>>992
性交等を目的にした暴行・脅迫が行われていれば、実際に性交等に至らなかった場合でも、強制性交等未遂罪が成立します(刑法180条)。たとえば、性交のために体を押さえつけたものの、被害者の抵抗により性行為にまで至らなかったケースです。
直接性行為に結びついていない暴行・脅迫であっても、強制性交等未遂罪が成立する可能性もあります。車内で性行為をしようとして自動車に引きずり込んだケースでは、引きずり込んだ時点で強制性交等未遂罪が成立します。
強制性交等罪(既遂)と強制性交等未遂罪の分かれ目は、「性交等」が始まったか否かです。すなわち、性器・肛門・口腔の中に性器の一部が挿入された時点で、既遂となります。
強制性交等未遂罪の法定刑は、既遂のときと同様です。ただし、裁判官の判断によって刑が減軽されるケースもあります(刑法43条本文)。加害者の意思で性交等に至る前にやめたときには、必ず刑が減軽あるいは免除されます(刑法43条ただし書)。
準強制性交等罪とは、被害者を「心神喪失」や「抗拒不能」にさせて、あるいはその状態にあることを利用して、性交等をする犯罪です(刑法178条2項)。暴行や脅迫がなくても、「心神喪失」や「抗拒不能」の状態にある被害者に性交等をすると、準強制性交等罪が成立します。
「心神喪失」とは、意識の喪失や精神障害により、被害者が性行為について正常な判断をできなくなっている状態です。
例としては、
•眠っている
•泥酔している
•知的障害を抱えている
などの状態が挙げられます。責任能力を判断するための「心神喪失」(刑法39条1項)とは異なる概念です。