役割分担の見直しも
一畑バス4路線(マリンプラザ、御津、大東、荒島)の廃止方針を巡る松江市の対応に市民の不安がくすぶっている。9月末の廃止後の代替策の方向性は示したものの、具体的な便数や運行時間は未定。一連の対応が後手に回った印象は否めず、詳細の早期公表とともに、市全体の公共交通のあり方を早期に確立することが求められている。
「このままでは半島地域の過疎化に拍車がかかり、生活が困難になる」。2月に市役所を訪れた島根、鹿島、美保関の市内3町の自治会連合会やまちづくり協議会の会長ら6人が、住民の利便性確保や詳細の早期決定を市に要請した。
身近なバス路線の廃止方針に不安が広がる。松江市島根町多古の漁業、小川文賀さん(46)の高校1年生の四男はマリンプラザ線を利用。ただでさえ便数が少なく、所属するバレー部では部員らの協力で片付けを早く切り上げて活動しているだけに「(代替策の)具体的な内容が知りたい」と注文する。
松江市が一畑側から廃止方針の報告を受けたのは昨年11月17日で、同社に公式に存続を要望したのは1月17日。方向性の公表まで2カ月を要した。
4路線を利用する県立高校の生徒の状況について県教委は、可能性がある松江市内の6校など計8校の調査を12月中旬にまとめたのに対し、市が市立皆美が丘女子高の状況を把握したのは年明けの1月中旬。12月25日にあった行財政改革の会議で影響を問われた市の担当者は「まだ調査していない」と答えた。
前市長時代の2020年2月に日ノ丸自動車(鳥取市古海)が米子、松江両市を結ぶ松江線の廃止を表明した際には、その月のうちに市幹部が同社へ存続要望に訪れており、今回の対応の遅れが際立つ。
他に市内で路線バスを走らせる組織としては市交通局があるが、4月から強化される運転手の残業時間規制に対応するには現在の88人では10人ほど足りず、24年度のダイヤ改正で平日70便、土日祝日26便を減便する。須山敏之局長は「他路線のカバーをするだけの余裕はない」と話す。
運転手のみならず、人口減に伴う利用者減も避けられない中で、一畑と交通局双方のバス路線の役割分担をゼロベースで見直し、地域や路線に応じた利便性確保の方向性を描くことが求められる。対症療法では、いずれ立ちゆかなくなる。