>>104
「そうか、そうか。おいしいか」と、父親が息子に微笑んだ。
「うん!あーおいちー」と、息子はカレーを食べながら、何度も言った。
「いっぱい食べてね。今日は私のおごりだからね」と、母親。
「おいおい。稼いでるのは、この俺だぞ」と、父親は苦笑いした。
「ん?確かにあなたは仕事していて、私は専業主婦です」と、母親は言った。「でも、あなたの稼ぎだけじゃ、こんな豪華なレストランには来れません」
「どういう意味だ?」
「私、日本語を話したつもりですけど。あなたの稼ぎが少ないってことよ」
「な、なんだと!」と、父親はテーブルを叩いた。
「ちょっと!」と、母親。「子供の前でテーブルに乱暴はしないでよ」
「専業主婦のクセに亭主に生意気な口ききやがって!」
「今日のこのランチのおごりは、私が稼いだお金なの」
「俺に隠れてアルバイトでもしてるのか?」
「売春してるの」
父親は力まかせにテーブルをひっくり返した。
店員が駆け寄ってきた。息子は一瞬で消えたカレーに泣き出した。母親はレストランから走り逃げ出した。父親は椅子を振り回しながら、母親を追いかけた。 おわり