🦀 米子市雑談

鳥取県米子市のホテルで2009年、男性支配人を殺害したとして強盗殺人罪に問われた元従業員、石田美実（よしみ）被告（63）の差し戻しの裁判員裁判で、鳥取地裁（荒木未佳裁判長）は30日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。公判は、1審の有罪判決後に2審の逆転無罪判決が最高裁で破棄され、地裁まで差し戻されるという異例の経過をたどっている。

　起訴状などよると、石田被告は09年9月29日、勤務先の米子市のホテル事務所に侵入して金品を物色。男性支配人（当時54歳）に見つかったため、頭を壁にぶつけるなどして現金約26万8000円を奪ったとされる。支配人は15年9月、暴行が原因の多臓器不全で死亡した。

　差し戻し審では、被告が事件後に所持していた大量の1000円札が焦点となった。検察側は「日常生活で大量の1000円札を持つことは通常なく、奪った現金だ」と指摘。弁護側は「日常的に仕事用の釣り銭として持っていた」と反論し、無罪を主張していた。

　差し戻し前の1審・鳥取地裁判決（16年7月）は、被告が事件翌日に1000円札230枚を自身の口座に入金していたことなどから、「犯人であると強く推認できる」として殺人と窃盗罪を適用して懲役18年とした。しかし、2審・広島高裁松江支部（17年3月）は「入金された1000円札が被害金であることを裏付ける直接証拠がない」などとして無罪判決を言い渡した。

　これに対し、最高裁は18年7月の上告審で「間接事実の総合評価を欠き、1審判決が不合理であると十分に示していない」として2審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。さらに高裁は19年1月、「強盗殺人罪を適用しなかった1審判決は明らかな事実誤認」として、審理を鳥取地裁に差し戻していた。

　最高裁によると、1審裁判員裁判の有罪判決が2審で全面無罪となった被告は23人（20年9月末現在）。うち上告審で2審無罪判決が破棄されたのは石田被告しかいない。