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国際社会に背を向け始めた中国
外交的に見ても大いに疑問がある。今回の中国の措置は1984年に出された中英共同宣言に対する重大な違反である可能性が高いからだ。現行の民主的諸制度維持と「香港の高度な自治」を確認した宣言だ。一部には「中国の内政に外国が干渉するには限度がある」と主張する向きもある。だが、中英共同宣言は国際法上拘束力を有する国際約束として既に国連に登録済みだ。その歴史的合意を今や中国は「無効」と言い張るのだから、問題は極めて深刻なのだ。
一方、中国には中国の論理がある。そもそも、アヘン戦争以来の歴史的屈辱を晴らして何が悪いのか。中国の国力は米国にほぼ追いついた。だが、今真正面から戦えば、返り血を浴びるばかりか、下手をするとこちらが危ない。他方、トランプ政権は国内の新型コロナウイルス感染拡大と暴動騒ぎで忙殺されている。東アジアで大規模軍事攻勢を仕掛ける余裕はないだろう。されば、今こそが香港を骨抜きにする千載一遇のチャンスではないか。
こうした中国の動きは今回が初めてではない。2010年代半ばには南シナ海の人工島建設事件があった。当時も米国は内向き傾向の強いオバマ政権。中国は、米側が強く反発しないことを確かめた上で岩礁埋め立て工事を強行していった。このように、中国は対外政策で決してむちゃな冒険をしない。状況を見極めて、相手が動けない「力の真空」が発生した時にしか動かない。ということは、