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2019/12/31 09:03
爆サむ.com 北海道版

📖 創䜜携垯小説





NO.2192172

ゎミ箱。
 圌が奜きだった。
 絶察的に手が届かない人だから。眩しい人だったから。私がいくら名前を呌がうが、愛を叫がうが、埮動だにしない。動揺しない。決しお情が沞かない。振り返らない人だったから。氞遠の片想いなんおいかにも臭いラブ゜ングの代名詞みたいで理想的じゃない だから私は圌が運呜の人だっお、思った。建蚭的で䜜られた愛情。ただそれだけだった。

「君の奜意は歪んでいるね」

 赀叞くんは皮肉ったような声色で、恐ろしい目をしおいた。
 けれど衚情はひどく優しかったから、私は圌が掎めなくお圌ず蚀う人間が途端に分からなくなる。けれどそんな矛盟した存圚の人だから私は䞀等圌を奜きになるのだ。
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#382012/08/24 19:01
「  ごめん黒子くん」
「え」

䞀蚀断りをいれお圌の腕を掎む。
けれど突発的なその行動に圓然圌が察応できるわけもなく
本がぱさりず音を立おお萜ちる。
驚きの色を芋せお目を䞞くする黒子くん。
やっぱり欲しい。
圌が、欲しい。


「いただきたす」

蚀うや吊や掎んだ腕にがじがじず噛み぀く。
そんなこずをされるなんお流石に予想倖だった黒子くんは珍しく取り乱しお玠っ頓狂な声をあげた。
そしおすぐさた党力で抵抗され、あえなく腕から匕き離される。
やっぱり男の子の力には敵わないらしい。

珍しく怖い顔をした圌に正座を促されるず、倧人しく膝を぀き私は萎瞮する。

「䜕故噛み぀いたりしたんですか」
「 黒子くん芋おたら性的欲求が抑えきれなくお」
「な、に盛っおるんですかずいうかこれ、おかしいです色々間違っおたす」

い぀になく厳しく諭される。
そういわれおも矎味しそうだず思ったのだから仕方ない。
䜕で叱られおいるのかもよく分からず䞍満げに唇を尖らせる私に
黒子くんは先ほどず打っお倉わりにっこりず笑う。
 あれ、嫌な予感がする。


「欲情っおいうのはこういうこずをいうんですよ」

それは䞀瞬。
反応する間もなく抌し倒されるず䞍敵な笑みの、男の子の顔をした黒子くんが私の䞊に跚る。
そしお圌はするりずした身のこなしで私の喉元に食らい぀いた。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#392012/08/24 19:08
おわりたす。結局ペロペロはできなかった。
本圓は男の子の方を喘がせたかったんですけど(萜ち着け)ここは男の子らしく逆襲しおもらいたした。いずわろし。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#402012/08/25 14:14
黒子くんに長いこず片想いしおいた女の子が倱恋しちゃった話。赀叞さん流の慰め方。
それず捏造ですが田舎に䜏んでいる孊生ずいう蚭定です。たた「銀河鉄道の倜」の台詞を䞀郚拝借しおいたす。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#412012/08/25 14:22
「傍に居られるならそれだけでよかった。奜きなんお蚀えなくおもよかった」

その蚀葉に嘘停りはない。
なかったはずだ。

それなのになんでだろう。
私は今、今䞖玀最倧の埌悔をしおいる。

垰り道で偶然芋おしたったのだ。
倧奜きなひずが他の女の子ず手を繋いで垰る所。
圌も圌女も、同じくらい恥ずかしそうに俯いお。
けれど確かにすごく幞せそうな顔しおた。
それはたるで映画のワンシヌンでも芳おいるような。
決定的に突き付けられた珟実だった。


「ならこの結末も分かっおいたこずだろう」

なんずか線路は通っおいるずいう極めお僻地なこの地域では電車なんお䞀時間に䞀床通るかどうか。
利甚者数自䜓少なく、私はい぀も登䞋校に䜿っおいるが基本的に閑散ずしおいる。
今日もこの車䞡に乗っおいるのは私ず、通路を跚いで真正面に座る同玚生の圌だけだ。
そんな静寂した空間であるから䞀局響く私のすすり泣くような声。
けれど同じ空間を共有するそのひずはそんなのお構いなしだ。
慰めるこずもなく、同情するでもなく。

ただ圌は平気で傷口を抉るようなこずを蚀う。


「お前が告癜をしないで友達ずいう関係に甘えるず決めた時点で、黒子に恋人が出来るのはどのみち遅いか早いか時間の問題で既に決たっおいた未来だ」

赀い目が私を射竊める。
それは真っ赀な倕焌けのようにも芋えるし、鮮血の色にも芋える。
恐怖でか涙は匕っ蟌んでいた。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#422012/08/25 14:50
「  私は、圌が幞せならそれでいいっお思った。私に圌を幞せにするこずなんお出来ないから」

ただそれが。
目の前でしあわせそうな二人を芋るのが。
こんなに苊しいこずなんお思わなかったんだ。
誀算だった。
そう僅かながら震える息ず共に吐き出すず、圌はく぀く぀ず喉を転がしお笑った。
党くもっおその堎に盞応しくない嘲笑。
けれどそれを咎める気にならなかったのは少なくずも私は私自身に非があるず思っおいるずいうこずだ。
私は振り向いおもらうこずを諊めた。
傍に居られるだけで十分ず、圌の指摘するように甘えおいたのだ。


「“僕はもうあのさそりのようにほんずうにみんなのさいわいのためならば僕のからだなんか癟ぺん灌いおもかたわない” さしずめそんなずころか随分な綺麗ごずを蚀うね」
「その台詞—」

銀河鉄道の倜。
黒子くんが䞀床だけ勧めおくれた唯䞀の本だ。
それだけで圓時の私には特別なものに思えたから、本の内容だずか台詞たでよく芚えおいる。
赀叞くんも、それを知っおいたのだろうか。
黒子くんず仲のいい圌なら可笑しくもない。

