結局続いてしまった。
前回は
>>597
「——しかし、毎度の事ながらとんでもない動きをしますね、あなたは」
「職業病ってやつだ。しかし偽とはいえ固有結界出すよりはマシだろう」
「それもそうですが……、極死が人に当たったらどうするつもりだったんですか」
「ちゃんとウィンナーと卵だけを狙ったさ。俺の極死は外れん」
スーパーで何が起こったのかは想像に難くないだろう。
戦利品を手一杯に持ちながら、翡翠と七夜は並んで歩いていた。
翡翠は手提げを限界まで膨らまし、七夜はレジ袋を二つ使ってようやく入るほどの量の買い物だったが、二人とも千円台に抑えていた。
「そうですか。まあ、卵を取ってくださったことは……感謝します」
急に七夜から顔を背けて、翡翠はお礼を言った。声も先程の言い争いの時よりもかなり弱々しく、しおらしくなっていた。
翡翠が七夜にお礼を言う時は、決まってこうなる。面と向かって言えたためしは一度もない。
それは感謝の言葉を述べることへの気恥ずかしさからというだけでは、決してなかった。
「構わん。毎度の事だろう。次はうまくやるんだな、っと」
そう事も無げに言いながら、突然七夜は自分の袋をまさぐりだす。取り出したのは、小さな袋だった。
翡翠は、それが何なのかを知っていた。
「またあんぱんですか」
「ああ」
七夜は慣れた手つきで袋を破り、あんぱんの一端を袋から出した。
平時は年よりも大人びて見える七夜だが、この時ばかりは邪気を知らない子供のように瞳を輝かせる。
翡翠は彼が普段は決して見せない表情に、しばらく目を奪われていた。かなり凝視していたにもかかわらず、隣りで自分の顔を眺める視線に、七夜は気付いていない様子だった。
こうして見ると、タタリの夜に出会った殺人鬼と同一人物とは、とても思えない。
それどころか、ある種の懐かしさにも似た安らぎを感じていた。
その居心地のよさが、七夜に惹かれる要因の一つでもあるのだが、それがどこから来るものなのか、翡翠には分からない。
遠野志貴と同じ存在だから?
いや、違う。彼は、「志貴様」ではない。翡翠はかぶりを振る。
何がかは分からないけれど、七夜志貴と遠野志貴は違う。表情や仕草などではなく、もっと根本的な何かが——
七夜にもう一度目を向ける。嬉々としてあんぱんの頭にかぶりつこうとしていたところだった。
「歩き食いはマナーが悪いです」
「……これは失礼」
七夜はやれやれといった表情で、開けたばかりのあんぱんを渋々