歴史に残るイベントとなった東京2020オリンピックが閉幕した。
日本は過去最多となる27個の金メダルを筆頭に合計58個のメダルを獲得し、その活躍に日本中が感動に包まれた。コロナ禍の影響と緊急事態宣言による在宅率も高かったようで、開会式の瞬間最高視聴率は驚異の60%を超えたのだから恐れ入る。世界中のトップアスリートによる戦いは幕を閉じたが、日本でも九州の小倉競馬場でトップジョッキー達による新たな戦いがスタートする。
先週までは東京2020オリンピックの影響で新潟と函館の2場所のみの開催だったが、そのオリンピックが閉幕したことで今週から小倉開催が開幕。例年夏の小倉は12日間の日程(2020年は8日間)で行われているが、今年は3回小倉で6日間、今週からの4回小倉が8日間と長い日程が組まれている。
そして1~3回の小倉リーディングを見てみると
1回小倉 吉田 隼人
2回小倉 吉田 隼人
3回小倉 福永 祐一
となっているが、ここに九州出身の騎手の名前がない。現在は佐賀競馬のみが残るも、かつていくつもの地方競馬があり、馬産地でもある九州は競馬と密接な関係にある。そしてJRAにも多くの九州出身の騎手や調教師、そして馬主がいる。彼らは地元意識が強く連帯感があるのが特徴だ。佐賀出身の川田騎手が小倉で乗ることにこだわりがあるのも、その理由の一つでもある。
1回小倉と2回小倉のリーディングを獲得した吉田隼人騎手は札幌滞在で不在、3回小倉リーディングだった福永祐一騎手も新潟が主戦で不在。となれば、やはり九州出身の騎手に注目だろう。騎乗馬の質も数も多くなるだろうし、同じ九州出身の調教師や馬主の馬となれば、さらに勝負気配が高まると言える。今週小倉で騎乗する九州出身の騎手は以下の通り。
■福岡出身
川須 栄彦
浜中 俊
■佐賀出身
鮫島 克駿
鮫島 良太
川田 将雅
■長崎出身
白浜 雄造
■熊本出身
高倉 稜
■鹿児島出身
幸 英明
小牧 太
この中で今年もっとも小倉で多く勝利しているのは浜中俊騎手で17勝。16勝で続くのが鮫島克駿騎手だ。しかし、やはりリーディング争いの筆頭は川田将雅騎手だろう。開幕週は土日合わせて13頭に騎乗するが、いきなり5勝以上は計算できそうな強力な布陣となっている。また騎乗馬の質は川田騎手に劣るものの、土日で17頭に騎乗する鮫島駿騎手も上位に食い込んでくるだろう。
さらに2017年の小倉年間リーディングを獲得した幸英明騎手も18頭と騎乗馬を集めた。土曜2Rのカシノトムキャットは九州馬主の所有馬で、九州の熊本産馬で幸騎手が騎乗するという地元尽くしの光景も小倉ならでは。
そして浜中俊騎手も多くの有力馬の騎乗が決定しており、特に小倉記念(G3)では川田騎手が手放したヴェロックスに騎乗。ここで復活勝利を成し遂げれば、一気に勢いに乗るかもしれない。
九州出身の騎手では川田将雅・鮫島克駿・幸英明・浜中俊の4名が注目だが、彼らにとって強力なライバルとなるのが松山弘平騎手だ。
今年12勝、2020年12勝、2019年16勝、2018年20勝、2017年15勝とここ5年の小倉で75勝の荒稼ぎ。その勝利数は前述の4人を大きく上回っている。昨年夏の2回小倉開催は松山騎手12勝、川田騎手13勝と1勝差で川田騎手がリーディングを獲得したが、この5年で見れば川田騎手は51勝と、かなりの差を付けられている。この小倉開催も土曜9頭、日曜はなんと全レースの12頭に騎乗することからも、かなりの意気込みと周囲の期待が窺える。
夏競馬も残り4週間となったが、各地でリーディングを争う熱いレースが続きそうだ。今年最後の小倉でどんなドラマが待っているのか、しっかりと見届けたいと思う。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。