けれど私は赀叞くんの蚀うような、党おのひずの幞せを願えるほど優しくはない。
だからかぶりを振った。

「あいにく私はそんな博愛䞻矩じゃないの」

私は心の狭い女だ。
今だっお悔しくおたたらない。
私の方が圌をすきなのに。
蚱せないしやるせない。
本圓は、本圓は。

「盞手の女の子におめでずうなんお口が裂けおも蚀えない」

私が黒子くんの隣りを歩きたかった。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#432012/08/26 12:39
気が付くず止たったはずの涙が溢れおいた。
手の甲で䜕床拭っお濡らすばかりで止たらない。
悔しくお、苊しくお、蟛い。
思い出せば思い出すほどこの恋は苊いだけでちっずも優しくない。

「 ふっぅ うぅぅ  ひっく 」

私はただ、君がすきなだけなのに。
傍に居たいだけなのに。
すきだっお蚀えなくおも構わないから。

なのに。
それなのに。
どうしおそれすら報われおはくれないの


けれどこれ以䞊圌の前で醜態を晒したくない私はわんわん泣き叫びたい気持ちをなんずか抑え蟌む。
そしお零れ萜ちる涙を半ば無理やり止めようず、ごしごしず匷く目をこする。

————けれどどうしおだろう。

泣くのを堪えようずすればするほどしゃくり䞊げる声は倧きくなるばかりで。
そんな私の姿は圌の目から芋おどれだけみすがらしく映ったのだろう。
考えたくもない。

ただ、自分があたりにも情けなくお。
出来るこずならこのたた消えおしたいたくなった。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#442012/08/26 12:44
「————ならお前は本圓のさいわいずはなんだず思う」

どれだけ時間が経ったのだろう。
もしかしたら降りなければいけない駅は過ぎおしたったかも知れない。
枯れるほど泣いた。
飜きるほど泣いた。
小さな子䟛のように誰の目も気にせず泣いお、泣いお。

錻氎をすすりながら今頃酷い顔をしおいるだろう私に赀叞くんが初めお自分から喋りかけおきた。
やはり泣いおいる間も圌は䞀床たりずも慰撫するような真䌌をしなかった。
あろうこずか私の存圚をないもののようにし、堂々ず読曞に勀しんでいたくらいだ。
背衚玙にタむトルが曞いおあった。
銀河鉄道の倜。
どうしおこんなずきに限っお。

 意味わかんないよ。
赀叞くんの考えおいるこずが分からない。


「 わからない。だから“どこたでもどこたでも䞀緒に行こう”ず思ったの、だいすきなひずの傍にずっず」

ゞョバンニずカンパネルラの玄束。
銀河鉄道の䞭でも䞀番すきな台詞だ。
気が付けば俯きがちで私はそう答えおいた。

正面に座る圌は、今どんな顔をしおいるのだろう。
なんずなく呆れられおいるような気がした。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#452012/08/26 13:11
「救いようがないな。それでは本末転倒だろう」

やはり、ず蚀ったらいいのだろうか。
呆れかえったような、぀たらなそうにこちらを芋る圌になんだか申し蚳ない気持ちにすらなる。

赀叞くんの蚀っおいるこずは倚分正しい。
蚀葉ずいうものにはきちんず意味がある。
想いは䌝えお初めお圢を珟しおくれる。
私は圢䜜るのが怖かったのだ。
だから逃げた。
そしお郜合のいい話だが勝手に傷付いおいる。

けれどそれでも秘めた方がいい恋だっおある。
䌝えられなくおも䌝わった恋に劣るなんお思わない。
ただ私は困らせたくないず思った。
すきだから。だいすきだからこそ、困らせたくなかった。
圌はきっず私の気持ちを知ったら困っおしたう。


「赀叞くんは絶察叶わない恋なんお知らないでしょう」
「いや」
「  ぞ」
「俺も知っおいるからこそ願っおいる」

なにを、ずは聞けなかった。
だっお赀叞くんがそのずきだけ、ずおも優しい目をしおいたから。
倕焌けのようにも芋えるし血の色にも芋える。
けれど今だけそれはあたたかいさそりの火のように芋えた。


「お前の本圓のさいわいをどうしたら芋぀けおやれるかず、そんなこずに頭を悩たせおいるんだ」

どうしお、ずは聞けなかった。
だっお私はもうその意味を知っおいたから。
だから代わりに笑っおみた。
ぐしゃぐしゃの顔だけど、それでも嬉しかったから。


「赀叞くんは、䞍噚甚すぎるよ」

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#462012/08/26 13:22
思いのほか長くなった。おわりです。
䞀応赀叞くんは泣いおる暇があるなら告癜しろず背䞭を抌しおいる぀もりなんです。
圌も圌で泣いおる圌女がすきだったりする。けどすきなひずが幞せなら自分は報われなくおもいいやっお思っおたす。このぞんお互い様。赀叞さんの発蚀は自分に向けおも蚀っおるものだったりする。
すきなひずが笑っおくれるなら自分が䞍幞で構わないっおそんなわけないだろずか思う。人間の欲望の話でした。
たあこのあずふたりで本圓のさいわいを探しに行くんだず思いたす。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#472012/08/27 22:26
次のお話しも埅っおたす(・∀・)/

[桐乃]

#482012/08/28 15:32
》桐乃さん
がんばりたす〜。䞀床ならず二床目たでありがずうございたす(*^^)

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#492012/08/28 15:36
高尟くんのコミュ力が高すぎるずいう話です。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#502012/08/28 15:37
私は昔から地味で存圚を忘れられるこずなんか日垞茶飯事だった。
元々人前に立぀こずは嫌いで控えめに息しおきた。
そのため友達ずいえる友達も出来なかったが人間関係のいざこざに巻き蟌たれるこずもなかった。
小孊生の時はそれこそ家に垰っお䞀人泣いたりもしたが、慣れずいうものは恐ろしい。
傷付くこずなんかすっかりなくなっおしたった。

存圚が薄いずいうこずは同様に反感だっお買いにくい。
面倒事だっお少ない。
ただたたに私の存圚に気付いた誰かが「圱薄い子だよね」ず蚀う。
呚囲の人間はそれに同調するか私をクラスメむトずしお認識しおいなかったかのような口ぶりをする。
しかしそんなこずも、私の存圚も、䞀日経おばたたけろっず忘れおいるのだから滑皜である。
それは別に悲しくはない。
悔しくも、苊しくもない。
もうずっくに諊めおいたから。

今はもうその無差別な雑音に心を痛めるこずはない。
ただ、むか぀くだけだった。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#512012/08/28 16:05
そんな颚にすっかり開き盎り、自分自身諊芳しおいたずきだった。


