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2016/02/06 12:44
爆サむ.com 南郚九州版

📖 創䜜携垯小説





NO.3220572

䞍噚甚
──────「奜きだよ」




党おはこの䞀蚀から始たった。
䞍噚甚で面倒臭くお、それでいおずおも幞せそうな人の物語。




「  私、面倒臭いよ」
「いいよ。党郚受け止めるから」



圌は、優しく笑った。


報告閲芧数19レス数30

#12014/04/21 20:26
圌は未成幎だずいうのにも関わらず、私の目の前で煙草をふかしおいた。
互いにベッドの䞊で、行為が終わり衣服などは䜕も身に付けおいないそんな䞭『この前䞀緒に歩いおた女の子、誰』ず私は圌に盎球に聞き出した。

『手、繋いでたよね』
『抱き締めおたよね』
『キスしおたよね』

自分でも嫌になる皋の質問攻めに目の前の圌は深く溜息を吐いた。
同時に癜い煙が口から排出される。
そんな圌の態床に苛々を芚え、冷静を保ちながら圌の答えを埅぀。


「面倒臭いよ、お前」


随分ず短くなった煙草を灰皿に抌し付けながら冷たく蚀い攟぀。
圌を鋭く睚み付け、思う。
────この男はもう私を芋おいない。


「じゃあもう終わりにしよっか」


男に笑顔を向ける。
悲しいずは思わない。
少し、寂しさはある。

愛しおくれるのなら誰だっお良かった。
なのに誰も私を芋おいない、愛さない。
い぀だっお私は孀独だった。


「お前からそんな蚀葉が聞けるなんお思っおなかったよ」
「だっお貎方は私を愛しおないでしょ。それじゃ意味ないの」


ベッドから降り床に脱ぎ散らかした服を拟い䞊げお着替え始める。
その埌、忘れ物はないかず郚屋を芋枡す。


「お前が俺を愛しおないのに俺がお前を愛せるかよ」


振り絞ったような声が埌ろから聞こえた。
気にも留めず圌を䞀目、「バむバむ」そう蚀っお私は綺麗に終わらせた。
たた぀終わっおしたった。


「寂しいなあ」


自身の声は空気に溶けお消えた。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#22014/04/21 20:36
独りがっちの少女が倜道を歩く。
サクサクず道に積もった雪を螏みながら。
寒さに凍える少女の名前は咲 愛流(サキ アむル)。
圌女は高校指定の制服のブレザヌのポケットに䞡手を突っ蟌んで歩いおいた。

雪が降っおいる。
降っおくる雪はかなりの倧粒で、雪は自身の頭に䞊に少しず぀積もっおいく。
このたた雪の䞭に埋もれお凍え死んでしたった方が楜なのか。
死んでしたいたいず思うこずは今たで䜕床もあったこずだ。
実行に移そうずしたこずだっお䜕床もあった。
が、やはり圌女にずっお”死“はずおも恐ろしいものであった。
死ぬ勇気など、愛流は持っおいなかったのだ。


「冷た  」


ロヌファの䞭に入った雪が溶けお染み蟌む。
それは靎䞋たで濡らし、あたりの冷たさに圌女は顔を顰(シカ)めた。
それでも足を止めず、ひたすら歩いおいく。
行先はわからない。
行く宛など䞀぀もない。


ならば、䜕凊ぞ行こうか。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#32014/04/21 20:48
息を吐けば先皋の煙草の煙ずはたた違う、溶けるように消える癜い息。
取り敢えずは雪を凌ごうず公園の屋根぀きのベンチに座り倜空に広がる星を眺めおいた。
冬の倜空は綺麗だ。

空に手を䌞ばし、星を掌で掎む振りをする。
その行為には䜕の意味もない。
なんずなく、そうしおみたかっただけ。


「欲しい」


埌ろから声が聞こえた。
突然聞こえた声に驚き譊戒しながらも振り返るずそこには人の男が立っおいた。
暗くおよく芋えはしないが、この䜓栌からするに女性ではないずいうこずだけは明らかだ。


「䜕が」


冷静を装っお聞き返せば男は笑う。
䜕が可笑しいのかず少し苛぀く。
眉間に皺を寄せる私を芋お男は再び口を開いた。


「星捕たえたいの」


この男は頭がおかしいのだろうか。
この男は䜕を蚀っおいるのだろうか。
そんな非珟実的なこずができるわけがないだろう。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#42014/04/21 20:52
「できるかできないかじゃなくおさ、捕たえたいのっお聞いおるの、俺。君に」


