📖 創作･携帯小説

先生はまるで眼前に人などいないかのように迫ってくる。やむを得ず一歩また一歩下がると、道場の壁についてしまい、素早く身を返した。
そんなことを４〜５度繰り返していると、とうとう道場の外に出てしまった。そして先生はニコッと笑って戸を閉めた。
稽古は毎日こんなことの繰り返しであった。

あるとき旅の武芸者が先生に真剣での立ち合いを求めてきた。
先生は断ったが、あまりにも礼法を欠いた言動であったために、これを斬った。
下段に構えた先生に対し、相手は上段で切り込んだ。太刀が振り下ろされるまでの間に、先生は三度斬り、三度鞘に収めた。

いつもの稽古中(そもそもこんなことが稽古と言えるのだろうか)、私は「先生に切り込んだらどうなる？」と考えて、実行してみた。
齡70を越える老人である。竹刀ならまだしも、重い木刀で薙ぎ倒せば力で負けることはないと思っていた。
私が切り込んだ木刀は、まるで最初からそうなることが決まっていたかのように脇の間に吸い込まれ、電光石火、老人とは思えないほど素早い一撃をくらい、肋骨を折られた。

それから１月ほどして、私の怪我も治りかけたころ、道場に来客があった。名を蕉芭勝と言う。
例に従って、先生と立ち合いたいと言うのだ。
京では名の知れた矛の名手であったが浮世に疎い先生や他の稽古者が知るはずもなく、早々に追い返したそうである。
蕉芭勝はその後一日置きに訪ねて来たが、全てはねかえされた。

ある日、また訪ねて来た蕉芭勝に、先生はこんなことを言うのだ。
「其処許のお相手はこやつが致します、私の弟子で一番強い。今は怪我をしているがそれでも其処許に負けることはないでしょう」
ギョッとして先生を見ると、先生はニヤッと嫌らしい笑いを浮かべた。
「韻松殿(先生の名前)が選出なさるほどのお弟子様なので、相当な手練でいらっしゃるのでしょう。とは言え怪我人と立ち合わせられるのは武士として我慢がなりません。」

見てるからがんばれ

「こないだあなたと同じ様に韻松先生に立ち合いを求めてきた兵法者がいました、彼は一太刀の間に三度斬られ、ぱっくりと開いた切口から膓がこぼれていましたので、即座に介錯しました。」
蕉芭勝の表情から、今までの人を食ったような、例えば失礼な新聞記者のような顔色が消えた。そのかわり今度は私が畳みかける。
「この道場を浮世の平和呆け侍どもと一緒にしないほうが良い。なあに、怪我なら其処許の心配には及ばぬ。この通り既に治っておるわ。」

かくして私と蕉芭勝は立ち合うこととなった。しかしこの試合が後々私の人生において浅からぬ因縁を遺すこととなろうとは、夢にも思わないのであった。

隙の無さよりも炎の方が不思議

蕉芭勝が木矛を構える、なるほど並の兵法者らしくはない。
長身の面長。
腹か、弱点の肋骨か、目か、それとも喉笛をひと突きして即死させる気か。
そのポーカーフェイスからは心の中を読み取れない。
木矛と木刀とは言え、当たり所によっては死ぬのだ。

蕉芭勝が先手必勝とばかりに放った突きは、私の目をそれて額をとらえた。頭の中に火花が飛び散り、一瞬意識が遠くなったが、すでに間合いを詰め始めていたので右手に握った木刀だけは蕉芭勝の腹を突くことができた。
切っ先が蕉芭勝のヘソを力強く突き、薄い着物ごと体内に深く捻り込んだ。
木刀を握った右手に内臓や脊椎を破壊した確かな感触が伝わり、蕉芭勝が膝を着いて血尿を漏らした。

私はまだ頭の中に火花が散っていた。

その後蕉芭勝は下半身の自由がきかなくなり、しばらくの間韻松先生の屋敷で生活するようになった。
生活と言っても自分では小便もできないような体で、介護が必要だった。
弟子であり、彼をこのような不遇に導いた私が介護を任されたのだ。
しかし、この武から身を退いた侍は、ひがな1日床に寝そべり、口を開いたかと思えば二言目には「死にたい、死にたい」と口にするのだ。

まるで生気を失った目は、何を見るでもなく、ただ二つほど眼底に転がっているだけで、変わり果てた彼の青白い顔を形成するだけの無意味な物体のように思えた。
「そんな芋虫早く斬ってしまえ」

