🏥 鹿児島病院・医師

ロシア強制連行　人道犯罪直ちにやめよ！

　残酷極まりない戦争犯罪である。ウクライナ侵攻を続けるロシアが、子どもを含む多数の民間人をロシア領内に強制連行している疑惑が深まっている。事実ならロシアは即刻解放すべきだ。
　戦争犯罪の中で、住民の強制移住は組織的な住民殺害と並ぶ「人道に対する犯罪」と位置付けられる。ウクライナ当局によると連行された民間人は百万人を超える。
　連行された人の中には、家族から引き離されたり、孤児院から連れ出された二十万人以上の子どももいるという。ゼレンスキー・ウクライナ大統領はその狙いを「ウクライナを忘れさせ、戻れなくすることが目的だ」と指摘する。
　ナチス・ドイツによるユダヤ人集団殺害を機に、国連で一九四八年に採択されたジェノサイド（集団殺害）条約は、子どもをほかの集団へ強制的に移すことをジェノサイドと規定している。
　一方、ロシア側はウクライナの民間人は自主的に避難してきたと反論し、強制性を否定している。
　ロシアメディアによると、ウクライナからの「避難民」の受け入れ施設は、ウクライナに隣接する地域からシベリア、極東までほぼ全土に設けられている。
　強制連行といえば、スターリン時代の暗黒を思い起こさせる。チェチェン人やクリミア・タタール人、朝鮮民族などが中央アジア、シベリアの不毛の地に強制移住させられ、おびただしい人々が飢えや病気で命を落とした。
　今回の強制連行疑惑には、労働力の確保が目的ではないかという臆測がつきまとう。ロシアでも人口減少は頭の痛い問題だからだ。とりわけ極東は人口流出が深刻で、日本の国土の約十八倍の土地に、大阪府よりやや少ない八百万人余しか住んでいない。
　ロシアの無差別攻撃はやまず、国連人権高等弁務官事務所の十二日時点の集計では、民間人の死傷者は約一万二千人。実際はこれより多いのは確実である。
　ロシアはほかにも民間人の虐殺、拷問、性暴力と残虐行為を重ねている。国際刑事裁判所（ＩＣＣ）やウクライナ検察は戦争犯罪事件の捜査を合同で進めているが、プーチン政権は非を認めようとはしない。
　ロシアは蛮行をこれ以上続けるべきではない。侵略行動を中止し、ウクライナから撤退するよう重ねて要求する。