>>582
鞭係のローマ兵たちは、いかにも繊細さや思いやりのかけらもなさそうなキャラの俳優を起用していて、鞭も特大の鉄の鉤爪付きで、これでどうだ!という残虐表現への監督の自信が感じられた。そこはアポカリプトで主人公たちがいけにえの神殿にのぼらされる途上でイジメの祭りのように狂乱するマヤ人たちの演出にも感じられた。マヤとアステカが混同していたし、生贄は神聖で名誉のあることだったという説もあるけれども。
キリストの映画はパゾリーニの「奇跡の丘」が良かった。イタリア語でたたみかける山上の垂訓。口語訳聖書を読むと感じる少し威張った感じがするほどに決然と語るイエスの口調がそのまま再現されている感があった。超真面目な表情で、「と、書いてある。あなたがたはそんなこともわからないのか」的な。十字架にかけられて、イエスに身近だった人々が絶望している頃に、復活し、「見よ、私は世の終わりまで、あたながたと共にいる」というラストが感動的だった。まゆげのつながった独特の顔つきが神々しい俳優。実際のイエスは中東系の顔立ちで、ルネッサンス絵画などで定着しているヒゲの白人の顔ではなかったらしいと近年の研究で言われているけれども。