新年早々、紀伊國屋書店のTwitter公式アカウントが炎上するという騒動が発生した。
その発端となったのは、以下のツイートだった。
「本日、百田尚樹先生、有本 香先生にご来店いただき、『日本国紀』および『「日本国紀」の副読本』にサインを入れていただきました。元旦からありがとうございます!」。
昨年、百田尚樹氏の『日本国紀』の内容や出典等をめぐって、様々な論争が発生した。
その書籍ならびに著者らに肯定的な内容のツイートであるとの理由で、百田氏らを批判する人々を中心に異論が続出。
紀伊國屋書店が同書を大々的に扱い、サイン本の販売企画まで実施することを問題視するという声が各所で上がった。
2019年1月7日には、看護師の宮子あずさ氏が、東京新聞朝刊の「本音のコラム」欄で本件に言及した。
『日本国紀』のサイン本の企画との関連で、紀伊國屋書店にて「一九八三年に起きた採用差別事件を思い出した」という。
「この事件は、紀伊國屋書店内で極秘に出回っていた女子社員採用基準が外部に出たもの」と宮子氏は説明する。
「『ブス』『チビ』『メガネ』『慢性の既往症』は絶対不可、『革新政党支持』『家庭環境複雑』は要注意などと、あぜんとする内容であった」。
「百田氏の本を推してはばからない現状を見ると、差別に甘い企業体質は、連綿と続いていたと思わずにいられない」と主張。
当時、宮子氏はこの問題を通じて、日本社会での性差別の実態を垣間見たという。
記事の末尾で、宮子氏は次のように記した。
「差別的な体質は温存されやすい。だからこそ、堂々とできないことが大事。書店は文化を売る仕事。差別への感受性が低い書店で、本を買いたくはない」と記して、紀伊國屋書店での不買を宣言した。
これに先んじて、前週2018年12月31日のコラムでも、宮子氏は性差別の問題を扱っていた。
「人権派ジャーナリストとして高名な男性が、女性への性暴力を告発され、謝罪する事態となった」という問題だ。
「多くの差別や不正と闘う一方で、性差別には無頓着な男性を多く見てきた」という。
売春に肯定的な男性は、女性から批判されると「底辺に生きる女性をあなたたちは差別している」と「逆ギレ」するというのだ。
「果ては『男性障がい者のために売春は必要。女性は内なる障がい者差別を点検すべき』と説教」。
「まだ二十代だった私は、『絶対おかしい』と思いつつ、彼らを論破できずに沈黙した」という。
「今あの時代に戻ったら、『恥を知りなさい』と怒鳴ってやる。感情的と言われても気にしない。私を感情的にするのは、彼らの差別への鈍感さなのだ」。
書店が批判の対象となるという騒動が、近頃は定期的に発生している。
人々の見解が大きく分かれる書籍を書店が大々的に宣伝したり、その書籍に関わるイベントを実施したりすると、抗議が殺到するという傾向が強まっている。
企画が中止に追い込まれることもあり、そのような事態に至ること自体が再び論争の対象になる場合もある。
【日時】2019年01月14日(月)
【提供】探偵Watch