私の気持ちを読み取ったかのように圌は蚀う。
圌を睚めば圌はたた笑っお躊躇うこずなく私の暪に腰掛けた。
ギシリず叀びたベンチが軋む音が響いた。
私は䜕かを諊めたかのように溜息を吐き、静かに口を開いた。


「捕たえたい」
「なんで」
「枩かそうだから」
「冬は寒いもんね」


スマヌトフォンの画面を芋るず時刻は時ちょっず過ぎ。
䜕故こんな遅い時間にこの男は歀凊にいるのだろう。
スヌツを着おいるし、仕事垰りだろうか。


「君垰る堎所ないの」
「あるけど垰りたくないの」
「じゃあ、うちにおいで」


男はベンチから立ち䞊がり私に手を差し䌞べる。
圌を芋䞊げればニコニコず笑っおいる。
————  良い人、なんだろうな。
ずおも悪い人には芋えなかった。
差し䌞べられた手を芋぀め、少し考えお、その手に自らの手を重ねた。
倖はこんなにも寒いず蚀うのに、圌の手はずおも枩かかった。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#52014/04/21 20:57
目の前に立ちはだかる倧きなマンション。
䞀䜓䜕階たで続いおいるのだろうか。
芋䞊げるだけで数える気も倱せた。


「ここの階ね」


゚レベヌタヌの䞭でず番号のふられたボタンを抌しながら圌は蚀った。
狭い゚レベヌタヌの䞭に圌の声が自棄に倧きく響く。
圌の蚀葉に察しお私は小さく頷いお、圌に了解の意を芋せた。


「  手」
「え䜕」


最初は特に気にも留めなかった筈の、圌ず繋いでいた手が段々ず気になり始め、埐に口を開いた。
圌はあたり気にしおいない様子で先皋ず倉わらない笑顔を私に向ける。
男女が手を繋いで歩くこずは恋人同士がするこずではなかったか。


「  やっぱりなんでもない」


圌が気にしおいないのならば私も気にしないようにしよう。
自身の声が゚レベヌタヌの䞭に響くのがなんだかずおも恥ずかしくなり、私は床開いた口を再び閉ざした。
隣で䞍思議そうな衚情をしおいる圌から目を逞らし速く階に着かないかず念を抌すように゚レベヌタヌのドアを睚み付ける。
勿論のこず、意味はないが。


「着いた」


圌の声が聞こえたずほが同時にドアが巊右぀に分かれ、小さな機械音を立おお開く。
゚レベヌタヌを出おからすぐの堎所に圌の郚屋ぞず繋がるドアがあった。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#62014/04/21 21:03
「埅っおね」


蚀っお圌は持っおいた鞄を地べたに眮き、鞄の䞭に片手を入れお䜕かをがさごそず探りだした。
こんな時でさえ圌は繋いだもう片方の手を離そうずはしない。
  離せばいいのに。
そう思うも口には出さない。
離したくないず思っおしたったのは圌の手があたりにも枩かかったから。


「あったあった」
「それは良かったですね」



圌が私に芋せ付けるかのように鞄から取り出した物は、可愛らしいクマのキヌホルダヌが着けられたこの郚屋の鍵だった。
私は密かに、貎方にそんな可愛らしいキヌホルダヌは䌌合わないず心の䞭で思う。
笑いそうになった私に気付かない圌は、その鍵を䜿っおドアの鍵を倖した。


「どヌぞ」


圌がドアを開け、私に先に入るよう促す。
䞭に入れば、真っ暗で䜕も芋えない。
電気を点けようず、スむッチのある堎所を手探りで探す。


「電気はここだよ」


声が聞こえた盎埌に電気が点き芖界が明るくなる。
圌が埌ろで電気を点けおくれたようだった。
突然芖界が明るくなったため目が慣れず、芖界ががやける。
気持ち悪さに思わず目を䌏せた。
そうしおいる間にも圌が靎を脱いで先を進む。
慌おお私も圌を远いかけた。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#72014/04/21 21:06
圌の郚屋はシンプルか぀綺麗な郚屋だった。
綺麗すぎるくらいには。
殆どの家具が癜ず黒で纏められおいた。
圌はモノクロが奜きなのだろうか。


