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野球総合


No.4000961
#165
 内野の守備練習では、グラウンドの土をならすトンボを並べ、その状態でノックをする。打球がトンボに当たれば、跳ねてどこに飛んでいくかわからない。試合中に起こり得るイレギュラーバウンド対策で、ボーッとしていたら捕球どころか体に直撃することもある。集中を切らさずに頭を働かせていれば、体が俊敏に反応できるようになる。こんな発想で練習を組み立てる指導者は、おそらく石山の教え子以外は皆無であろう。

 石山の外部コーチ就任1年目の夏の甲子園出場を目指す埼玉大会が間近に迫っていた。まだ指導を始めて3カ月余りだが、すでにグラウンドには雑草一つなく整地され、選手たちはピアスを外し、町行く人にもあいさつをする変わりようだが、この短期間の練習だけで甲子園の土が踏めるほど高校野球は甘くはない。それでも、「ここまでアイツらは変わったんだ、きっと何かやってくれるはずだ」と、まわりの期待は盛り上がっていた。

 ところが、である。

 大会の初戦の相手は浦和学院(以下、浦学)に決まった。出場約160校の中から、よりによって県下一の強豪校を抽選で引き当ててきたのである。何度も甲子園出場の経験を有し、優勝候補の筆頭だ。しかも、地元テレビ埼玉でテレビ中継されるという。果たして喜んでいいのかどうか。ただはっきりしているのは相手に不足はなく、初戦ながらこれ以上ない舞台が整えられたことは確かである。

 石山は浦学のビデオを取り寄せ、戦力を徹底分析し、ピッチャーには攻め方、バッターには狙い球を伝授した。斉藤監督への作戦の指示は、

「九回までテレビに映ればいい。コールドゲームになりそうだったらタイムをかけて、1分1秒でも小鹿野の人たちにテレビ中継を楽しませろ。以上」

 小鹿野高校野球部再生に向けた「プレーボール」のコールがかかった。(次週、後編に続く。文中敬称略)

※週刊朝日 2018年3月23日号


[ 匿名さん ]
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