《12》
では二つ目の②だ。
つまり欧米の経済制裁やハル・ノートで苦境に追い詰められた日本が、一か八かの戦争に打って出ざるを得なくさせられた…となるか。
問題は『経済制裁』と『ハル・ノート』だというのだろう。
この主張が意味するところを、まず『経済制裁』から考えてみよう。
この主張の前提には
①米国などの経済制裁は正当性のない不当なものだ。
②この経済制裁は“挑発”(provoke)であり、それゆえに経済制裁を受けたことを理由とした我が国の侵略=先制攻撃は正当である。
…この二つがあるのだろう。
さらにそこから
③よって我が国による開戦は自存自衛の戦争であり正当である。
戦争責任は経済制裁で我が国に挑発を行った米国などにある。
…という主張になると思われる。
こうした主張をする人達は前後関係に無頓着だ。
単純化すると彼らはこう考えている。
▷欧米の経済制裁(石油・鉄・工作機械等の禁輸)やハル・ノート
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▶追い詰められた日本
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▶苦悩の末、やむなく戦争を選択
…しかしこれは逆さまだ。
《10》の年表を参照しよう。
▶満州事変と、それを咎めず追認する日本政府
▷米国経済制裁に反対
▶盧溝橋事件
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▷米国 初期の経済制裁
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▶第二次上海事変
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▷米国 日本軍の都市爆撃に対し対日経済制裁を強化
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▷米国 対日交渉 (既にフランス降伏)ドイツの空爆にさらされ苦境にある英国を先制攻撃しないよう。
その為に経済制裁を解除し、満州国も承認する。
南方資源開発も支援し、日中戦争も仲裁すると。
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▶日本軍南部仏印進駐(英領シンガポール攻撃の拠点)
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▷米国 在米対日資産凍結・対日石油輸出全面禁止
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▶日本 空母機動部隊単冠湾出撃
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▷米国ハル・ノート提示
…この流れをどう見るか、だ。
(続く)