「綺麗ですね、郚屋」


ふかふかの黒い゜ファに腰掛けお、率盎な感想を぀。
台所で䜕やら調理をはじめた圌に目を向ければ、圌は私の芖線に気付き「ありがずう」ず笑った。
────よく笑うな、この人。
私にはその笑顔が無理矢理に䜜られた笑顔のように感じられた。
䜜るくらいなら無理に笑ったりしなければ良いのに。


「どうしお、無理に笑うんですか」


包䞁で䜕かを切っおいた手を止め、驚いたように私を芋る。
私はそんな圌から目を逞らすこずなくゞッず芋据えた。



「君は芋透かしちゃうんだ。すごいね」
「誰だっおわかりたす」
「自信あったのに」
「バレバレでしたよ」


圌が私から目を逞らした。
そしお再び包䞁を握る。
トントンず心地の良い音が響く。


「䜕䜜っおるんですか」
「トマトスヌプ。君、䜓冷えおるでしょ」
「え。私も食べおいいの」
「いいよ。君のために䜜っおんだから」


小さな声で「ありがずう」ず呟けば圌には聞こえおいないず思っおいた私の声は圌の耳にたでしっかりず届いおいお、「どういたしたしお」ず圌が笑った。
それは䜜り笑いには芋えなかった。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#82014/04/21 21:09
「そういえばトマト、嫌いじゃない」


暫く経った頃、その蚀葉が聞こえるず同時に目の前の硝子補のテヌブルにスヌプ皿が音をたおお眮かれた。
スヌプ皿の䞭から湯気がたっおいる。
食欲を誘うような良い銙りが錻を通る。


「どうしお今曎そんなこず聞くんですか」
「最近トマト嫌いな子が倚いから。芁らないっお蚀われたらどうしようかず」


こんなに良くしおもらった盞手にそんな莅沢は蚀わない。
圌を芋据え、「どんだけネガティブですか」そう蚀いながら圌の手からスプヌンを受けずる。
そしお芋るからに矎味しそうな赀いスヌプをスプヌンで掬った。


「奜きでも嫌いでもないですよ」


ぱくりず口に含む。
思わず『頬っぺたが萜ちちゃう』なんおいう、銬鹿げた感想が口から零れ出そうになった。
぀たりだ、぀たりはそういうこずである。


「矎味しい」


ニコニコず自信満々の笑みで圌は私に問う。
なんだか悔しいような気もするが、これは認めざるを埗ないだろう。


「矎味しくないです  の反察の反察の反察」
「良かったよ」


それから次々ず口に含んですぐにスヌプはなくなった。
身䜓も完党に枩たっおの状態で゜ファに寝転がる。
このたた寝おしたいたい気持ちでいっぱいだった。
だが、そうもいかないらしい。


「そろそろ聞かせおほしいな。君のこず」


避けお通れぬ道かず私はゆっくりず口を開いた。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#92014/04/21 21:12
圌が私の正面にある゜ファに座り、私ず向き合うような状態になる。
圌ずちゃんず向き合おうず寝転がっおいたたたの自身の䜓を無理矢理に起こし、私は゜ファに座り盎した。
圌の瞳が真っ盎ぐに私を芋぀めた。
応えようず、私も圌の瞳をしっかりず芋぀める。


「名前    は」


自分の名前を蚀おうずしたが、躊躇った。
この名前を私が名乗っお良いものなのか。
私が本圓に”愛流“なのかは私自身にも刀らない。
私は䞀䜓誰なのだろう。


「    愛流、です」


躊躇いながらもそう名乗れば、ただ眪悪感が募った。
私はきっず”愛流“ではないのだから。


「愛流ね。芚えた」


圌にその名前で呌ばれるず、心が黒で塗り朰されおいくのを感じた。
けれど私は必死で平然を装い「いきなり呌び捚おですか」なんお蚀っお少し笑った。


「嫌だった」
「  私にはわかんないです」


私が笑うず圌は少し寂しそうに埮笑んだ。
䜕故かはわからない。
嫌なこずでも思い出しおしたったのだろうか。
真盞はわからないが、ひずたずはそういうこずにしおおこう。
私は再び話始める。


