JR木次線を走るトロッコ列車・奥出雲おろち号(定員64人)が、11月23日のラストランまで残り1カ月となった。連日満席が続き、沿線に鉄道ファンなどが訪れる。特産品や関連商品も売れる一方、関係者は特需後のにぎわい維持に思いを巡らせている。
晴れとなった22日。島根県奥出雲町八川の道の駅・奥出雲おろちループの展望台で、観光客や鉄道ファン数十人が山沿いを進むおろち号に手を振った。広島市西区から家族4人で訪れた長森優子さん(46)は「偶然見ることができ、手も振れてうれしかった。木次線に乗りたくなった」と笑顔で話した。
道の駅の来訪者は前年度に比べて月平均で約千人増加。飲食やお土産などの売り上げも前年同月比で約2割増えた。ラストランを盛り上げようと開発したおろち号をモチーフにしたタオルやボールペンなどの限定商品の売れ行きも好調だ。
JR出雲三成駅(島根県奥出雲町三成)にある「仁多特産市」も、19分間の停車時間に乗客約30人が買い物に訪れる。仁多米を使った菓子や地酒が人気で売り上げは4、5万円に上り、1日の約2割を占める。
上田幸敏店長(64)は盛り上がりを肌で感じる一方、「冬に向けて気温だけでなく、運行終了で消費も冷え込む」と懸念。12月に町内の生産者が直接、野菜を売り込む特産市を予定するなど知恵を絞る。
道の駅・奥出雲おろちループは徒歩と木次線の普通列車を使った観光を促そうと、道の駅から最寄り駅までの距離や周辺の景色の見どころを紹介するマップを作成。藤原紘子駅長(39)は「おろち号を通じて木次線自体の認知度も高まっている。もう一度来てもらえる仕組みをつくる」と意気込んだ。
おろち号は機関車、客車、窓ガラスのないトロッコ車の3両編成で、1998年に運行を開始。車両の老朽化で本年度が最後になる。最終日まで木次(一部・出雲市)-備後落合駅間で毎日走らせる。来年度は観光列車「あめつち」が乗り入れる。