>>633
オーストラリアが最終的に攻撃型原潜を選んだ理由は、フランスとの契約で当初得る予定だった12隻の通常動力型潜水艦を保有したとしても、オーストラリア海軍がインド太平洋地域に常時2、3隻以上を派遣することが難しかったからだ。というのも、オーストラリア海軍の基地は、潜水艦を運用する海域とはかなりの距離があるためだ。通常動力型潜水艦は移動のために大量の燃料を使うため、目的地に着いても任務に就く時間が限られてしまう。これに対し、原潜となればオーストラリアから遠く離れた場所でも長期間任務にあたることができる
さらに、オーストラリア海軍は今、この地域でアメリカ海軍を支える遠征海軍になろうとしている。この役割を果たすのに、原潜は強力な武器やセンサー、無人システムを擁するだけに、より適している。これらはこれまでのところ、オーストラリア本土から提供できないアセット(軍事資産)だ
これは海自の場合には当てはまらない。海自は日本近海を守るための防御的な組織であり、地域を越えて力を行使する遠征海軍ではない。海自は無人システムやミサイルなどを日本本土から利用発射でき、高額な原潜にそれらを搭載する必要がない。忘れてはいけないことは、潜水艦は海洋安全保障の一部を占めているに過ぎないことだ。無人システムから水上艦、宇宙や地上配備のシステムまでさまざまなプラットフォームがすべて海上安全保障での役割を負っている。原潜を開発し、建造するには多額の費用がかかるが、日本の陸海空の自衛隊がすでに持っている能力をそれほど増強する訳ではない。むしろ、陸、空、海上、海中の分野で実際に革新的で大きな影響を及ぼすプラットフォームや技術に投資すべきだろう
日本が原潜を建造する場合、それを正当化する理由は『主要な海軍大国としてのステータスシンボル(地位の象徴)を得る』ということでしかない。現実的な観点から見ると、原潜は海自の活動に必須ではない