「えヌっず突然ですが今床クラス䌚をやりたヌすみんなの芪睊を深めるためにね」

それは昌䌑み。
孊玚委員の女の子が教卓の前に仁王立ちし、そんなこずを蚀いだしたのだ。
うちの孊校は匁圓持参。
そのため昌䌑みは基本的に皆教宀にいるからそれを芋蚈らっおの発蚀なのだろう。
仲のいい友人ず机をくっ぀けお談笑しながら匁圓に手を぀けおいたクラスメむトたちの動きがぎたりず止める。
そしお次の瞬間には各グルヌプでわっず歓声が䞊がり、盛り䞊がりを芋せた。
クラス䌚は倧奜評のようだ。

そんな䞭圓然のように私はひずり。
頬杖を぀いお぀たらなそうに窓から景色をがんやり芋おいた。
この空気が苊手だ。
クラス䞀䞞ずなる、この空気はい぀も以䞊に居心地が悪い。


「えヌっず来れない人いるいたら手、䞊げおヌ」

皆行く気満々のようで誰も手を挙げる様子はない。
私はずいうず、そもそも存圚を気付かれおいないから行かないにしろ手を挙げる必芁はない。

「じゃ、40人党員参加っおこずね」

41人なのに。
誰も違うず声を䞊げるこずはない。
ひずり抜けおいるずしたらそれは絶察に私で。
私は孊玚委員にすらクラスメむトずしお認識されおいない。
分かっおいたこずだけれど。
小さく溜息を぀く。

「いやいや䜕いっおんの俺ら41人クラスだぜ」

ひずりの男子生埒が笑いたじりにそんなこずを蚀いだしたのだ。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#522012/08/31 12:15
それから慌おお孊玚委員は人数を蚀い盎したが、みんな誰が抜けおいたかなんお圓然知らない。
寧ろ圌の蚀葉に違和感を芚えたひずだっお陰では居ただろう。

————あれうちのクラス41人だっけずいう感じに。
けれどそのひず、高尟くんはクラスのムヌドメヌカヌみたいなひずで沢山のひずから慕われおいるから圌の発蚀に関しお誰も射止めない。
それにしおも高尟くんのようなひずが私の存圚を認識しおいたこずの方が意倖だ。
圌はい぀も誰かしらに囲たれお隒がしく生きおいる郚類のひず。
私ずは党く正反察の生き方をしおいる。
圌は䞍思議だ。

結局笑い話ずしお流れお、その堎を収められた。
そしお攟課埌。


「高尟くん」
「あ、立花さんじゃん。俺に喋りかけおくるなんお珍しいね」

珍しく圌がひずり教宀に残っおいたので思い切っお圌の机の前に立ち、話しかける。
人懐こい犬のような笑みを振りたく圌は私の名前たで知っおいた。
本圓に䞍思議なひずだ。
けれど私はこれから圌に酷いこずを蚀う。
そうしたら圌もきっず私の存圚なんか忘れるだろうか。
それずも恩を仇で返す真䌌をした私を、恚むだろうか。

「ああいうの、やめお欲しいの」
「  ああいうのっおクラス䌚のや぀」

こくりず頷く。
もう攟っおおいお欲しいず蚀う。
構わないで欲しいず蚀う。
私の存圚を誰かが忘れおいたずしおも、違うず声をあげないで欲しい。
これからもひっそりず息をしお生きおいくから。
誰にも気づかれないように死んでいくから。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#532012/08/31 12:35
けれど県前の圌は「それ、俺には無理そう」ずカラカラ笑いながら返した。
口元は笑っおいるのに、目は真剣味を垯びおいる。
冗談っぜい蚀い回しにしおはずおも冗談には聞こえない。
思わぬ返事に察し呆気をずられた私はただがんやり、圌のその柄んだ黒色を芋぀めおいた。

「芋お芋ぬふりなんかできねヌんだわ」
「 私は善人に助けおもらうほど救いなんか求めおいなかったよ」
「俺、むしろ超蚈算高く生きおるよ善人なんかたさか」

おどけるように銖を傟げお癜い八重歯が芗かせる。
お前の䞖界はちっぜけだず蚀われおいるようだ。
悪戯な衚情だけれど憎めないひずだなあず思った。

「ただ俺の県はさ、倧事なもんは党郚芋萜ずさねヌの」

そう蚀っお圌は自分の角膜を指差す。
墚色が鮮やかな赀の倕日に染たっおいる。
そしおそこには私が映し出されおいた。
なんずなく、埮かに、嬉しそうな顔をした私が。


「だからたた立花さんのこずも芋぀けおやれるず思うから」

たあ、俺が芋぀けたいだけだけど。
高尟くんはそう蚀っお笑った。
クラスメむト達に囲たれおいるずきの笑みずも、先ほどから私の前で芋せおいた笑みずもちがう。
初めおの䜜られおいない、ありのたたの圌を芋た気がした。
それくらい穏やかな衚情だったから。

私は少しだけ泣きそうになった。
そしお少しだけ、前に進めそうな気がした。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#542012/08/31 12:39
おわりです。自分でも䜕したいのか分からなくなった。
keenoさんのfixをBGMにしたらそれに感化されお湿っぜく。でもちょっず前向きにっおかんじです。

倚分次曞くものはに走りたす。のでご泚意ください。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#552012/08/31 22:03
先週、進路垌望調査祚が配られた。
これが最終決定ずなるようでしっかり考えるようにず䞀週間の猶予をもらったのだ。
䞭䞉の冬になるず倚くの生埒がぶ぀かる課題。

しかしそれには䟋倖もある。
スポヌツ掚薊等の特埅生だ。
僕のすきなひずは"それ"だった。
圌はずおも噚甚で、誰からも尊敬の県差しで芋られ、教垫たちからも䞀目眮かれる存圚だった。
いわゆる赀叞くんは倩才だったのだ。


攟課埌。
読みたい本があるず蚀えば付き合うず蚀っおくれた赀叞くんの厚意に甘え、図曞宀に来おいた。
校内でもずりわけ静寂に包たれおいる歀凊は萜ち着くし、奜きな堎所であった。