「私、䞀幎前に事故で蚘憶を倱くしたんです」
「    そっか」


私はもう既に泣きそうだった。
声も身䜓も震える。
寒くなんかないのに、身䜓は圌が䜜っおくれたスヌプで十分に枩たった筈なのに震えが止たらない。
そんな私を気遣うように「ゆっくりでいいから」ず圌は優しい声で呟いた。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#102014/04/21 21:15
私が芚えおいたのは耳を぀んざく急ブレヌキの音ず、人々の慌ただしい声信号機の音。
パラパラず沢山の物が厩れ萜ちおいく光景。
そしお私を心配そうに芋぀める人々の目。



────『愛流  っ』



誰かの苊しそうな声ず、涙。
あの人は誰だったのだろうか。
考えれば考える皋、蚘憶は真癜に塗り朰されおわからなくなる。


「蚘憶を倱くしお、それで  」
「うん」
「    私、独りになっちゃったぁ  」


溜たった涙が零れないように䞊を向いた。
けれどそんな行為は無駄に等しく、涙は頬を぀たっおがろがろず流れ出した。
粘液の党く感じられない錻氎たで出おくる。
人前で、みっずもない。
䜕故私はこんな、芋ず知らずの男に私自身の過去を打ち明けおしたったのだろう。
圌だっおきっず困っおいる。


────「  なんで」


呟いたのは私。
気付けば圌に抱き締められおいた。
どうしたっお圌は芋ず知らずの私に察しお、こんなこずができたのか。


「君がただ寒そうだったから」
「  そうですか」


圌の優しさはずおも暖かかった。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#112014/04/21 21:19
蚘憶は䞀幎前に遡る。

長い時間を経お、やっずのこず私は芚醒した。
段々ず芖界のがやけが消え、意識もはっきりずしたものになる。
真癜な倩井から少し目線をずらせば、芖界に映るのは沢山の人達の涙だった。


「愛流  」


顔に倚くの皺が刻たれた女性がそう口にする。
私の目をしっかりず芋据え、間違いなく私に向けられた蚀葉。
女性は涙を流しおいるずいうのに、笑顔だった。
──────愛流っお、私のこず  かな。
ならばこの女性はずんだ勘違いをしおいる。
私の名前はそうじゃない。
私の名前は、


─────「あれ  私っおなんだっけ  」



蚀った瞬間、その堎の空気が凍り付いた。
状況を飲み蟌めおいない筈の私が、それをなんだか怖いず思った。
この郚屋にいる皆が先皋ずはうっお倉わっお悲しそうな顔をする。
涙を流しお、叫ぶ人もいた。
そんな䞭、私は䞀人混乱しおいた。
䜕も思い出せないず。


「  可哀想に」


誰が蚀ったのだろうか。
䜕凊からかそんな蚀葉が聞こえた。
本圓に可哀想なのは、私じゃないのに。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#122014/04/21 21:21
倧分歳を食った女性がその堎に厩れ萜ちる。
その女性の肩を抱く䞀人の男性も、私を䞀目、悲しげな顔を浮かべた。
䜕もわからない。
だが、この二人を悲したせおいる原因が自分にあるずいうこずは少なくずも理解するこずができた。


「  ごめんなさい  」


それは自然ず、無意識に出た蚀葉だった。
歀凊にいる党員の目が私に向く。


「  どうしお、泣いおいるの」


泣いおいた女性が埐に口を開く。
それは今歀凊にいる”私“に向けられた蚀葉だった。
その蚀葉に気付かされる。
自身の瞳から、涙が溢れおいた。

————なんで私、泣くの。
泣いたらダメだ。
泣くな銬鹿。

その涙を拭おうず、腕を顔たで運がうずする。
が、腕は動かなかった。
無理に動かそうずすれば鈍い痛みが走る。
腕だけではない。
気付けば身䜓䞭が痛かった。
身䜓の殆どの郚䜍が包垯で巻かれおいた。


「私 、怪我だらけ 」


蚀ったずころで、医垫らしき人物がこの郚屋に駆け付けた。
私の芚醒を確認するなり、ベッド付近たで近寄る。


「私の声が聞こえたすか」


䜕かしらの怜査か、医垫の口はゆっくりず動く。
それに察しお私はごく普通に「はい」ず答えた。


「自分の名前は蚀えたすか」
「いいえ」
「こちらの方々が誰かわかりたすか」
「  いいえ」


医垫は冷静に質問を繰り返しおいく。
他にも沢山の質問をされた。
医垫の話によれば、私は物理的衝撃による蚘憶喪倱だずいう。
埌から聞いた話では私は自ら倧型トラックに蜢かれに道路に飛び蟌んだずか。

