がん検査の誤診で人工肛門を開設された男性「人生を狂わされた」
■ 誤診で人工肛門を開設
「がん検査で誤診されたために、まったく必要のない手術を受けて、人工肛門を開設されました」
そう憤るのは、富山芳男さん(仮名、75歳)だ。
富山さんの悲劇は、健康診断で大腸がんの便潜血検査を受けたところから始まった。
「検査で、がんの疑いありと診断され、翌月、再検査として内視鏡検査を受けました。すると、大腸内に炎症があるとのことで、念のために細胞を採られました。
その病院ではがんと確定する精密検査は行えないとのことで、サンプルは検査会社へと送られた。ですが、この会社でミスが起こりました。ラベルの貼り間違いで、私のサンプルが、直腸がんの患者のものと入れ替わってしまったのです」
誤って直腸がんと診断された富山さんは、手術を受けることになった。術前には担当医が、肛門から指を入れて感触で調べる直腸診を行ったが、肛門の近くにしこりを感じ、がんだと早合点した。
担当医は富山さんが直腸がんであることを疑わず、健康な肛門を切り落とし、人工肛門を開設。誤りに気付いたのは、手術で切除した肛門を精密検査に回し、悪性の腫瘍ではないと診断されたときだった。しかし、時すでに遅し。
「人工肛門になると、排泄を自分でコントロールできず、便やガスが知らない間に出ていることもある。長時間の外出や人付き合いが億劫になり、引きこもりがちになりました。
病院や検査会社とは和解し、それなりのおカネも支払われましたが、すっかり生活が変わってしまった。誤診で人生を狂わされたようなものです」