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大洋ホエールズの納会。76年、大洋は借金33、首位巨人と32ゲーム差離されての15年ぶり最下位に沈んだ。10月25日に辞任した秋山登前監督があいさつに立った。納会でのあいさつ、しかも指揮官が何か話すとなれば、来季への展望や意気込みが聞かれるはずだがそれも無理な話。辞任後の処遇さえ決まってない秋山前監督は未定の新監督に代わって演壇に立たされたのだ。
「大洋にお世話になった21年間で最低の勝率(3割6分6厘)で終わってしまい大変申し訳なく思う。これからは違った形で野球を勉強したい」と述べたが、盛大な拍手を送るわけもいかず、大洋ナイン、関係者も下を向くばかり。ホエールズのドン、中部謙吉オーナーが「かつてホエールズは最下位から優勝した。去年の広島も、今年の巨人もそうだった。来年はホエールズの番だ」と独り怪気炎を上げていたのが、余計に痛々しかった。
いたたまれないのは秋山だ。去り行く敗軍の将に声をかける人もいない。自らが懇願して投手コーチに就任してもらった後の巨人監督、藤田元司コーチとともにいつの間にか会場を出て、廊下に並べられたソファーに座っていた。
「済まなかったなあ、恥かかせちゃって」と秋山。「いやあ、力になれなくてこちらこそ悪いと思っている」と藤田。かつて明大と慶大で東京六大学を代表する投手としてならし、プロでもスター街道を歩いた2人の背中がとても小さかった。
実は秋山政権は夏場で事実上終わっていた。7月にオールスターをはさんで7連敗し、1勝した後にさらに9連敗。ついに中部オーナーは現場介入し、秋山監督の指揮権をはく奪、ヘッド格の元ヤンキースの名三塁手、クリート・ボイヤー内野守備コーチを“監督”に命じた。