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加害者の権利
人道的見地からいえば、確かに、加害者の基本的人権も尊重されるべきであろう。もちろん、被害者の権利のほうが優先することは言うまでもない。被害者の人権を最大限守ったうえで、さらに、加害者の人権をも守れるというなら、そうするのは間違いではないだろう。では、果たしてそんなことは可能なのだろうか。
漫画「北斗の拳」や映画「マッドマックス」のような暴力が支配する世界を思い浮かべてほしい。秩序のない世界で権利を主張することには意味がない。みんながルールを守るからこそ基本的人権が守られるのである。つまり、ガマンという負担をもって得られた秩序から基本的人権を受益しているのである。では、社会は、ルールを守らない人=負担を背負わない人に人権を与える余裕があるのだろうか。負担の減少は、受益の減少につながる。無い袖は振れない。ルール違反は誰かの基本的人権を侵害する。つまり、殺人者に人権を与えるならば、その代わりに、被害者の生きる権利が奪われる。被害者と加害者の双方の人権を守ることは不可能だろう。
軽犯罪ならば被害者のリスクも少ない。金で済むような問題であるなら、尻ぬぐいをさせるという前提で更正の道を与えることも不可能ではない。しかし、殺人のような取り返しのつかない重犯罪ではそうはいかない。死んだ人間を生き返らせることはできないからだ。奪われた被害者の人権は返ってこないのである。それでも、加害者の権利は守られるべきものだろうか。