>>680
「これより採決いたします」
議長がそう宣言した次の瞬間、ひとりの議員がタイミングを見計らっていたかのように、こう声を上げた。
「無記名投票を求めます!」
この動議があっさり通り、採決は賛成者に起立を求める方式から、無記名で投票用紙に賛否を記載する方式に変更され、可決のシナリオは突然崩れだした。本音は反対だが、周囲からの働きかけで賛成せざるを得ないと思っていた議員数名が、「無記名なら」と反対に回ったからだった。結果は賛成12名、反対15名。議長がこう締めくくった。
「よって議案第94号は、反対多数で否決されました」
山口県宇部市議会が“ツタヤ図書館もどき”にノーをつきつけた瞬間だった。いつもなら、議会最終日には笑顔で挨拶を欠かさない久保田后子市長も、さすがにこの日は虚ろな表情で議場をあとにしたという。