島根県西部唯一の地域がん診療連携拠点病院・浜田医療センター。常勤病理医の確保に苦慮する=浜田市浅井町
島根県西部で唯一、国から「地域がん診療連携拠点病院」に指定されている浜田医療センター(浜田市浅井町)で、検体や組織を調べる常勤の病理医が2024年度から不在となる見通しになった。唯一の常勤医が3月末に退職予定で、後任確保のめどは立っていない。地域拠点病院として継続するには、常勤の病理医が必要。24年度にただちに指定が取り消されるわけではないが、対応を迫られている。
患者が全国のどこにいても質の高いがん医療が受けられるよう国が指定し、支援している「地域がん診療連携拠点病院」は全国で357カ所、山陰両県には6カ所(島根4、鳥取2)あり、浜田医療センターは02年9月に指定された。
指定を受けるには、病理診断に携わる専門的な知識や技能を持つ専従の常勤医を1人以上配置することになっている。
センターによると、現在は05年に島根大医学部から派遣された常勤の病理医が定年を延長して勤務。センターは島根大に後任の派遣を依頼したものの、人員不足などを理由に断られたという。
常勤医に加えて島根大医学部などの医師4人が交代で非常勤として週1回診療しており、常勤医が不在となる24年度は、月7回に増やす予定。外部の検査機関も活用する。手術中の迅速診断は、同大医学部とオンラインで結ぶ遠隔診断を検討する。
厚生労働省によると、一時的に要件が欠けても、特例として一定期間指定を継続できる仕組みがあるものの、常勤の病理医がいない状態が長く続けば、地域拠点病院の指定から外されるおそれがある。診療報酬の加算や国の支援が受けられなくなり、医療サービスの質の確保や経営に影響が出る可能性がある。
センターによると、22年に実施した病理検査は、細胞診3860件▽組織診2462件▽術中迅速診断69件▽病理解剖2件-。
センターの栗栖泰郎病院長は「(地域に)影響が出ないよう最善を尽くす。引き続き、病理医の確保に努める」と話した。