「テツダは僕ず同じ掛山に来るんだ」

それは突然だった。
本棚から奜きな䜜家が執筆した䞀冊を取り出しお䜕気なく背衚玙を芋぀めおいたずき。
有無を蚀わせない口ぶりで圌は僕の進む道を決めた。
それがなんずも圌らしくお思わず苊笑いしおしたう。

本圓は他に行きたい高校があった。
進路調査祚の第䞀垌望は既に埋たっおいたのだ。
けれどそれをどうしおも圌にだけは蚀えずにいた。
圌を突き攟すこずに埌ろめたさを感じおいたし、それ以䞊に恐怖しおいたから。

もし圌に逆らったら僕はどうなっおしたうのだろう。
殺される、のだろうか。
それずも孀独になった圌は䞀人でに死んでしたうのだろうか。
あながち間違っおいないようで劙に真実味を垯びおいるからこそ、怖いのだ。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#562012/08/31 22:09
ラブストヌリヌに倧した興味も湧かなかった僕は手に取った本を元の堎所に戻す。
そしお芋るだけで頭が痛くなりそうな分厚い本を片手に隣りに立぀赀叞くんぞちらりず芖線をずらす。


「 でも京郜ですよね。䞀人暮らしなんお䞡芪が蚱すかどうか」
「僕の手にかかればそんなこずは造䜜もないさ」

圌がそう蚀うのならそうなのだろう。
絶察的な自信の䞊で生きおいるような人だった。
間違ったこずは蚀わないし事実蚀ったこずはその通りになる。

「テツダ」
「はい」
「お前に遞択の䜙地なんおないんだよ。僕の蚀うこずは党お正しいのだから」
「  」

蚀い聞かせるずいうより突き付けられた気分だ。
頭の䞭がちかちか。眩暈がする。目頭が焌けるように熱い。がやけた芖界の䞭で奥歯を噛み締める。
悔しいのか、はたたた悲しいのか。
よく分からないぐちゃぐちゃの真っ黒に塗り぀ぶされた感情を喉で噛み殺した。

そんな時に限っお「それに、」ず圌はたるで远い蚎ちでもかけるように蚀う。


「お前は僕が奜きだろう」

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#572012/08/31 22:13
䌞びおきた陶噚のような癜い手に反射的に肩を竊める。
腰に手を回され互いに向き合う圢になる。
そしお空いた右手で壊れ物のように優しく、圌の手のひらが僕の頬を包むようにそっず觊れた。
錻梁が觊れ合いそうなほど近くにあるのは満足そうに双眞を现めお笑う赀叞くん。

 圌はこんなに綺麗に笑う人だっただろうか。
いいやちがう。
本圓の赀叞埁十郎ずいうひずの笑い方は、ちがうのだ。

自分のこずを「オレ」ず蚀っお僕のこずを「黒子」ず呌ぶ。

必ずしも笑い方を知っおいるはずなのにどうしおだかぎこちなく、困ったように眉尻を䞋げお笑う。
距離が瞮たるほどに、透けおくるのは完璧だず思っおいたはずの人工的な君の、僅かな人間らしさ。
自我が芜吹き始たばかりの赀子のような、䞍噚甚にしか感情を珟せられないひず。

————ああそうだ。


「僕もお前がすきだよ、あいしおいるんだ。だから」

君が、すきだったよ。
僕は君がどうしようもなく、すきだった。

自分のこずを「オレ」ず蚀っお僕のこずを「黒子」ず呌ぶ君が。

それは君であっお君ではない。
今はもう煙のように消えおしたった君が、ぎこちなく笑う君が、すきだった。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#582012/08/31 22:17
先ほどから息がかかるほど近かった距離が曎に突き詰められる。
キス、されるのかず思っおぎゅっず目を瞑った。
けれど唇に感觊はない。
 期埅しなかったず蚀えば嘘になる。

するず顔を通り過ぎた圌が耳元でふっず笑った気配がした。
䜕もかも芋透かされおいるようで、気恥ずかしい。けれど今のがわざずだず気付く。


「裏切るな、"僕"を」

囁かれたのはたるで甘くない脅しだった。
耳殻をぺろりず舐められる。
粟立぀肌を隠しお、その呪いのような、戒めのような蚀葉に小さく頷いた。

酷く綺麗な倢だず思った。

矎しい赀が、僕を呑む。
僕はただそれを、愛せずにいた。
僕の愛した君ずは別人の、停物の気がしお、愛せずにいた。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#592012/08/31 22:28
はいおわりです。
赀叞くんは䞀人称が「オレ」から「僕」に倉わったりずかしおいるので二重人栌説ずか結構私は面癜いず思っおいたす。
だから人栌が豹倉しちゃっおアレな感じの話を曞いおみたした。ちょっず狂愛ずいうか独占欲が匷いずいうかダンデレっぜい。

次は䞋品ずいうか䞋ネタな話にしようか、爜やかな䞡想いの䞀歩手前にしようかずいう真逆の方向で悩んでいたす。
前者の堎合はご泚意ください。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#602012/09/03 22:01
予告ず党然ちがう話かきたす。
本圓は友達以䞊恋人未満で䞋ネタずか蚀っお盛り䞊がる雰囲気もくそもないふたりの青春を曞こうずしたら黄瀬の独癜になりたした。小説ずは呌べないたがいものが出来おしたった。
第䞉者芖点でふたりに぀いお語っおるけど黄瀬くんがゆめみがち。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#612012/09/03 22:02
男女間の友情などありえない。
そのこずに関しお黄瀬は党面的に同意しおいた。

女も男も性別には逆らえない。
性を意識するずいうのは最早本胜的なものだ。
だから幎を重ねるごずに自我は成長し「異性ず仲良くなりたい」「異性ず話すのが恥ずかしいなあ」なんお思うこずも至極圓たり前のこずである。

女が自分のこずで喧嘩をしおいるのを芋かけたこずがある。
黄瀬は幌い頃から敎った顔立ち、明るい性栌、類たれな運動神経のおかげでそれはもう女の子から匕く手あたただった。
そしお女同士の嫉劬。
黄瀬が誰か䞀人を特別扱いすれば抜け駆けだずその子が陰口を蚀われたりするのも珍しくはなかった。
それが嫌で今床は誰にでも平等に接すれば「私を䞀番にしおよ」ずなんずも䞍平等なこずを蚀われ、時に最䜎ず眵られどこの映画のワンシヌンだずも思うが頬をぶたれたこずもあった。
黄瀬は女がすきではなかった。
すべおの女が嫌いずいうわけではない。

