熊本県で2015年までの5年間に急性心筋梗塞を発症した患者約3700人を調べた結果、中国大陸から黄砂が飛来する翌日に発症する確率が高くなるのを熊本大学が突き止めた。
黄砂が引き起こす健康被害の可能性を示したのは世界で初めて。
黄砂は、中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から季節風にのって運ばれる途中で、PM2.5などの大気汚染物質などを付着しながら日本に飛来する現象で、黄砂が飛来すると地球環境や生態系に影響を及ぼす以外にも、さまざまな健康リスクがあると考えられている。
熊本大の小島淳特任准教授と国立環境研究所の道川武紘主任研究員らのグループは、熊本県内の21の医療機関で診察を受けた急性心筋梗塞の患者について、黄砂との関係を解析。
グループによると、2010年4月から2015年3月までの調査期間中に、急性心筋梗塞を発症した3713人の患者について詳しく解析した結果、気象台が黄砂の飛来を観測した翌日に発症するリスクはその前日までと比べて、オッズ比にして1.46と高くなることが判明した。
さらに患者を年齢や性別、高血圧や持病の有無などで調べたところ、75歳以上の高齢者で男性、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病の持病がある人は、ない人に比べて黄砂の影響を受けて急性心筋梗塞を起こしやすいことも明らかになった。
研究グループは、「心筋梗塞に黄砂がどう関係するのかは不明だが、慢性腎臓病患者の体内では、炎症や酸化ストレスが進んでいるので、黄砂にさらされることが、これらの症状を悪化させ、心筋梗塞を起こしやすくしている可能性がある」と指摘したうえで、今後は因果関係の解明を進め、予防法に結びつけたいと話している。
なおこの研究成果は、欧州心臓学会で発表されるとともに循環器の専門誌『European Heart Journal』に掲載された。
■大気中の汚染物質については、ハザードラボ「PM2.5マップ」で随時紹介しています。
【日時】2017年09月05日(火) 07:00
【提供】ハザードラボ