◇松山商−熊本工
96年8月21日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で行われた決勝。九回に熊本工が本塁打で同点に追い付き、満員の球場内は緊迫感が漂っていた。
3−3で迎えた延長十回裏、1死満塁から熊本工の打者が右翼へ大飛球を放つ。三塁走者は50メートル5秒8の俊足、星子崇(たかし)さん(38)。タッチアップで楽々生還し、サヨナラ勝ちと思われた。しかし松山商の右翼手、矢野勝嗣(まさつぐ)さん(38)がつかんで本塁へノーバウンド送球し、タッチアウト。松山商は十一回表に勝ち越し、5回目の優勝を果たした。
「バックホームした選手」「アウトになったランナー」。矢野さん、星子さんのその後の人生には「あの試合」の言葉がついて回った。会話の中でも常に引き合いに出され、2人とも息苦しさを感じていた。
2013年、共通の知人を介して熊本市で再会。互いに同じ悩みを抱えていたことを知り、「あの経験があったから今の自分がある」と開き直った。
星子さんは14年、野球への恩返しをと、高校野球ファンが集える居酒屋を熊本市に開いた。店名は自らの代名詞を冠した「たっちあっぷ」。矢野さんと連絡を取り合うようになり「いつか再試合を」と思い描いていた。
96年8月21日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で行われた決勝。九回に熊本工が本塁打で同点に追い付き、満員の球場内は緊迫感が漂っていた。
3−3で迎えた延長十回裏、1死満塁から熊本工の打者が右翼へ大飛球を放つ。三塁走者は50メートル5秒8の俊足、星子崇(たかし)さん(38)。タッチアップで楽々生還し、サヨナラ勝ちと思われた。しかし松山商の右翼手、矢野勝嗣(まさつぐ)さん(38)がつかんで本塁へノーバウンド送球し、タッチアウト。松山商は十一回表に勝ち越し、5回目の優勝を果たした。
「バックホームした選手」「アウトになったランナー」。矢野さん、星子さんのその後の人生には「あの試合」の言葉がついて回った。会話の中でも常に引き合いに出され、2人とも息苦しさを感じていた。
2013年、共通の知人を介して熊本市で再会。互いに同じ悩みを抱えていたことを知り、「あの経験があったから今の自分がある」と開き直った。
星子さんは14年、野球への恩返しをと、高校野球ファンが集える居酒屋を熊本市に開いた。店名は自らの代名詞を冠した「たっちあっぷ」。矢野さんと連絡を取り合うようになり「いつか再試合を」と思い描いていた。