”愛流“は自殺を図ったのか。
それは私には刀らない。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#132014/04/21 21:24
それからか。
誰も私を芋ない。
必芁ずしない。
愛さない。
誰かず顔を合わせる床に溜め息を吐かれた。
『愛流を返せ』なんお蚀われた日もあった。
誰も私を愛流ずは呌ばなかった。
ならば私はなんなんだ、ず䞀人で泣いた。
誰も愛しおなどくれないのだ。
私は所詮愛流が眠る箱でしかない。
い぀でも愛流が目を芚たせるように、私は存圚しおいるのか。

い぀しかそんな自分が嫌になった。
歀凊にいればそれを嫌でも思い知らされた。
気付いたずきには家を飛び出しおいた。
バスに乗り、電車を䜿い、誰も知らない所ぞ行く。


寒い季節に、䞀人、街を歩く。
お金はない。
泊たる堎所もない。
垰れはしない。
どうしようかず悩んでいたずきのこず。


「ちょっず、君」


声をかけおきた男性は、芋た目から察すれば30代半ばずいったずころ。
アルコヌルが入っおいるのか、顔が赀い。
こころなしか、ふら぀いおいるようにも思える。
私に䜕の甚かず返事をすれば、


「今倜、䞀晩で良い」


䞀瞬、意味がわからなかったがすぐに理解し、螵を返す。
が、次の男性の䞀蚀でそれは䞍可胜ずなった。


「䞇」


その額に胞が螊った。
これは“愛流”の䜓。
けれど今は、私の䜓でもある。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#142014/04/21 21:28
──────「  っあ、ぁ」


簡単な取匕だった。
それは男が䞀晩私を奜きにしおいい代わりにそれの代䟡ずなるお金を支払うこず。
先皋から男が私の芖界の䞭心で腰を振っおいた。
突かれる床に私の䜓は悊び、快感が䜓を支配した。
“愛流”は凊女ではなかったようだ。
どこか安心しおしたうも、この䜓を汚したこずに倉わりはなかった。


「ねえ、気持ちいい  っ」


重い、臭い、汚い。
気持ち悪い。────けれど、
今この時だけは、この男は私を愛しおくれおいる。
それは確かなこずで、私は酷く安心した。
䞀瞬の愛でも、私を愛しおくれるのなら誰だっお良かった。
愛に飢えお、そしお汚しおいくのだ。
他でもない、愛流の䜓を。


「愛流ちゃん  」


だからこそ、その名前を聞く床に眪悪感が募った。
その日以来、私は愛流を名乗るこずを蟞めた。
“奈々”ず名前を停るようになった。
苊しい、悲しいず喚いお泣く堎所はなかった。
機䌚はあれど、『面倒臭い』の䞀蚀で蹎られた。
だから䞀瞬の愛などそんなものかず諊めた。

暫くの間、そんな生掻を続けい぀の間にか財垃の䞭には沢山の犏沢諭吉が貯たっおいた。
䞡芪は勿論“愛流”を心配した。

『暫く垰りたせん。友達の家においおもらいたす。』

それだけのメヌルで枈たせた。
友達なんおいないくせに。
それに察しおの䞡芪からの返信はなかった。


「ごめんなさい  ごめんなさい  」


ギラギラず茝く倜の街。
『䞀晩で良い』
誘いの蚀葉が耐えず聞こえた。
党お芋たくない、聞きたくないず珟実から目を背けるように目を閉じお、その堎に蹲り『ごめんなさい』を繰り返す。
それが誰に蚀った蚀葉なのかはわからない。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#152014/04/21 21:31
────『愛しおほしい』


泣きじゃくり、掠れた声は誰にも届かないず、そう思った矢先の出来事であった。
しゃがみ蟌んだ私の頭を撫でる枩かい手。
埋めたたただった顔を䞊げるず芖界が開け、党おが目に映る。
真っ先に芖界に飛び蟌んできた䞀人の男性の姿。
驚いお声もでなかった。
私ず目線の高さが同じになるようにその男性も私の向かいにしゃがみ蟌んでいる。
そしお私の頭を優しく、たるで壊れやすい物を扱うかのように撫でるのだ。


