■創業はイギリス、1926年までさかのぼる
「何を今さら」と思われるのか、それとも若いファンをつかむのか。
今まで並行輸入品が細々と販売されていただけの「チューダー(TUDOR)」が、10月下旬に日本再デビューを果たします。
そんな話を聞いて「チューダー?いやいや、チュードルだろ」と発音に違和感を持ってしまうのは、私、アントニオ犬助などオヤジの時計好きだけなのでしょうか。
チューダーとはロレックスの創業者が、イギリスでの販売拡大を狙い1926年に設立した時計ブランド。
セールスポイントは高い防水性と自動巻き、ってロレックスと一緒じゃないか!!と、当時の人々が突っ込んだのかどうなのか。
加えて、ケースなどの主要パーツもロレックスから提供を受けていたもの。
古いチューダーのリューズにおなじみの王冠マークが入ったモデルが多いばかりか、時計全体のデザインもロレックスと似ていたのです。
■チュードルの位置づけは安価なロレックス
ならば、ロレックスと昔のチューダーとの決定的な違いは何か? というと、比較的な安価な価格設定と、時計の心臓部であるムーブメント。
ロレックスは自社製がメインなのに対して、チューダーは社外製がメイン。
チューダーは汎用ムーブを搭載していたのです。
その影響か、長らくチューダーの位置づけは「安価なロレックス」というもの。
ロレックスを購入できない人にとっての一本、ポルシェ・911を購入できない人のボクスター的な存在……まあ、どちらも充分に高価ですけれどね。
■デザインを一新、独自路線に舵を切る
そんなチューダーが大きく変わったのが、2009年。
新しく就任したCEO、フィリップ・パヴェレリ氏が大幅なデザインの変更を指示。
従来のロレックス・ライクなものからチューダー独自路線を目指したのです。
例えば、ヴィンテージテイストをまとった「ヘリテージコレクション」。
ダイバーズウォッチの「ブラックベイ」は1970年代のロレックス・サブマリーナにインスパイアされたデザインを持っているものの、41mmのやや小ぶりなケースサイズ、レッドやネイビーといった特徴的なカラーリングのベゼルは、チューダーならではのものです。
また、チューダーが1970年代に製造していた「モンテカルロ」を復刻したのが「ヘリテージ・クロノグラフ」。
質実剛健といった感のあるケースと遊び心あふれるスモールダイヤルのデザインが、チューダーならではのテイストを発揮。
オリジナルは100万円越えが当然といったプレミアムが付いてしまっているのですが、同等のデザインが手ごろな価格で手に入る。
時計ファンが熱くなってしまったのも当然といえるでしょう。
■ひょっとして、台風の目になるのかも
以上の変化によりロレックスとは違う、独特の立ち位置を確立したチューダー。
満を持して日本に再上陸となったのですが、面白いのがチューダーの発売元が日本ロレックスとなっているところ。
ということは、多くのショップがチューダーとロレックスを同じ売り場で展開するはず。
ロレックスに憧れを抱いている若年層の取り込みと、常に品薄となっているロレックスのスポーツモデルを補完する、これら2つの役割をチューダーにになわせようとしているのでしょう。
ちなみにチューダーのダイバーズウォッチ「ブラックベイ」シリーズは、もっとも高価なモデルでも40万円以内に抑えられるとか。
安価な汎用ムーブメントを用いているとはいえ、これでは価格帯が重複するブライトリングやタグホイヤーあたりが、ライバルとなりそうです。
そんなチューダーは汎用ムーブメントを使っていることについて、悪くいわれることも多いのですが、良い点だけを考えるならば、オーバーホールがしやすいということですし、たくさん出回っているだけにパーツがなくなる心配もない。
信頼性が非常に高いということですから、これもヒットする要素になりそう。
ということで「チュードル」改め「チューダー」は、これからしばらく機械式時計の台風の目になるのではないか? と、予想しておきましょう。
【日時】2018年10月29日(月)
【提供】YAZIUP