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皆さんは「活版印刷」や「写真植字」というものをご存じだろうか。デジタル化が急速に進んだ現代においては、オフセット印刷と呼ばれるシャープな仕上がりの印刷物が大半を占めている。

しかし、「活版印刷」や「写真植字」などの、古きよき方法で刷られた印刷物には、紙のくぼみやインクのにじみなどにノスタルジックさがあふれており、なんとも言えない味があるのだ。

2022年7月5日に投稿された、書体讃歌@typeface_anthemさんの「連日ゴチック関連のツイートばかりですみません……この漢字ってなんですか？？？調べ方が悪いのか、ネット検索では正体を掴めません。有識者の方、ご教示いただけたら幸いです（収録活字を整理中なのですが、現代ではまず使わないような異体字や古字が多すぎて収拾がつかなくなっています）」というツイートには、ある一枚の画像が添えられている。この投稿には、1000件を超える「いいね」が押され、ツイッター上で反響を呼んだ。

今回は、こちらのツイートに関する詳細と、リプライ欄に寄せられたさまざまな意見をご紹介したい。

連日ゴチック関連のツイートばかりですみません……
この漢字ってなんですか？？？調べ方が悪いのか、ネット検索では正体を掴めません。有識者の方、ご教示いただけたら幸いです🙇🙇🙇
（収録活字を整理中なのですが、現代ではまず使わないような異体字や古字が多すぎて収拾がつかなくなっています💦） pic.twitter.com/tcHHQ8E3hh

— 書体讃歌 (@typeface_anthem) July 5, 2022

あっという間に解決！？

ツイートの画像には、ゴチック体で書かれたいくつかの漢字が並んでいる。その中央にある漢字がなんなのか知りたいと、投稿者の書体讃歌さんはツイッターで情報の提供を呼び掛けたのだ。

一体、この文字はなんなのか？画像は（「書体讃歌（@typeface_anthem）さん」提供）

すると、このツイートを見たツイッターユーザーたちから、「彗星の「彗」がコケていませんか…？？？」「彗が回転しちゃっている…」「活字を組む時の失敗ですね、多分」と、あっという間に答えが寄せられ、解決にいたってしまったのである。パッと見ただけでは、何か別の漢字にも見えるが、まさか「彗」だったとは。どうしてこのような印刷のミスが起こったのだろうか。

活版印刷と、写真植字の違いとは？

（Image:adike / Shutterstock.com）

「誤植」という言葉すら、いまは使わなくなった…

実は、冒頭にもご紹介した「活版印刷」や「写真植字」の印刷物では、こうした印刷ミスが起こる場合が時々あるのだ。これらの印刷では、一文字ずつ文字を並べて、スタンプのように印刷する文字を組んでいくので、うっかり間違えてセットしてしまったのだろう。こういった誤植は古い本などを読んでいると、ごく稀に見付けることができる。

では、「活版印刷」と「写真植字」の違いついて、簡単に説明しよう。まず、「活版印刷」とは、鉛でできた活字にインクを塗り、紙に転写する印刷方式だ。一方で「写真植字」とは、写真技術を使った植字方法である。

「活版印刷」の方が歴史は古いのだが、活版印刷は文字の数だけ活字を作らなければならなかったりと、印刷を行う上でさまざまな不便があった。これを解消するために、物理的な活字の代わりに、光によって文字の大きさや書体を変えられる「写真植字」が登場したのである。「活版印刷」よりも「写真写植」のほうが機能の充実度は増したものの、文字盤から一文字ずつ手動で文字を組むという工程はなくならなかったため、こうした誤植が起きてしまったのだ。

古きよき時代を感じる誤植

デジタル化が進んだ今の時代の印刷では、考えられない誤植だが、こうしてあらためて見ると、人力であるが故の味のようなものにさえ思えてしまう。当時、この文字を組んだ人は上司に怒られた可能性もあるが、画像からはなんとも言えないアナログのよさがにじみ出ており、まるでちょっとした当たりを引いたような気持ちになるのが不思議である。

書籍の電子化が進む令和の今では、なかなか古い本を手に取ることも少なくなってきた。筆者は本好きなので、地元京都では古本屋めぐりをすることも多々ある。しかし、やはり古本屋そのものの数も、最近では減ってきているのが現状だ。

投稿者の書体讃歌さんは、日頃から写真植字の文字盤や紙資料をアーカイブしているそうなので、こうした誤植に出会うことが今後もあるかもしれない。なんだかほっこりとした気持ちになる、古きよき時代の印刷の誤植。見つけた時はまた、ぜひツイッターで報告してほしい所である。

※サムネイル画像（Image:「書体讃歌（@typeface_anthem）さん」提供）