中国大陸から飛来する大気中の汚染物質PM2.5の濃度が、2016年にかけて大幅に減少し、改善に向かっている。
九州大学の分析で、中国での抑制対策が、濃度低下に結びついている事実が明らかになった。
米航空宇宙局(NASA)のチームは、「中国では二酸化硫黄の排出が抑制されている一方、インドでは急激に増加している」と、新たな問題を提起した。
日本で中国の大気汚染問題が注目されるようになったのは2013年。
なかでも、大気中に浮遊している2.5μm以下の微粒子は、髪の毛の太さの30分の1程度と非常に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器や循環器への影響があると懸念されている。
PM2.5は、ボイラーや焼却炉などの煤煙や粉じん、自動車の排ガスなどが原因のほか、大気中の硫黄酸化物や窒素酸化物、揮発性有機化合物などの成分が化学反応を起こして発生する。
日本では1㎥あたりの環境基準を1日平均35μgと設定し、国内1000カ所以上でモニタリングしている。
環境省によると、2014年当時のPM2.5の環境基準達成率は、約38%にとどまっていたが、2015年には約75%、昨年は約88%(速報値)に改善。
地域別に見ると2014年→2016年にかけて▽関東35%→97%、▽東海26%→99%、▽近畿61%→95%では9割近くが達成しており、大陸からの汚染物質の影響を受けやすい▽中国14%→76%、▽四国31%→67%、▽九州7%→62%でも、軒並み改善がみられている。
九州大学応用力学教室の鵜野伊津志(うの・いつし)主幹教授のグループは、福岡の3つの測定局や北京や上海の計測データ、地球観測衛星のセンサー画像を解析した結果、中国では二酸化硫黄(SO2)と二酸化窒素(NO2)の排出量が、2014年から2016年にかけて年率11〜14%ずつ減少していることが判明した。
中国での排出量が20%減少すれば、福岡のPM2.5の年平均濃度は約12%減る可能性があるという。
一方、NASAと米メリー大学の研究グループは、科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』で衝撃的な研究論文を発表した。
過去10年間で、中国の二酸化硫黄排出量は75%減少した反面、インドでは1.5倍に増えたというものだ。
中国とインドは、石炭を燃料とした火力発電所や工場が多く、汚染物質排出の温床となっている。
NASAによると、中国では石炭使用量や発電量が増加しているにもかかわらず、排出を抑制する各種の取り組みが功を奏し、二酸化硫黄の排出量が激減。
対照的にインドでは、今後、人口密集地域に火力発電所や工場などが増えれば、汚染物質の排出はさらに深刻化するおそれがあるという。
【日時】2017年11月14日(火) 15:16
【提供】ハザードラボ