ケインズが理論化したのは「総所得、総利潤、総算出量、総雇用、総投資、総貯蓄といった全体としての経済体系の動き」(「雇用、利子および貨幣の一般理論」フランス語版への序文)であった。彼は有効需要による国民所得の決定論を明らかにすることで、経済諸量の概念とそれらの相互関連を理解する方法を与えた。それは国民経済を構成する経済諸量の社会的集計を計算し、経済関係の数量的側面を把握し、経済循環経路を解明する基礎を築き、国民所得論の、したがってマクロ経済学の生成となった。
国民所得論を簡単に要約hしよう。貿易と政府需要を捨象すると社会的需要総額は、生産財の補填需要、消費需要と投資需要との総計である。この需要総額によって総生産額が決められる。そのうち補填需要を控除した額が純生産であり、国民所得に相当するということである。経済学は経済量の社会的集計を通して経済量の相関関係の数学的な定式化、数量関係の法則化へと展開されていった。経済循環の構造を把握する場合、生産されたものは分配され、そして支出されるという理解から国内総生産(生産側)、国内総所得と国内総支出(これは2004年以後、国内総生産支出側へとカテゴリーが変更されている)とが一致するという3面等価の原則が経済循環理解のうえで一定の役割を有している。