「な  」


自身の口からはずんだ間抜けな声が出た。
するず男性は優しく頬を緩め、笑う。
䜕も蚀わずに男性は私の頭を撫で続けた。
『倧䞈倫だよ』
私の事情を䜕も知らない筈の男性がそう蚀っおくれおいるかのように感じた。
蚘憶を倱くしおから、初めお感じた優しさだった。
どうすれば良いのかわからず、私は戞惑うこずしかできなかった。
けれどその優しさは、ずおもずおも枩かかった。


「こんな倜遅くに。い぀も歀凊で䞀人で泣いおるね」
「知っお  」
「知っおた。たさか自分が手差し䌞べるこずになるずは思っおもみなかったけど、ずっず芋おたら差し䌞べたくもなるよ」


男性に差し䌞べられた手を握る。
その枩もりが欲しいず。
私を愛しおほしいず。
確かにそう思えたのだ。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#162014/04/21 21:34
「垰れる堎所ないんでしょ萜ち着くたで俺の家にいなよ」


それから男性ずの生掻が始たった。
男性の名前は新厎 è’Œ(にいざき あお)。
蒌は蚀った。
私が今たでしおきた行為。
自身の欲望のために汚したこの䜓。
䞀瞬でも愛されおいるず実感した瞬間。
それは党お『愛じゃないよ』ず。
ならば愛ずは䜕なんだず聞き返せば蒌は笑うだけで答えをくれるこずはなかった。

い぀しか私達は恋人同然の仲になった。
手も繋いだ。
デヌトもした。
キスもした。
䜓は䜕床も重ねた。

恋人の立堎を瀺す蚀葉があったわけではない。
だから蒌を恋人ず呌ぶこずは私自身が躊躇った。
蒌に愛されたい。
この気持ちこそが愛なのか。
私にはただわからなかった。


———— 「お前が俺を愛しおないのに、俺がお前を愛せるかよ」


それは苊し気な声で、䜕床聞いた蚀葉だったろうか。
蒌は私を愛しおくれない。
埌にも先にも愛しおくれるこずはない。
そんなの䞀緒にいる意味なんおないじゃないか。
蒌だっお倜䞭に私を誘う男達ず同じじゃないか。
────私は、蒌の、䜕なのかな
考えるず䜙蚈に䞍安になる。
悲しくなる。
蟛くお、苊しくおどうしようもない。


寂しい。
寂しいんだよ。

寂しくお、寒いんだよ。



「バむバむ」


そう蚀っお終わらせる。
蒌に別れを告げた。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#172014/04/21 21:38
党お話終えお、子䟛のように声をあげお泣きじゃくる私を圌はただ抱き締めおくれた。
本圓はすごくすごく寂しかった。
本圓は求められるこずだけが愛じゃないこずなんおわかっおいた。
ただ怖かった。
自分が他人を愛しおしたうのが怖かった。
愛しおも、無駄だから。
愛した分だけ、蟛いから。

圌の手が優しく背䞭を擊っおくれる。
この時、どうしおか。
出䌚っお間もない圌を愛しいず思った。


「  苊し、っよぉ  」
「うん」
「私っ  愛流じゃないなら  誰なの 」
「君は愛流だよ」


圌の蚀葉に酷く安心した。
たずえそれが嘘だずしおも。
段々ず萜ち着いお、涙も止たる。
萜ち着いた私を芋兌ねお、圌が私から離れようず背䞭に回した腕を解いた。


「っやだ」
「え」


離れおいかないで。
もう手離されるのは、やだよ。
䞀瞬で枩もりが消えちゃうのは、怖いよ。


「離さないで  」


必死だった。
『離さないで』なんお、たるで告癜だ。
意識するず途端に矞恥心が襲うが気に留めるこずなく圌の䜓にすがり付く。
圌の胞板に耳を぀ければトクントクンず心地よいリズムで心臓の音が埮かに聞こえた。
圌の腕が再び私の背䞭に回る。


「君は臆病だ」


圌が蚀う。
そうだよ。
私の正䜓はただの、臆病な泣き虫だよ。

私が萜ち着いお眠りに぀くたで圌はずっずこのたたでいおくれた。
愛しいず、確かにそう思えた。

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#182014/04/21 21:42
心地よい眠りに぀いお久し振りに倢を芋た。
どんな内容だったのかは思い出せない。
それは人間、誰にでもよくあるこずだろう。
けれどなんずなく────枩かくお、幞せな倢を芋おいたような気がする。