ただ自分の呚りに集う女が自分の倖面しか芋おいないこずに嫌気がさしたのである。
だから黄瀬は奜みのタむプを聞かれれば「゜クバクしない子」ず即答する。
昔のトラりマのせいである。

ただ、すきな女の子もいた。

すきずいっおも恋愛感情的な意味ではなくひずずしおすきずいう意味である。
それが偶然女の子だっただけである。
䟋えばバスケ郚のマネヌゞャヌである桃井だずか、䟋えば同じクラスのみょうじなたえずいう少女であるずか。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#622012/09/03 22:04
話を戻そう。
男女の友情は成立しないずいう郜垂䌝説。
これに぀いおは間違いず蚀わざるを埗ない。
珟に性別の壁を越えた友情が確かにそこにはあったのだから。


みょうじず青峰はたさにそれだった。
お互い異性ずしお意識しおいる節が党くずいっおいいほどない。
䟋え兄効のように育っおきた幌銎染みであろうが、思春期ずもあれば同じペットボトルを二人で回し飲みしたり、名前で芪しく呌び合ったり、あろうこずか公衆の面前でハグやらいちゃいちゃやらし出すなんおこずには抵抗があるはずだろう。

だがそんなこずはなんのその。
みょうじず青峰は呚囲の目を党く気にしなかった。
気にしなさすぎおただのバカップルかず認識されおもおかしくないほどだった。
けれど二人は口を揃えお付き合っおないずいう。
ハグも肩を組むこずも䞀切の抵抗なくする間柄。
たるで男同士の友情物語のようにも芋える二人。

ならチュヌはするのかず面癜半分で尋ねたずころ二人しお顔を芋合わせお「流石にそれはねヌよ぀かこい぀ずチュヌずか想像できねえ」ず腹を抱えお笑っおいたのは蚘憶に新しい。

垞に女に囲たれおいる黄瀬からしおみればそれは酷く異様だった。
自慢ではないが、無駄に顔が良すぎる自分は女から異性ずしか意識されたこずがないのだからそれは極めお普通の反応だろう。
なのにその垞識が芆された気分だ。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#632012/09/03 22:06
぀いでにこの二人はもしかしたら䞀生恋人も䜜らないで結婚もしないで、芪友ずいう関係のたた氞遠に仲良く過ごしおいくんじゃないかず想像した。
するずなんだかずおも頌もしく、そしお矚たしく思えた。

自分を男ずしお芋ない女の子。
それだけで黄瀬からしおみればみょうじはすごく特別に芋えた。
だから黄瀬はそんな圌女ず䞀番理想ずする関係を築いおいた青峰が矚たしかった。

けれど青峰のこずもすきだった。
青峰は憧れであり、倧しお物事に執着しない自分の数少ない特別に入る人物だった。

青峰のこずもみょうじのこずもだいすきだった。
だから二人のじゃれあう姿は、䜕より綺麗に芋えた。
たるで無欲で、玔粋だったから。


願わくばどうか、この二人の姿がい぀たでもそこにあればいいず。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#642012/09/03 22:12
おわり。これで実はどっちかが恋愛感情持っおたら面癜いなず。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#652012/09/08 14:39
「そういうの、色県鏡っおいうんですよ」

赀叞くんっお性欲なさそうなのに。
コヌトの端っこで膝を抱えお座り蟌み、呟いた。
その蚀葉は䜓育通に静かに響き、い぀の間にか目の前に䜇む黒子くんが返事をしおいた。
さっきたで䞀人居残っおシュヌト緎習に研鑜しおいたずいうのにこれは䞀䜓どういうこずだろうか。
圱が薄いっお䞍䟿なのか䟿利なのかいたいち刀断に困る。


「え淡癜そうにしか芋えない黒子くんが実は絶倫っお」
「しんでください」

茶化したような冗談を蚀えば間髪入れずに毒を吐かれた。
それは別段矎味しくはないのだ。
薄幞で䜕凊ずなく儚い雰囲気のある黒子くんが意倖ず饒舌で、しかも毒舌ずいうこず事実にはもうすっかり銎染んでしたった私だが、マゟヒストでもない。

隣りに座り蟌んだ圌にお疲れさたずドリンクを差し出す。
小さくお瀌を蚀った黒子くんは手枡されたそれを喉に流し蟌み、䞀息぀くず私の方ぞ芖線をやる。

「 君が蚀った赀叞くんのこずですが」
「ん」
「圌だっお人間であり䞀人の男です」

それもそうだ。
私だっお別に倢芋がちな女の子ずいうわけではない。
少女挫画みたいな恋愛をい぀たでも求めおいるわけでもない。
幎頃の男女が手を繋ぐだけの枅い付き合いをするなんおい぀の時代だずも思う。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#662012/09/08 14:57
だけど。

「そもそもあんな理にかなった生き方しか知らないみたいな、聖人君子みたいな赀叞くんが、よりによっお唯䞀の欠点が女癖だけは悪いっお どういうこずなの」

私の䞭の赀叞くんのむメヌゞはずいうず、完璧、冷静、思慮深い。

綺麗な顔しおるし、仕草なんかも流麗で䞭孊生にしおは倧人びた雰囲気のあるひず。
成瞟だっお垞に銖垭だし、運動神経も矀を抜いおる。
そんな赀叞くんが女の子の目を惹かないわけがない。
けれど圌はどんなに矎人で気立おのいい女の子に告癜されおも党お振っおいる。
女嫌いずいう噂も密かにあるが党人類すべおに等しく平等な接し方をする圌にそれはないだろう。
では男にしか興味がないのだろうか
それもないず今なら断蚀できる。

䜕故なら私は芋おしたったから。
————男女の営みずいうものを。

その日私は先生に雑甚を頌たれ、぀いうっかり垰るのが遅くなっおしたった。
蟺り䞀面薄暗く、星もちらちら圱を萜ずす。
急いで垰ろうず思った私はあえお人通りが少ないが、近道できる旧校舎ぞず続く通りぞ向かったのだ。
するず空き教宀から僅かに聞こえおくる女の子の声。
䌚話にしおも少しおかしい、䞀方的に挏れるそれに違和感を感じた私は奜奇心からひっそりず芗いおしたったのだ。
今ずなっおは埌悔しかない。
他人のそのような行為ずいうものは正盎芋お気分のいいものではない。
たしおや倚感な思春期。
ちょっずショッキングな映像であった。
぀いでに蚀うず盞手がその、赀叞くんだったずいうこずに戞惑いが隠せない。

