2019年の富裕層など全ての属性を含んだ、訪日観光消費単価の全体平均は、約15.8万円を記録しましたが、政府の目標では、この数値を2030年に1人あたり25万円まで引き上げ、6,000万人を誘致し、25万円×6,000万人=15兆円の「観光消費額」達成を目指しています。
「観光消費額」は、消費単価×訪問数という極めてシンプルな図式ですが、「富裕旅行者」の「着地消費」単価を100万円とした場合、100万人訪問数が増えるごとに「観光消費額」が1兆円増加することになります。
仮に、2030年に世界の「富裕旅行者」半数が日本を訪れたとして、「観光消費額」は約2兆3,500億円、希望的観測として「着地消費」100万円の「富裕層旅行者」が300万人訪日した場合でも「観光消費額」は3兆円になり、残り12兆円を富裕層以外の訪日外国人旅行者から確保する必要があります。
それでは、2030年の目標達成に向けて、誘客するターゲットは何処の国の誰なのでしょうか。これには、国・旅行の目的、年齢、性別、収入など多様な観点があり、ターゲット設定する際に様々な要素が複雑に絡み合うため、一概にこの「属性」と断定するのは難しいと思われます。
しかし、ほぼ間違いないと考えられる「属性」があります。それは、次の成長市場「アジア圏」の中間層です。一般に国民1人あたりのGDPが5,000ドルを超えると海外への渡航者が増加するといわれていますが、中国、タイはその基準を既に超えています。
また、中国、タイからの旅行者は、初訪日の割合が高いことも特徴で、今後これらの国々は極めて大きな観光旅行需要のポテンシャルを秘めているといえます。
1人あたりのGDP5,000ドルが海外旅行を検討する目安とすると、タイは既に約7,000ドルを突破し、2019年には訪日数が100万人を超えて、アメリカに次いで第6位を記録しています。
そして、インドネシアは1人あたりGDP4,000ドルを突破し、ベトナム・フィリピンの国々も、1人あたりGDP3,500ドルを超え、近い将来には5,000ドルに手が届くところまで来ていますので、「アジア圏」からの海外旅行需要は今後さらに伸びていくと想定されます。