国産ウイスキーに人気が高まるなか、森林総合研究所は酒の歴史上初めて、スギや白樺を原料とした香り豊かなアルコール発酵技術を開発した。
長期間の熟成を経ずとも、ウイスキーの樽のような香りがするという。
木材価格の低迷で、林業の荒廃が進むなか、森林総研の真柄(まがら)謙吾研究ディレクターらのチームは、熱処理や化学薬品を使わずに、水中で木材を100分の1ミリ程度に細かく砕く技術を開発。
茨城県つくば市の研究所内で伐採したスギや北海道の白樺材の樹皮を取り除いて、粉末処理したものにミネラルウォーターを混ぜてクリーム状にし、タンクの中で食品添加用の酵素とパン用酵母を加えることで、木材に含まれる繊維質(セルロース)を糖に分解し、アルコール発酵を同時に行うことに成功した。
発酵後に遠心分離機にかけた上澄み液から、アルコール度数2%ほどの発酵液ができ、これを蒸留した結果、アルコール度数28〜30%の蒸留物が完成した。
スギ材を使った蒸留物からは、スギ特有の香り成分テルペン類が多く含まれていたほか、白樺の蒸留物からはウイスキーやブランデーを長期間樽で熟成させたときに生成される甘く熟した芳醇な香り成分が含まれていることが明らかになった。
これから安全性のテストを重ねて、2020年度までに世界初の「木のお酒」の実現を目指すとしている。
【日時】2018年05月20日(日) 07:00
【提供】ハザードラボ