「おねーさん、泣いてるの…？」

俯いた私の顔を覗き込む、やや腫れている目。

「キミが、あまりにも、遅いから、病院、行ったの、かと思った…」

泣いているからだろうか、途切れ途切れにしか言葉を発することができない。

「ごめんね、これ買ってきてたんだ」

そう言って、袋からおにぎりを二つ、取り出した。
その手も微妙に赤かった。

「これって…」

「おねーさん、いつも持ってきてくれるでしょ？だからお礼」

どうしてそんな突然に…
ははは、泣かしてくれるじゃん。; [みつば◆mh4x7bN.]
#52 2014/03/24 01:05: 「急だね、今までなんてなにもくれてなかったじゃん」

私がそう言うと、やや間を空けて男の子が口を開く。

「…だって、おねーさんと会えるの、あと少しだから」

開いた口が塞がらないとはまさにことのこだろう。
あまりにも急に言い出すものだから、その言葉の意味を理解するのに少し時間を要した。

「ぼくね、おとーさんに引き取られることになったんだ」

私は黙っていた。

「おとーさんの仕事、都会だから引っ越さなくちゃならないんだ」

私は何も言わない。

「明後日、おとーさんが迎えに来るから、それで都会に行くんだ」; [みつば◆mh4x7bN.]
#53 2014/03/26 07:42: 面白いですね！
更新頑張ってください、応援しています; [芋◆1ksgXek2]
#54 2014/04/27 23:39: >>53 芋さま
コメントありがとうございます。
面白いと仰って下さり光栄です。
まだまだ未熟者ですがもっと楽しんで頂けるよう頑張っていきたいと思います！; [みつば◆F487weUQ]
#55 2014/04/27 23:43: 「へ、へえ…？」

あまりにも突然な事態に、素っ頓狂な声が漏れる。

「突然でごめんね」

男の子は俯く。
これは…喜んでもいいことなの？

「あ、安心してね。おとーさん優しいから」

なにやってんだ私。
こんな小さな子に気を遣わせるな。; [みつば◆etZFnhyk]
#56 2014/05/07 21:05: 泣けますね、、、
頑張って最後まで書いてください！応援してます！; [るん◆PDx8L51Q]
#57 2014/05/25 21:36: 頑張って！; [みよん]
#58 2014/06/09 18:01: >>56 るんさま
コメントありがとうございます。
泣けると仰って下さって嬉しいです。
最後まで書き切れるよう、頑張っていきます！

>>57 みよんさま
ありがとうございます。
頑張ります！; [みつば◆etZFnhyk]
#59 2014/06/09 18:07: 「──行ってらっしゃい！」

ちゃんと、笑顔で言えてるかな？
声は、震えてないかな？

「うん、行ってきます」

ああ、だめだ。
我慢できない。

「うぅ…」

「お、おねーさん？」

無様にも、その場にうずくまってしまっていた。; [みつば◆etZFnhyk]
#60 2014/06/09 18:16: 「──大丈夫だよ、おねーさん」

そう言って男の子は、私の横にしゃがんで頭を撫でてくれた。
それがかえって私の涙を止めさせないのだった。

─────

何分くらい経っただろう、私の涙は完全に止まっていた。

「ははは、おねーさんの目、腫れてる」

泣きやんだ私の顔を覗き込んでは、笑いながら遠慮のない言葉を発する。
やめて、こんな顔見ないで。
私は黙って、男の子にデコピンした。

「痛てっ」

はは、可愛い反応。
男の子は額を抑えながら涙目でこっちを見る。; [みつば◆etZFnhyk]
#61 2014/10/04 17:45: こちらの掲示板が閉鎖されるということですので、別サイトにてまた小説を書かせて頂こうかと思います。

http★://bakusai.com/thr_res/acode=11/ctgid=117/bid=526/tid=3544706/

何卒、よろしくお願い致します。; [みつば◆etZFnhyk]
#62 2016/02/06 12:02: ⤴; [匿名さん]
#63 2016/02/06 12:46最新レス: ⤴; [匿名さん]

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