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🏀 バスケットボール


No.2753833
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名家、○○家。僕はその家の長男として生まれた。由緒正しい家柄ゆえに、家訓も厳しく人の上に立ち勝つことを義務付けられ、父はこの上なく厳格な人物だった。物心がつくころには英才教育が始められ、その量は大人でも音を上げるほどで、僕に自由はほとんどなかった。そんな過酷な幼少期を僕が耐え抜く支えとなったのは、優しい母と、母が父を説得し作られたわずかな自由時間に始めたバスケットボールだった。僕にとってバスケットボールをしている時間は何より楽しく、才能にも恵まれ限られた時間でもすぐ上達した。
だが僕が小学5年生になったある日、僕の大きな支えであった母が病で急死する。その後、父はそれを忘れようとするかのように厳しさが増し、習い事や勉強の量も増えていく。僕にとって不幸だったのは、それを全てこなせてしまうほどの器量を持っていたことだった。こなせばこなすほど量は増し、教育は加速していった。

中学校を卒業後、僕は、伝説的強豪のバスケットボール部に入部する。強豪だけあり、練習はハードなものだったが苦ではなかった。かかげる唯一絶対の理念は勝利。だがそれもスポーツであれば当然と思っていた。それ以上に僕にとって、思う存分バスケットボールができ、その仲間と過ごす日々は楽しかった。

だが、2年生時。様子が変わり始める。監督が急遽交代し、その後チームは勝利至上主義の色を強めていく。さらに同時期、チームメイトが次々と才能を開花させ、主将である僕にも統制が出来なくなってくる。勝利は義務となり、重荷となり、仲間の成長は手に負えなくなることへの恐怖と置いていかれることへの焦りとなった。気が付くと、バスケットボールを楽しいとは思わなくなっていた。


[ 匿名さん ]
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