中国・電子商取引大手アリババグループの従業員女性(当時)が、「上司(当時)から飲酒強要を受け、酩酊睡眠中に性的暴行を受けた」と告発していた事件に関して、济南市槐荫区人民法院は22日、張国被告の強制わいせつ罪を認め懲役1年6月の判決を言い渡した。
判決によると、張国被告は2021年7月27日の夜から28日の朝、女性のホテルの部屋などで複数回にわたってわいせつな行為をした。同裁判所は「(被告の行為は)酩酊している女性の意志に反し、強制的な性的虐待の罪を構成している」と断定。「検察の証拠は信頼でき、十分である」とした一方、被告側から「告白と後悔」が示されなかったので、実刑判決としたという。
すでにすべての関係者はアリババを去っている
女性による告発は同国の「#Me Too」運動に大きな刺激を与えた。同国内の性被害の告発にとどまらず、セクハラ・パワハラや「飲酒強要」「宴会文化」に関する激しい議論を巻き起こした。被害女性に対しては、中国版SNSで「なぜ男性と飲酒をしたのか」などという誹謗中傷もなされた。
なお、判決が出た現在、被害者女性も同被告もすでにアリババの社員ではない。ロイター通信などによると、被害者女性は昨年11月25日、「被害に関する誤った情報を広めた」として同社を解雇されていた。
女性は同8月上旬、山東省済南市への出張中に上司と顧客から性的暴行を受けたと社内のオンラインフォーラムに投稿した。告発では「7月、飲酒を伴う夕食の後に発生した」などと述べていた。上司は解雇され、幹部2人が引責辞任したという。
またブルームバーグは、同社は彼女の告発を社外に漏らしたとして従業員10人も解雇したと報じた。
中国駐在経験のある全国紙女性記者はいう。
「最近発覚した中国河北省のレストランで男性グループが女性を集団殴打するなどした暴行事件は中国国内のみならず、世界的に衝撃を与えました。中国ではここのところ、大企業から政府関係者まで、女性が被害を受けた事件の告発は続き、そのたびに世論は沸騰しています。
いつの間にか関係者全員が所属企業や組織から離脱したり、雲隠れしたりして、次第に公の場から姿を消していくことが多いです。今回のアリババの一件でも、今や関係者は誰一人として『アリババの人間』ではありません。メディアにしてみれば、『アリババの』をつけられなくなれば、ニュースバリューも落ち、報道することに二の足を踏みます。
そうした政府や大企業の姿勢の中、今回の有罪判決はある意味で画期的だったとは思います。少なくともきっちり懲役刑を言い渡すということ自体がまれだと思います」
(文=Business Journal編集部)