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女性の産休はもちろん、最近では育休を取得して積極的に子育てを行う男性を「イクメン」と呼ぶようだが、野生のチンパンジーにとって、産休は子殺しを避けるために仲間から離れる対抗戦略であることが京都大学のグループの調査で明らかになった。

京大の中村美知夫准教授と西江仁徳日本学術振興会特別研究員らのグループは、中央アフリカ東部タンザニアのマハレ山塊国立公園を縄張りとする、20頭前後の野生のチンパンジーの群れを追跡しながら観察していた2014年12月、推定14歳のメスの出産シーンに出くわした。

デボタと呼ばれるこのメスは、地面にうずくまった姿勢で突然子供を産んだかと思うと、その背後に座っていたオスのダーウィン（25歳）が新生児を取り上げて逃亡し、赤ちゃんを食べてしまったというショッキングなものだったという。

ほ乳類のオスには、自分とは血が繋がっていない子供を殺すことで、そのメスの排卵を促し、繁殖機会を得ようとすると考えられている、子殺しのケースが多数報告されていて、野生のチンパンジーでもこれまで9つの群れで45事例が確認されているが、出産直後に子殺しがあったのは今回が初めてだという。

そこで西江研究員らは、1990年以降のマハレの群れの観測データ21年分を振り返って調べたところ、メスは出産前後になると、群れから離れて姿を消し、単独で出産したあと、しばらくして赤ちゃんを抱いて再び姿を表す「産休」期間があることが判明した。

デボタは初産だった可能性が高く、産休を取っていれば、出産直後に新生児を奪われるリスクはなかったため、出産の経験の有無や、他のメスの観察など、学習の必要性が指摘されている。

西江氏は「野生のチンパンジーにとっての産休は、オスの子殺しに対して、メスが戦略を進化させた結果ではないか」と指摘したうえで、この研究をさらに進めることで、人類の進化の歴史において、家族や社会がどう変化したかを解明する手がかりにつながると期待を寄せている。

なおこの研究論文は、国際学術誌『American Journal of Physical Anthropology』に掲載された。