道場破りを図った蕉芭勝を嫌っている人間も少なくない。私もこんなしんきくさい男は嫌いである。第一、自分で打ち破った道場破りの介護をするなんてまっぴらだ。


芋虫。極めて正確な表現だが、芋虫なら自分で動く。


私はこの男を斬ることにした。

芭蕉は弱い。追い出されるだけでろくな稽古をしていない私に敗れたぐらいだ。
………弱者は………


………死ね

雪の降る２月。
正午をわずかに過ぎたころ、私はあの忌々しい芋虫が寝る後ろに立っていた。
意識があるのか無いのか、ぬらぬらと蒼白く光る小太刀を蕉芭勝の喉元に当てると、氷のような感触にヒョッと息を吐いた。
自分の運命を悟ったのか、顔中から冷やい汗を噴き出している。

「言い残すことは」

…
「私を殺してくれると言うのか。貴様が私の首を刈る、この日をどんなに待ちわびたことか、私は門下生どもから芋虫と言うあだ名で呼ばれているのだろう？ふふへへ、一日中床に寝そべり、歩けず、ふふ、這い廻るだけの生き物か、ふ、滑稽だな。ふふ、私は待っていたのだよ。ふ、貴様が私の命を奪ってくれるこの日を、その冷たい包丁を私の手の届く所にやってくれるこの時を！！」


…

蕉芭勝が私の小太刀を奪い、立ち上がる。

「なるほどそう言うことか、あの時私の木刀は貴様の運動神経を壊してはいなかったんだな。」
「ふふ、そうだ、ふふ、この通り私は歩けるのだよ、ふ、刀は差していないのだな、ふふ、この勝負、私の勝ちだ」


私に勝負は見えていた。冷静さを欠いた蕉芭勝が刃物を持っていようがいまいが、彼に勝ち目は無い。
一の太刀はスローモーションのように見えた。「貴様も侍のはしくれであろう。恥を知れ。」
もはや勝負ではない、相手の気付かぬうちに後ろに回って裸締めに首を締め上げることができた。
すぐに蕉芭勝はもと通りの床に倒れ落ちて、意識を失った。
「猛省するがよい」
私は彼が二度と立ち上がれないように、足首の腱を切っておいた。

夜、蕉芭勝は私の小太刀で腹を切って死んでいた。

不随ならば糞尿は垂れ流しだ。それに気付かない私に非はあった。しかも私は追い出されてばかりで素振りもしていない。芭蕉に左腕を落とされていた。

脊髄を壊した手応えはあったはず。しかし芭蕉は動いている。
死ぬべき弱者は芭蕉では無かった。私は今まで何をしていたのだろう。落ちた左腕を見ながら後悔していた。

続き書きます

芭蕉は「暗黒波動斬」を繰り出した。すかさず「霞凌ぎ」でかわす。袷からぶすりと切れていた。
このままでは、死ぬ。圧迫止血をしていると意外にも芭蕉は攻めて来なかった。「以外と、優しいんだな」

「ちょっとタイム」
芭蕉は足を擦っている。「吊った」
暗黒波動斬を撃つ際に吊ったようだ。馬鹿め。
「死ね、バナナ野郎！」奴の頭をざくろにしてやろうとしたその瞬間、右のふくらはぎに激痛が走った。吊った。「俺もタイム」
二人して足を擦ったり伸ばしたりした。


「ふぅ」
賢者タイムは終わった。再び睨み合いとなる。

「芭蕉ビーム！」

…辺り一面火の海と化した

突然爆発する道場。
しこっていた先生は下半身を露にしたまま吹き飛ばされた。


「やってくれた喃…」そう呟くと、爆発元に殺意をこめたまなざしを向けた。オナニーを邪魔されたのだ。今師匠に話し掛ければ確実に殺される。弟子たちは師匠を遠巻きに見守っていた。
とりあえず、下半身そのままはまずい。褌に手をかけた瞬間だった。

「誰がパンツ履いていいっつッた！！！！」
「〜〜〜〜〜〜ッッッ！！」

芭蕉の手は焦げていた。ビームなんか撃つから

お前らそれで面白いと思ってるなら病院行ってこい
あと漫画以外の本も読め

↑荒らし通報したから

したからなんだ？そんなに悔しかったのか？それだけ面白いと思ってたの？

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