プロ野球セ・リーグで首位を独走してきた阪神タイガースが優勝を逃し、フル生産で用意された記念グッズは“幻”となった。関連商品を扱うメーカーは既に商品の大半を納入、専門店もセールの準備に追われていただけに、ショックを隠せない。経済的な打撃も大きく、業者からは悲痛な叫びが漏れる。阪神グッズを製造、販売するシャープ産業(神戸市東灘区)は、優勝決定翌日から記念グッズを発売できるよう、優勝へのマジックが初点灯した七月ごろから企画、八月後半から製造に入った。記念グッズの管理は厳しく、流出しないようにすべて廃棄処分にする。担当者は「優勝が決まってこそ成立する商品。リスクも承知の上で製造しているが、損失はそれなりの金額になる」。クライマックスシリーズを勝ち進めば、まだ日本一への望みはあるが、「グッズの使い回しはできません」と恨み節だ。山陽電鉄はリーグ優勝記念として、「スルッとKANSAI」対応のエスコートカード一万枚とバスカード二千枚を用意。グループ会社でも多くのイベントを計画していたが、山陽百貨店が優勝しなくても実施できるように企画した「夢と感動をありがとうセール」以外は中止に。カードはすべて廃棄される。「二〇〇三、〇五年と優勝し、優勝が当然だと錯覚していた」。球団公認グッズを扱う「人形の内田」明石店の坂井護さん(64)は打ち明ける。記念グッズを製造する各メーカーから寄せられた商品のリストは計約二百種類に上った。注文したグッズは納入済みで、優勝セールの開催も告知していた。急きょ「全力投球特別セール」に変更して実施するが、「経済効果は三倍も違う」と肩を落とす。坂井さんは「何としてもクライマックスシリーズを勝ち抜き、日本一セールをさせてほしい」と祈るように話した。