あのどちらかずいうず女の子みたいに綺麗で、あたり男の子を感じさせない、欲ずは䞀切無瞁そうな赀叞くんが

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#672012/09/08 14:59
しかも黒子くんに尋ねたずころ赀叞くんに圌女ず呌べる存圚はやはりいないらしい。
だからあの女の子は圌女でも䜕でもない。
それに赀叞くんがあのような行為に及ぶ盞手は耇数いるず、衝撃の事実たで打ち明けられた。

圌女を䜜らないずいう倉なポリシヌでもあるのだろうか
なんにせよ、付き合っおもいない女の子ず身䜓だけの関係を築くだなんお自分が魅力的だずいうこずを理解しおの行動だ。
赀叞くんっお絵に描いたような優等生のむメヌゞしかなかったけど意倖ずワルむコ


「そんなに䞍満があるなら君が圌女になっおあげればいいんじゃないですか」
「私凊女なんだけど」
「 はあ」
「なにその溜息」

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#682012/09/08 15:19
おわりです。続けようず思ったら犁にしかいかなかったので(危な)

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#692012/09/14 19:57
すきなんだ。
俺ず君が出䌚えたのはたさしく運呜だず思う

そんなこずを恥ずかしげもなくさらりず蚀いのけた目の前の男は爜やかな奜青幎ぜい笑みを浮かべおいる。
けれど私は知っおいる。
圌にずっおは運呜ずいう蚀葉ですらなんの意味も含たれおいないこずくらい。
あるずきは街で芋かけた少し綺麗なお姉さんずか、それこそ身近にいる可愛らしい同䞖代女の子だずか。
圌に奜みずいうものは存圚しないらしい。
䞇遍なく色んな女の子を口説いおいるのだから。

それでも圌はわりかし敎った顔立ちをしおいるずいうのに、それの䜿い方を分かっちゃいないのだ。
照れくさい台詞を初察面の人間から延々ず聞かされれば、流石にどんなに顔がよかろうず女の子は぀いおいけないず思っおしたう。
䜕故自分の軟掟は成功しないのか。
それに぀いおこの男はもっず客芳的に理解する必芁があるず思う。


「私は、奜きじゃないよ。森山くんのこず」

嘘を぀いた。
血を吐くような嘘を、぀いた。

「運呜っお蚀葉は嫌いなの」

嘘に嘘を重ねお、悪あがきした。
ふわりず舞う暪髪が邪魔で耳にかける。

するず圌はい぀ものように傷付いた顔をした。
けれどそれも明日には忘れおしたうんでしょう。
軟掟した女の子の顔なんおいちいち芚えおいないでしょう。
あなたにずっお私は他の子たちずなんの差異もない。


それでも。

それでももしたた私ずあなたが再び繋がれたなら。
それがきっず本圓の運呜なんでしょう。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#702012/09/14 20:00
おわる。森山先茩はもうちょっず評䟡されおもいいず思う。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#712012/09/19 19:32
目は口ほどに物を蚀う。
なんお蚀葉はあながち的を射おいるず思うのだ。
掗緎された日本語を垞甚する赀叞くんや黒子くんのような「本の虫」ならただしも基本的に䞭孊生の口にする蚀葉など限りがある。

私のすきな人は本の虫ではない。
寧ろ読曞だずか、现々したものは嫌いそうですらある。
぀いでに非垞に面倒くさがりだし、口に出す蚀葉や喋り方もたるで小さな子䟛が駄々をこねたような感じだ。

そんな圌は蚀葉を䜿うのを奜たしく思っおないのか、目でものを語るひずだ。
気怠い雰囲気を纏っおいるが芖線だけは刺すような迫力を兌ね備えおいる。
だから私は敊くんの目がすきだった。
圌の感情は蚀葉なんかよりもずっず真っ盎ぐ䌝わる、それがどうしようもなくすきだったのだ。


「本の虫なのに、倉だねえ」

あなたの目がすきだず打ち明けるず、敊くんは座り蟌み私を抱きすくめたたたケラケラ笑った。
実際に声を䞊げお笑ったわけではない。
本圓はただの含み笑いだ。
圌の目が、ケラケラず音を出したような、そんな錯芚にさせるのだ。
私は読曞家であるのに蚀葉を䜿わない敊くんがすきだずいう。
おかしな話だ。


「でも俺も、倉なんだよね」
ず思い出したような声で、圌はなんでもないような口調で呟く。


「俺面倒くさいこずはすげヌ嫌いだけどなたえちんだけは泣かせたくないっお、最近思うんだヌ」

 それは䞍意打ちです。
火照る頬を隠すように、䞀回りも二回りも倧きい敊くんの肩口に顔を埋めた。
敊くんは「どうしたのヌ」なんお腑抜けた様子で尋ねおくる。

こんなの。こんなの。
私ばかりが、幞せを貰っおるみたい。
少しでもそれをお裟分けしたくおたるで私の気持ちを分かっおない愛しい敊くんに、觊れるだけのキスをした。

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#722012/09/19 19:35
本の虫になりたい。
携垯からの即興曞き蟌みなのでちょっず意味わからんのは芋逃しお䞋さいm(_ _)m

[しおあめ◆HF/FfT4A]

#732012/11/11 08:32
本圓は、ず。
圢のいい唇を開いお。
囁くように、祈るように、あの子は蚀う。


「ずっず、矚たしかった、君のこず」

そこに劬む声色はなかった。
矚たしかったっお蚀う割に、なかった。
あの子は笑った。
控えめに、含むように、ビヌ玉みたいな目を现める笑い方は綺麗だった。
そう、あの子は綺麗だった。
俺にはない唯䞀を持っおいたし、圌の特別だった。

「君は、い぀だっおきらきらしおいたから」

だから眩しかったずあの子が蚀った。
そんなの嘘だ。
だっお。
俺には、君の方が、眩しかったよ。

小さな身䜓で自由自圚にボヌルを操る。
そんな君のパスを受け取るのは決たっお圌で。
圌ず君のバスケに魅せられお、圌ず君の蚀葉に蚀い衚せない関係を傍で芋おいるこずが奜きで。
出来るこずなら、ずっず、芋おいたかった。

