📊 政治・経済ニュース

　、、、と質問されることが結構あるんですが、私はその通りだと思っています。官邸主導で動く政策は外交ばかりで、経済政策がほぼ皆無だからです。
　“官邸主導”には二種類あります。一つは首相本人や官邸のスタッフの発案で官邸が政策を主導する場合、もう一つは霞ヶ関の省庁のお膳立てで首相が主導する体裁を演出する場合です。最近の事例でいえば、少子化対策や認知症対策が前者で、マイナンバーの総点検や福島原発処理水の海洋放出は後者ですね。

　問題は、どちらの官邸主導でも良いのですが、経済政策での官邸主導があまりになさ過ぎるんです。
　例えば、ちょうど先週、4〜6月の経済成長率が発表されました。年率6%という見かけの数字は良かったですが、その中身を見ると、外需が大幅プラスだっただけで、国内の消費や投資はマイナスでした。消費者物価が上昇を続け、未だに実質賃金はマイナスであることも踏まえると、モノとサービスの双方での相次ぐ大幅値上げにより景気は決して良くないことが分かります。
そうした現実を踏まえると、9月末で終わってしまうガソリン代への補助金（1リットル当たり7円程度）と電気・ガス料金への政府の補助金（電気料金で世帯当たり数千円）を10月以降も延長することは不可欠です。
にも拘らず、延長に向けた政府の動きが遅いと思っていたら、8月22日になってようやく岸田首相が延長に向けた検討を自民党に指示しました。先週くらいからメディアでガソリン代の高騰に向けた怒りが噴出し始め、また与野党の双方で延長を求める動きが出始めたのを受けて、本当にようやく官邸が動いた感じです。

　では、なぜこれらの補助金について官邸主導の動きがここまで遅いのでしょうか。
まず、省庁のお膳立てによる官邸主導は無理だったという現実があります。これらの補助金を所管する経産省が早く動けば良かったのですが、数兆円の財政負担が必要となるので、財務省が了解するはずないからです。
となると、首相本人か官邸のスタッフが言い出しっぺになることが必要だったのですが、それが8月22日でやっと動き出したということは、おそらく外交の一大イベントであった日米韓首脳会合が終わり、かつメディアの批判が高まったので、ようやくそれが動いたのでしょう。
こうした現実を考えると、やはり岸田首相にとっては経済よりも外交の方が優先であり、経済政策については批判が高まらないと動いてくれないのかと思わざるを得ません。

　ただ、じゃあ岸田政権での経済政策はダメだと諦める必要はありません。今回の補助金の延長を巡る動きから分かるように、批判が高まれば遅ればせながら動くし、官邸主導が遅いなら自民党の政治家に危機意識を持たせれば良いのです。
　なので、もっとみんなで怒って騒ぎましょう。今のままでは物価上昇が続いて生活はもっと苦しくなります。もう株価もそう上がりません。ガソリン代や電気代・ガス代への補助以外にも、政府与党にやらせるべき経済政策はたくさんあります。諦めず、みんなで明るく怒って騒ぎましょう！

岸 博幸（きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN（格闘技団体）アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。