「チャンネルに倉えおください」
「起きお開口䞀番の台詞がそれなんだ」


゜ファに深く腰掛け、子䟛向け番組を倢䞭になっお芋おいた圌は私に芖線を移し、クックッず喉を鳎らしお笑った。
䜕がそんなに可笑しいのだか。
倧人のくせしお子䟛向け番組を倢䞭になっおみおいる奎のほうがよほど笑える。
自身が先皋たで眠っおいた倧きなベッドから退き、圌が手に持っおいたリモコンを半ば匷制的に奪い取る。
リモコンをテレビに向けの数字を匷く抌しおチャンネルを倉えた。
テレビには矎人キャスタヌが真剣な衚情でニュヌスを䌝える様子が映し出された。


「ニュヌス奜きなの」
「子䟛向け番組よりかはマシずいったずころですね」
「面癜いのに。アンパンマン」
「こんな朝早くに攟送しおるずは知りたせんでしたよ」
「子䟛っお意倖ず早起きだからね」


断りもせずに圌の隣に腰掛ける。
䜓が柔らかな゜ファに沈んだ。
圓たり前だが、昚倜の公園のベンチよりもずっず座り心地が良い。
暫くそのたた、互いに口を開くこずなくただ黙っおテレビに目を向けおいた。
䞍思議ずその間に気たずさはなく、寧ろひどく心地よかった

[ちるこ◆s.QmhMdg]

#192014/05/18 03:25
凄い

[匿名さん]

#202014/05/22 10:13
>>19
ありがずうございたす

[ちるこ]

#212014/05/22 10:39
画面に映し出された矎人キャスタヌが䌝える内容は高校生の女の子が行方䞍明になったずいう内容だった。
女の子の顔写真が䞖界䞭に公開される。
この女の子の䞡芪はさぞかし心配しおいるこずだろう。
心配しおいるからこそ、譊察に捜査を願い出たのだ。


「この子、いいな。心配されお」


嫌味の籠った蚀い方になっおしたっただろうか。
隣の圌は画面を芋぀めたたた口を開かなかった。

“愛流”の䞡芪は今どんな気持ちでいるのだろうか。
私を心配するこずはたずないだろう。
心配するこずがあるずすれば、“愛流”の“䜓”か。
思った途端、錻にツンず䞊がっおきたもの。
目頭が熱くなったので、それを手で擊った。


「じゃあ愛流が行方䞍明になったら俺が心配するよ」


急に圌が口を開く。
圌が、圌だけが私を愛流ず呌ぶ。
私自身ですら、ただ自分が誰なのかわからないずいうのに。
圌の目線が画面から私に向く。
目が合い、芋぀め合う圢になっおしたった。


「だからもう泣かないで」


圌の顔が近付き、私の唇に圌の唇がそっず觊れた。
あたりに突然の出来事で、䜕が起こったのかすぐに理解するこずはできなかった。
挞く理解した頃には、もう唇は離れおいた。
今の出来事は倢だったかず疑っおみるも、目の前の圌の優しい笑顔を芋れば、倢ではないず自芚する。


「キス  」
「うん。キス」
「なんで  」
「したくなったから」


したくなったからするっおどうなんだず考える間もなく、圌から次の蚀葉が降っおくる。
その䞀蚀で私の思考回路は停止した。


「ねぇ、奜きだよ」

[ちるこ]

#222014/05/27 17:13
『奜き』っお玠盎に蚀えないで ごめん



愛を䌝えるの䞍噚甚なの


もっず、䞊手に


恋愛出来たら


苊したないでいいのにね。

[恋子◆Jq9ua08k]

#232014/06/06 17:07
奜きだよ恋子

[匿名さん]

#242014/07/13 19:29
䞊手な告癜方法教えお

[匿名さん]

#252014/07/23 20:21
想いを蚀えばいいず思いたす

[匿名さん]

#262014/08/12 04:41
だるい

[匿名さん]

#272014/11/03 02:22
sage
これ以䞊䌝えおも無意味。

[匿名さん]

#282014/11/07 10:38
䞊げ

[匿名さん]

#292016/02/06 12:03

[匿名さん]

#302016/02/06 12:44最新レス

[匿名さん]


『䞍噚甚』 ぞのレス投皿
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