ねえ、黒子っち。
矚たしかったのは俺の方だよ。
その蚀葉を蚀う前に、あの子は消えおしたった。
姿を消すのが䞊手い子だから意識的にやられれば、きっずもう芋぀からないのだろう。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#742012/11/11 08:45
あの子がバスケを蟞めたず聞いた。
予感はしおいた。
だっおボヌルに觊れるず、たたに苊しそうな顔をしおいた。
あの子はバスケが奜きだったのに。
い぀からだったか、倉な顔をしおいた。
詊合に勝っおもちっずも嬉しそうじゃなかった。
元々無衚情な子だったけれど、それでもおかしかった。

けれど、驚いた振りをした。
鈍感な振りをした。
愚盎な俺だから、他の、緑間っちずかには呆れられたけど。

原因はたくさんあったんだず思う。
俺も原因の䞀因だったんだず思う。

けれど䜕よりの原因は。
あの子ずコヌトの䞭で、犬がじゃれあうようにバスケをしおいた圌が緎習をサボるようになったこず。
どうせ勝おるからず、詊合で手を抜くようになったこず。
勝っおもあの子ず拳を合わせるこずがなくなったこず。

圌ずあの子はたるで光ず圱のような、察極の存圚だったから。
決別は、あの子の圱ずしおの機胜を倱くしお。
圌はさっさず䞀人茝きを攟っお、眮いお行っおしたったのだ。
圱を、あの子を、盞棒を。

「テツ」

圌が唯䞀特別な愛称で呌んだ、あの子のこず。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#752012/11/11 09:10
圌ずあの子が男ず男じゃなかったのなら。
もっず䞊手にこずは運んで、氞遠に続く関係もあったのかも知れない。
けれど圌ずあの子は基本的に性栌は合わない。
物静かなあの子ず、粗暎な面が目立぀圌。
たるで察極で纏う空気も違っお。
バスケだけが唯䞀噛み合うような二人だった。
バスケだけが二人を繋いでいた。
間にはそれしかなかった。
けれどそれが、二人にずっおは䜕より倧事なものだったから。

だから俺はあの子が男で、圌が男で、良かったず思う。
二人の䞊ぶ姿を芋られたから。
バスケをやる姿が、芋られたから。
けれどそれは長くは続かないなんお、分かっおいた。
卒業ずか進路ずか将来ずか。
ぶ぀かる壁が倚すぎる。
ただでさえ二人は。
黒子っちず青峰っちは、普段はたるで真逆だったから。
だから俺はそんな二人の間を繋ごうず、誰よりも圌ずあの子の近くに居ようず。


「青峰っち 黒子っち」

氞遠に続けよ、ず願った。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#762012/11/12 18:24
攟課埌。
い぀もなら䜓育通で郚掻に勀しんでいる時間だが、授業が終わっお俺は真っ先に屋䞊に向かった。
斜錠のかかっおいない扉を開ければそこには芋知った男子生埒が寝転がっおいお。
俺は思わず、予想が圓たったこずに顔を綻ばせおしたう。

だっお圌の考えおいるこずを少しでも、俺が理解できたずいうこずだったから。
圌のこずを䜕も知らないわけではなかったずいうこずだったから。


圌は黒子っちの唯䞀無二の「光」だ。
もう、あの子が蟞めおしたった時点でそれは過去のこずなのだけれど。

けれど圌は、青峰っちは、特別だった。
䞭孊生バスケ界の䞭でも飛び抜けた才胜を持぀五人の倩才。
俺達は「キセキの䞖代」だなんお呌ばれお䞖間に持お囃されおいた。
でも、その五人の䞭でも青峰っちは矀を抜いおいた。
䜕がっお、誰よりもバスケが奜きで奜きで仕方ないっお顔でプレむをする。
俺も、他のキセキの䞖代も、バスケが奜きかず問われれば銖を傟げおしたう。
勝おれば嬉しい。
けれど別段、奜きで始めたずいうわけではないから。
でも圌は違った。
幌銎染みの桃っち曰く「ただのバスケ銬鹿」らしい。
本圓にその通り、青峰っちはどんなに苊しい展開でも楜しそうにバスケする。

だから圌はコヌト䞊で誰よりもきらきら茝いおいた。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#772012/11/12 18:29
そしお圌は黒子っちのこずもたた、認めおいた。
あんなに才胜に溢れおいる圌が、䞉軍でくさっおいた黒子っちを、バスケの才胜なんかちっずもなくお、それでも人䞀倍熱心に緎習しおいたあの子のこずを認めお、尊敬を蟌めお「テツ」ず呌んだ。
黒子っちもたた、才胜に溢れおいながら遅くたで居残っお緎習しお、楜しそうにバスケをする圌のこずを憧れおいたんだず思う。

だからその二人が念願の、同じコヌトに立っお。
黒子っちのパスがコヌトを流麗に繋いで、青峰っちが豪快にシュヌトを決めるその姿を。

いずおしいず思っお。
いいなあっお思っお。

俺は、二人を、矚たしいっお思っおた。

ずっず。
ずっず。

俺はどんなに緎習に励んでもあんな颚に茝けないず思っおしたう。
黒子っちの光には、決しおなれないんだっお。
そしおたた、それほど献身的な動きも出来ないものだから、圱になるこずも出来ないんだず思う。


俺は、圌のこずもあの子のこずも、憧れだったから。
認めた二人だったから。
決しお手の届かない綺麗な堎所にいる二人だったから。
芪友ず呌ぶには少しくすぐったい、けれど満曎でもなさそうな顔をする。

圌ずあの子が、倧奜きだったから。


「こんなずころに居たんスね」

グラビア雑誌を読みふけっおいた青峰っちに声をかける。
するず圌は興味のなさそうな、眠そうな声色で「黄瀬か」ず俺の名を呌んだ。

俺が声をかけおもをしようずは持ちかけお来ない圌は、やっぱりあの頃ずは倉わっおしたったんだず。
俺は静かに目を閉じた。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#782012/11/17 23:15
「黒子っちが退郚した」

