秋の装飾で彩られるJR加茂中駅の待合室=雲南市加茂町加茂中
木造平屋のJR加茂中駅の外観=雲南市加茂町加茂中
駅の装飾をした親子らと杉原勉さん(中央奥)=雲南市加茂町加茂中、JR加茂中駅
秋の装飾で彩られるJR加茂中駅の待合室=雲南市加茂町加茂中
木造平屋のJR加茂中駅の外観=雲南市加茂町加茂中駅の装飾をした親子らと杉原勉さん(中央奥)=雲南市加茂町加茂中、JR加茂中駅
地元住民が切符の販売や駅舎の清掃を担うJR加茂中駅(雲南市加茂町加茂中)。色とりどりの色紙で折った柿やキノコ、コスモスなどが、壁や窓にちりばめられた待合室は季節感たっぷり。飾り付けを続ける杉原勉さん(63)が「無人駅ではなく、人がいる駅だからできること」とほほ笑む。
元JRマン。2017年に退社後も、鉄道との関係は終わらなかった。駅を管理する加茂中駅活性化対策協議会に誘われ、駅業務に当たるようになり、妻と共に始めたのが待合室の装飾だった。
利用者が少なく、シンプルな駅の造りも相まって覚えたさみしさがきっかけ。「シンプルな良さもあるが、人が自然に集まるような明るい駅舎にしたい」と、春はチューリップ、夏はヒマワリ、秋はコスモスと、四季折々の花々を折って飾ってきた。
冬は自宅で使わなくなったクリスマスツリーで彩り、毎日通う人も飽きないように工夫。九州から観光で訪れた鉄道ファンの男性(42)は「飾り付けがかわいくて、駅への愛と熱意が伝わってきます」と目尻を下げた。
一緒に切符売りや清掃を手がける伊藤恵子さん(60)も飾り付けに参加。さらに、地域にも輪が広がり、近くの加茂児童クラブや加茂子育て支援センター、加茂交流センターを利用する子どもや保護者も飾りを作るようになった。
通勤、通学の利用者ばかりだった駅は、子どもたちが自分で折ったり描いたりした飾りを見にやって来る光景が当たり前になった。
「装飾を通して駅や列車に興味を持ち、好きになってくれれば、『乗ってみたい』につながる」。駅の利用客を見送り、迎える杉原さんが見つめる未来には希望がある。