>>758
壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)
溶連菌急性感染症の最も重症な病型であり、後述する毒素性ショック症候群とともに「劇症型溶連菌感染症」と呼ばれる。きわめて急速に進行する軟部組織の感染症であり、典型的な例では指先や足先など四肢の末端部から、1時間に数cmもの速さで壊死が進行する。高熱、全身状態の不良、局所の腫脹・疼痛が主症状。死亡率は30%以上と高く、一般に人食いバクテリア感染症と呼ばれることのある疾患の1つである。外傷や熱傷、水痘などで皮膚が障害されている場合に、発症の危険性が高いともいわれる。
治療には、壊死組織の外科的除去(デブリードマン)が必要不可欠である。敗血症の状態にあり、DICや多臓器不全を来たす場合が多いため、これらの合併症に対する対症療法も必要である。抗菌薬は、ペニシリンの大量静注に加えてクリンダマイシンの静注を行う。
その他
溶連菌はその他、化膿性リンパ節炎、蜂窩織炎、化膿性関節炎、骨髄炎、結膜炎などさまざまな感染症を来たしうる。ペニシリン系に対する感受性は常に良好であり、どの部位の感染症に対してもペニシリン系抗菌薬の投与が第一選択となる。感染症の部位により、切開排膿や掻爬などの治療をあわせて行う必要がある。