>>982
(1)侮辱罪の成立要件
もう少し、侮辱罪の成立要件をかみ砕いてみます。
事実を指摘せずに
不特定または大勢の人が認識できる状況の下で
他の人や法人をおとしめる(社会的評価を低下させる)言葉を示した
1. 事実を指摘しない場合は「侮辱罪」、事実を指摘した場合は「名誉毀損罪」というすみ分けになっています。
例えば、「〇〇(被害者名)はケチ」とSNSに書くと侮辱罪に当たる可能性があります。
他方で、「〇〇(被害者名)はお金があるのに給食代を払っていない」とSNSに書くと名誉毀損罪に当たる可能性があります。
2. 実際に不特定の人または大勢の人が、その悪口を見たかどうかは関係ありません。誰もが見ることができるインターネット上で悪口を書くと、「公然と」侮辱したことになります。
3. 「アホ」「バカ」「ブス」といった言葉は、「侮辱」に該当します。
(2)侮辱罪の刑罰
2022年7月7以降、侮辱罪の法定刑は次の通り引き上げられています。
旧 新(2022年7月7日以降)
拘留又は科料 一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
簡単にいえば、侮辱罪の改正前は、
短い期間、身柄が拘束されるか
少ないお金を払えば済む、という刑でした。
※拘留:1日以上30日未満、身柄が拘束される刑
※科料:1000円以上1万円未満のお金を払わなければならない刑
しかし、インターネット上で悪口を書かれて自ら命を絶つなど、深刻な被害が発生するようになりました。そこで、侮辱罪は改正され、
より長く身柄が拘束される懲役刑、禁錮刑と
よりたくさんお金を払わなければならない罰金刑、が追加されました。
※2022年6月の刑法の改正により、「懲役」と「禁錮」が一本化され「拘禁刑」となることが決まりました。したがって、この点について改正刑法が施行されれば、今後は懲役と禁錮の違いはなくなります(拘禁刑に関する改正刑法は、2025年頃までに施行される予定です)