📖 創作･携帯小説

吾輩は犬である。名前はワン太郎。雄。年齢は９歳である。
7年前に、この家にペットとして来た。
飼い主の子供、美月と浜辺を散歩している。

7年前にここに来てから、様々なことがあった。

最初の2年間は、毎日夕方、美月と浜辺を散歩していた。美月は吾輩と浜辺で遊んでいた。
美月はよく笑う可愛い雌だった。

5年前から、飼い主の母親が吾輩を散歩するようになった。
美月が帰って来るのが、遅くなったからだった。
毎朝、美月は出かけていた。3年目から、毎日同じ服を着て出かけて行った。
野良猫の猫婆さんは「それは、中学生になったからじゃ。人間の子供は、学校に行って勉強するんじゃよ。帰るのが遅いのは、部活というものをやってるからじゃ」と言った。
それでも、毎週1日だけは、美月と散歩した。その日は、美月はどこにも出かけなかった。日曜日という学校に行かない日だということは知ってた。

4年前の夏が終わる頃から、美月の様子が変わった。いつもピリピリ不機嫌だった。日曜日に散歩に連れて行ってくれなくなった。
親と喧嘩していた。

2年前になると、日曜日には散歩に連れて行ってくれるようになった。

今年の桜が散る頃からは、毎日散歩に連れて行ってくれるようになった。浜辺で遊ぶようになった。
浜辺で遊んでいると、人間の雄が来て、美月と話していた。
人間の雄からはフェロモンが出ていた。美月が好きなのだろう。
美月もまた楽しそうだった。

翌日も、散歩中に、人間の雄が来た。
美月と話していると、人間の雌が来た。美月と同じ年齢くらいだった。
人間の雌は、人間の雄にフェロモンを出し、美月に敵意を出していた。
人間の雄と雌は、2人で去って行った。

「ワン太郎、あなたは悩みなんてなくて、幸せだね。私も犬に生まれたら良かったな」と美月は吾輩に、水平線に堕ちていく夕日を見ながら行った。