い぀もは語尟に「っス」ずか぀けるけど。
あの子が、倉な喋り方ですねず蚀った俺の口調だけれど。
このずきばかりはそれもなかった。

抑揚のない声で青峰っちはそうか、ずだけ呟いた。
ひずりごずのように。

今なら分かる。
あのずきはカッずなっお気付けなかったけれど。
青峰っちはきっず、ショックを受けおいた。
そうに違いなかったのだ。

黒子っちは䜕があっおもバスケをやめない。
自分の埌ろを歩いお回る圱だずいうこずを誰よりもよく知っおいたから。
あの子がバスケを奜きだずいうこずを、䜕よりも知っおいたから。
むノセントだず、思っおいたのだろう。
そんなあの子が自分ずの決別を遞んだ。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#792012/11/17 23:17
倚分青峰っちは信じおいた。
挠然ず。
自分から、あの子を突き攟したくせに。
匷くなりすぎおバスケが぀たらないず、俺䞀人で勝おるからお前のパスはいらないず。
突き攟しお眮いお行ったくせに。
それでもあの子は黙っお自分の傍に、無条件に、寄り添うように居るずいうこず。

俺は蚱せなかった。

倧奜きだったから。
俺のこずを眩しいず、少しだけ目を现めお笑ったあの子のこずも。
お前は匷くなるず確信した響きで肩を組んできた眩しすぎる圌のこずも。
憧れだったから。
二人が、二人の空気が、光ず圱が。

俺にずっおの党おにすらなり埗たから。

出来るこずならずっず芋おいたかったのに。
どうしお。
そんな簡単に、あの子を手攟すんだず。

頭に血が昇った俺は、寝転ぶ圌に突っかかるようにしお芆いかぶさった。
いきなりのこずで䜕すんだず怒号を䞊げた圌に、俺は。


「䜕で、䜕で、䜕でっ 」

がろがろず涙を萜ずした。
圌の顔を濡らす倧粒のそれに、圌は顔を顰めた。
でも黙っお俺の取り留めの無い「なんで」を聞いおいた。
圌は俺を殎るこずはなかった。
ただもうテツの話はすんなず舌打ちたじりに、去り際に告げられた。

本圓の、今生の別れなのだず悟った。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#802012/12/14 18:14
飜きたので次いきたす
だけど恋愛芁玠ずか恐らく薄い そんな緑赀

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#812012/12/14 18:15
䞭孊の䞉幎間。
勉匷の息抜きで始めたはずのバスケ。
そこで出䌚ったのは劙に倧人びおいお、癪に障る男。

あの日々を幞せず呌んでよかったのだろうか。


決しお隣りを歩くこずは出来なかった。
お前は郚員を率いお先頭を歩くこずを望たれおいたし、お前自身䞻将であるこずには満曎でもなさそうだったから。

けれどい぀も、傍に居た。
お前が䞻将で俺が副䞻将だったこずも理由のひず぀だったのかも知れない。
けれど俺たちは。
空気に溶けるように、寄り添うように。
自然ず俺たちは誰に促されるわけでもなく、矩務でもなく、傍に居た。

誰よりお前の近くに居たのはきっず俺だ。
誰よりお前の蚀葉を聞いたのも、きっず俺だ。



「お前の傍は、心地がいいな」

そう蚀っおお前が笑ったこず。
幎頃の少幎らしく、少し照れくさそうにしたこず。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#822012/12/14 18:15
他の郚員の前では鬌のように厳しい䞻将の顔しか芋せない。
だからお前の玠顔を知るのはほんの䞀握りだったのだろう。

よく、呚囲から勘違いされる節のある男だった。
頭はいいのに察人付き合いはすこぶる䞋手くそで。
俺よりはマシかも知れないがそれでも䞖枡り䞊手ずは皋遠い。
だからい぀も他人からは畏怖の県で芋られる。

すごいよな、怖いよな、っお。
耳打ちされる。

そんなお前が。
完璧すぎお人間味の欠片もないお前が。


「緑間、お前、すごいシュヌタヌになるよ」

お前が、俺の前でだけ、少し柔らかな衚情を芋せおくれるずいうこずを。

俺は知っおいた。
知っおいたけれど。

その手を、掎めずに居た。

あの日確かに、お前は俺の目の前に居たのに。
ここに居たのに。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#832012/12/30 14:50
「真ちゃヌん 倧䞈倫かよ」

らしくもない。
六限の授業䞭に居眠りをしおいたらしい。
机にう぀䌏せになる俺に高尟が頭䞊からおおいず声をかけおきお、ようやく意識が芚醒した。
顔を䞊げるず蟺りの人圱は疎らで、や぀は少し神劙な顔぀きをしおいた。
らしくもない。
お前は軜薄で、お調子者で、空気の読めない振りをすればいい。
い぀ものように。
けれど、高尟は。


「真ちゃん、今日はもう垰れよ。俺が倧坪さんずかに蚀っずくし」
「 䜕故俺がお前の呜什に埓わなければならないのだよ、銬鹿らしい」

県鏡のブリッゞを持ち䞊げ、溜息を吐く。
怅子から立ち䞊がっお゚ナメルバッグを肩に掛け、教宀から出ようずすれば腕を掎たれた。
誰かは分かる。
だから敢えお振り返らず、背を向けたたたなんなんだず匷めの口調で尋ねた。

「呜什じゃなくお、お願いだよ」
「蚀い回しを倉えたずころで俺の答えは倉わらない」
「真ちゃん、集䞭出来ない奎がコヌトに立っおも宮地さん蟺りに怒られるだけなんだぜ」

䜕もかも分かった口振りだった。
この男は。
䜕も考えおいない、薄っぺらいように芋えお実は思慮深い。
そしお、目ざずい。
だから俺はこい぀に少し、倚分、心を蚱しおいる。

「  今日だけだぞ」
「ありがずう、真ちゃん」

救われたのは俺の方だ。
けれど癪だったから。
俺は玠盎にはなれないから。

あの日の幻に、未だに囚われおいる。

[しおあめ◆pufpa7aQ]

#842012/12/30 16:44
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[匿名さん]

#852019/12/18 00:38
久しぶりに 読んだ感動した

[匿名さん]

#862019/12/21 09:10
ゎミは分別しよ

[匿名さん]

#872019/12/31 09:03最新レス
資源ごみ

[匿名さん]


『ゎミ箱。』 ぞのレス投皿
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