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また、60年安保改定時の左翼運動の鎮圧も、CIA及び児玉誉志夫による援助であったことが知られている。
ワイナーによれば、このCIAの資金援助は1970年代初頭まで続いたとされるから、岸だけではなく、その後の池田勇人、佐藤栄作までの少なくとも3人の総理大臣は、CIAからの資金援助を受けていたことになる。
なお、CIAのスパイだった有名人には、岸信介や児玉誉志夫のほかに、正力松太郎・読売新聞社主、緒方竹虎・自由党総裁、賀屋興宣・池田内閣時の法務大臣などがいる。
こうして戦後の日本は、1970年代初頭まで、CIAを通じて実質上アメリカにコントロールされており、事実上内政干渉的行為が、スパイという内通者によって行われ、政治や社会が歪められていったのである。
ところで、この流れをおそらく断ち切った政治家は、田中角栄であったのかも知れない。
彼が行った政治手法は、その後今日至るまで「金権政治」「土建屋利権政治」と批判されることとなるが、良かれ悪しかれ、CIAの影響からなんとか自立しようとした可能性がある。
但し、その田中はロッキード事件で政治生命を消されることとなった。
(怪しくも、田中の流れをくんでいる政治家(竹下登、金丸信、そして、小沢一郎に至るまで)は、皆政治資金規制等によって逮捕されているか、検察権力に目を付けられているという実態がある。)
1960年代から70年代当時、ソ連や中国など社会主義勢力がまだ強い影響力を行使していた時期だったため、もし岸のようなCIAのスパイの暗躍とアメリカからの秘密工作資金がなければ、日本の政治がどうなっていたかは分からない。
続々と誕生していた社共を中心とした革新自治体の状況から言って、もっと早い時期に政権交代が起きていた可能性もあるし、また、その結果、一層の混乱と停滞があった可能性もある。
逆に、案外政治への信頼や期待が高められた可能性もある。
無論、歴史に「もしも」は通用しないが、違った戦後史になっていた可能性は十分にある。