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　【兵庫】無職の人は飲食代がタダという、その名も「無職酒場」が先月末、兵庫県淡路市で開かれた。無職の人らが集まり気兼ねなく語り合える場として、関西を中心に6月から不定期開催されている。無職の時期をポジティブに捉える文化を根付かせようと、団体も立ち上がった。

■「小道にそれたら世界が広がった」

　「いま無職なら、飲食代は全部無料ですよ」

　10月29日夜、淡路市の古民家で開かれた「無職酒場」。ビールや唐揚げなどのメニューを注文しようとすると声をかけられる。飲み物は500円、食べ物は300円だが、支払うのは「有職」の人のみだ。

　思い思いにテーブルを囲み、無職同士、あるいは有職も交じって語り合う。無職になった経緯や心境、どんな日常を送っているか。気ままに語り、なごやかな時間が流れる。

　常連だという若い男性は、職場の人間関係に悩み半年ほど前に退職した。「無職だと人前で言いにくかったけれど、ここでなら言えるんです」。今は関心を持ったカウンセリングの勉強をしているという。

　「小道にそれたら世界が広がった」と話す女性もいた。無職になって会社員時代には出会えなかった人に出会えたという。コロナ禍で希望する観光業への就職がかなわず悩みながら働いているという社会人1年目の女性は「そういう選択肢もあるんだなと思えた」と話した。

　無職酒場を主催するのは京都市でまちづくりの会社を営む東信史さん（37）。「仕事が面白くない」「やめたい」という相談を度々受けてきた。感じたのは「会社を辞めるハードルが高く、いざ辞めると周りにいろいろ言われて後ろめたさを感じる人が多い」こと。そうした社会の空気に違和感を持った。

　自身も、いったん離職を考えた時期でもあった。仕事を辞めた「先輩」に話を聴かせてもらいたいという意図もあり、6月に京都市で初めて無職酒場を開催。予想以上に盛り上がり、7月に再び京都、8月は広島、神戸で開いた。毎回、数十人が集まった。

　「会話の中で次の道を見いだすこともあるだろうし、こんな経緯で無職になる人もいるんだと新たな視点を得られるのが面白い」。全都道府県での開催が目標だという。

【日時】2022年11月03日 10:16
【ソース】朝日新聞